では実際に日本は世界でどの程度の水準の学力を持っているのでしょうか?
この記事では、気になる日本の学力について調査してみました。
さまざまな調査を行なっている「OECD」
教育関係のランキングでよく耳にするのは、OECDという機関でしょう。OECDは「Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構」の略で、本部はフランスのパリに置かれています。
現在、OECDには以下に示す38か国が加盟しています。
イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、スロベニア、ラトビア、リトアニア、日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国、チリ、イスラエル、コロンビア、コスタリカOECDの活動目的は先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、経済成長、貿易自由化、途上国支援に貢献することとしています。
OECD公式HPでは下記の取り組みを支援しています。
- 市場と市場を機能させる組織に対する信頼感を取り戻すこと
- 将来の持続的な経済成長の土台となる健全な財政を再建すること
- 技術革新、環境に配慮した「グリーン成長」戦略、新興経済国の発展による新たな成長の源泉を促進・支援すること
- あらゆる世代の人々が今後の仕事で、生産的に、かつ満足して働くための技術を習得できるようにすること
「より良い暮らし指標」では、暮らしの11の分野(住宅、収入、雇用、共同体、教育、環境、ガバナンス、医療、生活の満足度、安全、ワークライフバランス)について比較しています。
なおOECDによると、日本は読解力・数学、・科学の点でOECD諸国の中でトップの成績を収めています。
日本生徒の平均得点は520点と、OECD平均の488点を大きく上回っています。
日本の学校システムは、全ての生徒に質の高い教育を提供できていると言えるでしょう。
参考:OECD公式Webサイト
引用:OECD Better Life Index
教育ランキング順位はどう決めている?
OECDの調査の中にはPISA(Programme for International Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度調査があり、日本もこの調査に参加しています。PISA調査は15歳児(日本では高校1年生)を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について3年ごとに調査を実施しています。
2003年にはPISAショックと呼ばれた日本の順位の急落も話題となり、2000年の調査では数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位、読解力8位とトップクラスだったことに対し、2003年には数学的リテラシー6位、読解力14位と急落してしまいました。
これを機にそれまでの「ゆとり教育」から「脱ゆとり教育」へと転換し、授業時間や教える内容の増加、さらに、全国学力テストの復活にもつながりました。
引用:国立教育政策研究所
引用:文部科学省 国際学力調査(PISA、TIMSS)
かつて、日本社会は教育にも働き方にも「ゆとり」を強く希求したはずだった。 なぜ「ゆとり世代」は叩かれねばならなかったのか──。 長年にわたりバッシングを受け、 いまや世代論における罵倒のかたちとして定着してしまった「ゆとり」。 「ゆとり世代」批判は根拠ある正しい認識なのか。 気鋭の研究者2人が社会学と教育学の観点から 「ゆとり」言説を読み解き、多くの誤謬を明らかにする。 ...
この記事をwww.amazon.co.jp で読む >最新のPISAは2021年→2022年へ延期
PISAは3年ごとに調査を行っていますが、2021年度調査については新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期することを決定しました。2022年は数学的リテラシー分野を重点的に調査し、その他の2分野は概括的な現況調査を行うとのこと。結果は2023年に公開される予定です。
引用:文部科学省 生徒の学習到達度調査
日本の順位は何位?
そんな中、2018年の順位はというと、なんと数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位、読解力11位。順位は平均点を比較したもので、日本の数学的リテラシーと科学的リテラシーは世界トップクラスといえます。しかし読解力リテラシーは2003年のPISAショックと同じく10位以下。2015年度調査の平均点に比べると12点も低下してしまいました。読解力分野の低得点層は増加傾向にあり、日本人の言語能力や情報処理スキルにおける課題が浮き彫りになっています。
日本の順位が下がったことで「学力低下問題」という社会問題にもつながったPISA。新学習指導要領にも影響を与えるPISAとは一体どのような試験なのでしょうか?日本の順位、試験の内容、最新動向をくわしく解説します。
この記事をcoeteco.jp で読む >ちなみに、2018年の1位は全て中国(北京・上海・江蘇・浙江)でした。
日本が苦戦した読解力の問題がどのようなものだったかというと、モアイ像で知られるイースター島をテーマとした大学教授のブログと、本の書評、さらに、科学雑誌の記事の3つの異なる文章を読み比べてもらい、島から大木が消滅した原因について資料から根拠を挙げて記述するよう求められたようです。
この問題に対して、どの文章を指示するかは各々自由となっていますが、なぜそれを選んだのか、根拠を示しながら自分の考えをまとめる力が問われたようです。
年 | OECD加盟 | OECD非加盟 | 合計 |
2000年 | 28か国 | 4か国 | 32か国 |
2003年 | 30か国 | 11か国・地域 | 41か国・地域 |
2006年 | 30か国 | 27か国・地域 | 57か国・地域 |
2009年 | 34か国 | 31か国・地域 | 65か国・地域 |
2012年 | 34か国 | 31か国・地域 | 65か国・地域 |
2015年 | 35か国 | 37か国・地域 | 72か国・地域 |
2018年 | 37か国 | 42か国・地域 | 79か国・地域 |
社会科「資料読み取り」トレ-ニングシ-ト: PISA型読解力を鍛える (6年編)
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教育水準ランキングにはPISAのほか、TIMMSやPIRLSなど世界的調査に基づいたものがあります。TIMMS(Trends in International Mathematics and Science Study)とは国際数学・理科教育動向調査のことで、国際教育到達度評価学会(IEA)が4年に一度行っている、算数・数学、理科の各国の到達度を国際的に調査しているものです。
調査対象年齢は、日本では小学校4年生と中学校2年生となっており、TIMSSの目的を文科省は以下のように説明しています。
初等中等教育段階における児童・生徒の算数・数学及び理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定し、児童・生徒の学習環境条件等の諸要因との関係を分析する。PIRLS(Progress in International Reading Literacy Study)とは国際読書力調査のことで、こちらも国際教育到達度評価学会(IEA)が行っています。
引用:文部科学省 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の調査結果
日本の教育水準の状況まとめ
日本はこの教育水準ランキングを指標として日本の教育の方針が左右されていると言っても過言ではないでしょう。直近の結果を見ると2003年以来の読解力の低さが見受けられますが、今後また大きく教育方法が改善されていくのかもしれません。
また、これからはプログラミングなど新しい知識も必要となってきます。日本も今後も諸外国に負けないようにさらなる教育方針に改善を重ねていきたいものですね。