(インタビュー)デジタル改革担当大臣 平井卓也|デジタル改革は「Beyond Limits」精神で
変わったのは民間だけではありません。2021年9月1日に発足予定の「デジタル庁」には、4月に先行して民間のITエンジニアやリクルーターを30人程度採用。それも、多くが別の仕事と掛け持ちするパラレルキャリア(複業)スタイルで業務にあたると言います。
学校教育においても、GIGAスクール構想が前倒しされるなど、ICT関連のニュースが絶えない2021年。これからを生きる子ども達は、どのような未来を迎えるのでしょうか?
デジタル改革まっただなかの社会にかける思いを、平井卓也 デジタル改革担当大臣に伺いました。


GIGAスクール端末はいかに制約なく、自由に使えるかがカギ
—GIGAスクール構想が前倒しされ、子ども達がICT環境で学ぶ準備が整いました。デジタル改革担当大臣としての思いは。さまざまな方のご助力を得て、文部科学省が「1人に1台の学習用端末」の配備をほぼ完了させることができました。そのことにお礼を申し上げるとともに、子ども達には、ぜひ「新たな文房具」としてパソコン/タブレットを最大限に活用していただければと思います。
今の小学生は、生まれた頃からデジタル環境に囲まれてきた、いわゆるデジタルネイティブ世代です。GIGAスクール構想を通し、彼らの自主性や創造力をどう伸ばしていくかが大きなテーマと言えるでしょう。そのためには、配布した端末をできる限り制約なく、自由に使っていただけるよう、随時ルール整備を進めていく必要があると認識しております。
ならびに、ICT教育は、子ども達に個別最適化された学びを提供する上でも有効な手立てです。デジタル教科書をはじめ、多様な教材を活用したり、データ形式の標準化を進めたりと、やるべきことはまだまだあるはず。子ども達がワクワクしながら新しいことにチャレンジできる、そんな学校現場になれば、というのが私どもの願いでして、GIGAスクール構想はその大きな一歩となったのではないかと考えております。
小中学校の児童/生徒1人につき1台の学習用端末(パソコンやタブレット)を配備する「GIGAスクール構想」がこの4月、ほぼ全ての小中学校で始まりました。新学習指導要領の「全面実施」初年度である中、新型コロナウィルスが流行するなど、慌ただしいままに過ぎ去った2020年度。文科省が新たな学びにかける思いについて、萩生田光一 文部科学大臣にお話を伺いました。
2024/11/06 11:43
コンテスト審査員を務めて驚く、子ども達のスキルと可能性
—小さな頃からICT環境に深く親しむ子どもが増えることで、社会はどのように変化していくでしょうか。現代に生きて思うのは、10年、20年後の未来がどうなっているのか、まったく予測できない時代になったなということです。あらゆる分野でイノベーションが起き、昔であれば10年はかかったであろう変化が、ここ1年ほどで一気にやってきた。このままのスピードで変化し続けたら、今の子ども達が大人になるころには、社会はいったいどのような姿をしているのだろう?としみじみ感じ入ります。
そんな中でもはっきりしているのは、これからの社会において、デジタル技術はまったく珍しいものではなくなっていくこと。事実、ここ20年あまりで、インターネット通信は「あって当然」のものとなりました。これからの20年で、デジタルインフラが社会の基盤に組み込まれ、コモディティ化(汎用化)していくであろうことは想像に難くありません。
そう考えると、これからを生きる子ども達においては、過去や前例に縛られず、自由にチャレンジできる環境がますます整っていくのではないか。希望的観測かもしれませんが、概ねそのようなことを期待しています。

—昨年度からは小学校でプログラミング教育が必修化しました。新たな世代を育むにあたり、私たち大人に求められる姿勢は。
私はプログラミングコンテスト等に招かれる機会があったのですが、作品を拝見して驚くのが、年々レベルが上がっていることです。中には、今すぐ仕事にできるのではと感じるほどのスキルを持った子どももいるんですよ。これから先、「小中学生のうちに起業する」ようなキャリアパスを選ぶ子も珍しくなくなっていくかもしれません。
そのような時代において、私たち大人が何をすべきかと考えると、これはもう、子ども達のポテンシャルを最大限に発揮するための環境を整えるのが仕事だなと思います。
これから彼らが身につけていく知識やマインドセットは、社会全体が切に求めている資質にほかなりません。小学校でプログラミング教育を学び、論理的思考力と自発性を身につけた子ども達に、いかに創造性を発揮してもらうか。それを応援するためには、我々大人も柔軟な考えを持つことが重要ではないかと思います。
激動=チャンス到来。前例に縛られずチャレンジできる時代が来た
—コロナ禍の影響で、社会のあらゆる場所が変革を迫られています。今の思いは。今は激動の時代であるとともに、子ども達にとっては幅広いチャンスにめぐりあえる、魅力ある時代ではないかと感じます。
たとえば、『鬼滅の刃』の舞台となる大正時代も激動の時代でした。第一次世界大戦が終わり、関東大震災の悲劇に見舞われながらも、大正デモクラシーが花開いたのがこの時期です。社会がドラマチックに変化した面白い時代で、だからこそ作品の舞台になりえたのかな、などと思いますが、令和はこれと同じくらい変化に富んだ、魅力ある時代になるのではないかと思います。
「これまでのやり方が通用しない」というのは、「どんどん新しいことにチャレンジできる」とイコールです。ビジネスのあり方も変わり、ただお金を稼ぐだけでなく、「人の役に立ったり、社会課題を解決したりする行動こそがビジネス」という考え方になっていくでしょう。そのためには、繰り返しになりますが、私たち大人の方が柔軟な考えを持つことが大切です。「昔はこうだったから」と先例に縛られず、子ども達が楽しんで能力を発揮できる社会にしていかなければと思います。

変えるもの、変えないもの。デジタル改革は「Beyond Limits」精神で
—デジタル技術は便利である一方、変化に戸惑う人も少なくありません。今を生きる大人、そして、新たな学びに向かう子ども達にメッセージをお願いします。台湾のIT大臣であるオードリー・タン氏の言葉に、「ITは機械と機械をつなぐ技術だけれども、デジタルは人と人とをつなぐ技術だ」というものがあります。まさにおっしゃる通りだなと共感するばかりです。
「不易流行」と言いますが、デジタル全盛期になるからといって、変えてはいけないものはあると思います。顔と顔を合わせる機会や、友達と走り回って遊ぶ時間の尊さ。こうしたものは、いくらデジタル化が進んでも普遍的な価値を持つはずです。デジタル技術を通し、知識の広がりやビジネスは加速させつつ、いかに人々を幸せにするか。それを検討していくのが、私をはじめ、今を生きる大人に課せられた役目なのかなと思います。

併せて、子ども達に伝えたいのは、「君たちの持つ端末は、無限の可能性を持っているんだよ」ということです。パソコンやタブレットの画面はいわば、世界に開かれた窓です。きっと、ワクワクするようなチャンスにめぐり合えるはず。私たちも頑張りますので、「Beyond Limits」(限界を超えよう)をモットーに、ぜひ一緒に新たな社会を作り上げていきましょう。

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