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(取材)文部科学省 武藤 久慶氏|「GIGAスクール2年目にかける期待と課題」

コロナ禍の影響で前倒しの実施となったGIGAスクール構想。去る令和3年度に全国の小中学校で「1人につき1台の学習用端末」の活用が開始され、今年度(令和4年)は「GIGA2年目」となりました。

予想以上のスピードで進んだ端末整備を前向きに受け止める自治体もある一方で、中には対応に苦慮し、どう扱ったものかと頭を悩ませる自治体も。賛否が分かれるのは保護者も同様のようで、コエテコでは以前、生の保護者の声をコラムでご紹介しました。


今回の取材では、そんな「2年目」への受け止めを文部科学省 初等中等教育局 学校デジタル化PTリーダー 武藤 久慶氏にインタビュー。

多くの学校現場を知り、現場教員からの意見を受け止める立場だからこそ見える課題について語っていただきました。

文部科学省 初等中等教育局 学校デジタル化PTリーダー 武藤 久慶氏


聞き手:森 輝幸(GMOメディア株式会社 代表取締役社長)
文・撮影:夏野かおる

GIGA前倒しには臨時休業中の学びの保障など一定の成果。ただし課題は山積

——GIGAスクール構想による「1人につき1台の学習用端末」が整備され今年で2年目となりました。文科省としては現状をどう受け止めていますか。

まずは評価できる部分についてですが、コロナ禍の影響があったとはいえ、4500億円もの国費が一気に投じられ、わずか1年間で全国の小中学校に学習用端末が行き渡ったのは驚くべきことであり、海外からも先進事例として注目を集めています。この端末を活用して、臨時休業中にオンライン授業などを行い、学びの保障を行った学校が増えてきた、これは分かりやすい成果だと思います。

これまでにも学校ICT環境の整備は幾度となく議題に上がり、地方交付税という形で財政措置を行い、地方自治体にお願いする形で整備を進めてきましたが、正直なところ思うようなスピードでは浸透しませんでした。それを1年少々で成し遂げることができました。世界でもここまでの規模で整備を進めた国は他にありません。


その一方で、多くの課題が残されていることも事実です。

例えば過剰なフィルタリングの問題です。私は日常的に全国の教育委員会や先生方の意見を聴いていますが、現場の先生から数多く寄せられるのが「フィルタリングが厳しく、思うように端末を活用できない」というお声です。多くの自治体では「営利企業のWebサイトは一律ブロック」しているようなケースもあります。他にも辞書サイトが見られない、子供用の動画サイトも見られない、プログラミングのサイトも見られないといった声が多数届いています。

そうすると、たとえば調べ学習をさせようにも、閲覧できるWebサイトが本当に少ない。どれだけすぐれた資料があっても、アクセスできない。このような問題が現実に起こっているのですね。

もちろん、児童・生徒が有害なコンテンツを閲覧する危険性を軽視するつもりはありません。しかし、どこまでのフィルタリングが適切かは冷静に議論する必要があります。

そもそも、今どきの児童・生徒は、家庭でもスマホやタブレットをたくさん利用しますよね。これらの端末は学校よりも制限がゆるやかなことが多いでしょうから、学校の端末だけをきびしく制限したところで根本的な解決になっているのかは疑問です。

リスクを恐れるがあまり、学習機会を損失させているデメリットもまた、軽視できないのでは?と感じます。

——過度な締め付けは児童・生徒の学習機会も奪ってしまうのでは、という視点ですね。

そもそも、GIGAスクール構想の「GIGA」は、ギガバイトのギガではなく、「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字を並べたものです。日本語に訳せば、「すべての児童・生徒に、グローバルで革新的な世界への扉」です。

この名称からもわかるように、ICT端末は、児童・生徒が世界に羽ばたく「扉」として活用されることが期待されているのです。その「扉」を過剰に閉ざしてしまうのは、やはり本来の政策意図とは異なります。


バランスが難しいところではありますが、今後は学校現場へのアンケートを基にして、教育上有益だけれども機械的なブロックに引っかかっているサイトをまとめるなどして対応していきたいと考えております。

「10年分の変化が1年で起きた」混乱の一方で、ジェンダー格差解消には期待

——フィルタリング以外にも、回線速度の遅さや端末故障時の対応など、さまざまな課題が指摘されています。

はい。まだまだ使い慣れていない現場が多いのも事実です。また、回線スピードの問題については、補助金を出してアセスメントを推進しています。一方で、課題が生まれるのはある程度仕方がないとも考えています。なぜなら、「1年でガラッと環境が変わる」というのは、民間企業ですらまれなスピード感だからです。

たとえば企業のデジタル化にしても、Windows 95が発売されてコンピュータが普及したあと、だいたい10年ほどかけて「従業員1人につき1台」の環境へと変化していったように記憶しています。そのくらいの変化を1年でやろうというのですから、課題が生まれるのは当然と言えば当然。これをスピーディに取り除いていて現場に伴走していくのが我々や教育委員会の仕事です。このため、来年度の予算も大幅に拡充して要求しているところです。

——GIGAスクールによるICT教育や、新学習指導要領によるプログラミング教育の必修化(中学校では内容拡充)には、「女子児童・生徒への学習機会提供=ジェンダー格差の解消」という期待も寄せられています。

それも重要な論点ですね。日本ではまだ理工系=男性の仕事というイメージが根強いですが、ハーバード大やマサチューセッツ工科大、カリフォルニア工科大ではすでに半数が女性です。

対する日本の大学、たとえば東京大学の学部などは女子学生が2割台。日本の理工系人材に占める女性割合の低さはOECD諸国中最低です。PISA調査によるとサイエンスのリテラシーが高い高1女子が37%いるのに、高校で理系を選択するのが17%、学部で理系に行くのが5%、修士でわずか1%。この偏りは抜本的に改善すべきです。


GIGAスクール構想やプログラミング教育を通して女子児童・生徒がフラットにICT端末に触れる機会が増えれば、理工系人材やデジタル人材におけるわが国のジェンダー格差解消も一歩前に進むことが期待できます。もちろんそれだけでは不十分で、我々も政策面で更に知恵を絞りますが、コエテコさんのような民間メディアの皆様にも、女子児童・生徒に向けた発信を積極的に行なっていただきたいですね。

教員の働き方改革が、児童・生徒の学習の質向上にもつながる

——ICTに期待されるところでいくと、教員の働き方改革も重要度の高い課題ですね。

ご指摘の通り、教員不足が叫ばれる中で、学校現場の働き方改革は急務です。そんな中でGIGAスクール構想は、教員の過重労働を軽減する効果も期待できます。

たとえば、ある中学校の英語の先生は、授業のたびに単語テストをなさっていると。1クラス30人×4クラスとして、年間60000問採点していたと。

そこでICT端末を使い、単語テストをCBT(コンピュータを使ったテスト)に移行すれば、採点も自動でやってくれる。さらに言えば、各生徒の記録も蓄積されることで、学習の質が上がることも期待できます。これはもう、使わない手はないはずです。

夏休みの宿題だって、全部紙で出して、長期休業終わったときに提出させて2週間かけて返却なんてことが未だにあります。デジタルドリルなどを使えば瞬時にフィードバックが出ますし、休業中の学習状況を把握することもできる。

指導以外でも、たとえば職員会議であるとか、教材研究を効率化することもできます。

実際に、ある自治体では指導力のすぐれた先生の教材を自治体で共有することにより、教員が教材作成にかける時間を削減し、児童・生徒に向き合う時間を増やすような取り組みをされているそうです。

先生方に余裕が生まれることで、児童・生徒の教育の質も高まることが期待できますから、良い実践例については国からも積極的に情報発信しています。「GIGAスクール構想は教えや学びのイノベーションであるとともに、働き方改革でもある」ということをもっと多くの先生方に知って欲しいですね。


——さまざまな期待がされるGIGAスクール構想ですが、今日のお話を伺ってみて、改めて、主役は子ども達であると実感しました。ゴールはあくまでも子ども達の学習機会均等・質の向上なのですね。

まさにそうです。ICT端末を活用すれば、授業のあり方は大きく変わり、児童・生徒の新たな魅力にスポットライトが当たる機会が増えるでしょう。

たとえば、「話し合い(議論)」の機会がある授業などは変化が大きいはずです。

「話し合い」をする授業ではこれまで、それぞれの意見を黒板に書かせたり、模造紙にまとめさせたりする方法が主流でした。そして発表する際には、班ごとに代表者を決めたり、先生が指名して発表させたり……という流れです。

このやり方では、1クラスあたりせいぜい4〜5名しか発言機会がなく、おとなしい子どもは影に隠れがちなのが課題でした。

そこへデジタル付箋ツールのようなものを導入すると、おとなしかった子も気軽に意見を出しやすくなります。また、クラウドの共同編集機能を活用すれば、なかなか考えを言語化できない児童・生徒が他の子の書き方を参考にできるメリットもある。その結果、従来よりも多くの子どもが意見を書いたり、言ったりしやすくなるのです。教室の中がこれまで以上に民主的になり、居心地の良い場所になることも期待できます。

ここでは一例を取り上げましたが、この他にも全国各地ですぐれた実践が次々と生まれています。日本の先生方のパワーはすごいですよ。もちろん、中には思うようにICT端末を使いこなせていない自治体や学校もありますが、端末の活用が日常化すれば、どんどんよい実践が生まれると期待しています。それを徹底的に応援するのが我々のミッションです。

子どもが学校で過ごす時間はわずか2割。残りの8割は自治体・家庭と手を取り合って

——今日は数多くの論点についてお話しいただきました。最後の質問ですが、学校のあり方が変わりつつある今、各家庭に求めることはありますか。

誤解を恐れずに言えば、「子どもの学びは、学校内だけで完結するものではない」ということです。

私はよく、各地で講演する際に「みなさんは、子どもの生活に学校での時間が占める割合は何%だと思いますか」というクイズを出題するんです。

せっかくですから、お答えください。何%だと思われますか?

——土日などの休みを考慮すると、30%ほどでしょうか。

惜しい!でもかなりいい線いっています。中には「5割」と答える先生や保護者もいるんですよ。でも、実はそんなに高くなくて、小学校だとだいたい18%程度、中学校でも20数%程度です。帰宅後の時間や週末、長期休暇などを考慮すると、学校で過ごす時間はわずか2割に満たないわけですね。

だからこそ、その2割の質を高めると同時に、残りの8割がどうあるべきかを考えなくてはなりません。もちろん睡眠時間や休息もありますから、純粋に8割の時間が使えるわけではありませんけれども。私が言いたいのは、お子さんの教育は「学校さえ頑張ればいい」ものではない、ということです。

——学校の変化には期待しつつも、子どもの教育には各家庭の理解・協力が欠かせないということですね。

そうです。特にGIGAスクール構想のような新たな取組は保護者のみなさまのご理解・ご協力が欠かせません。例えば端末を持ち帰って家庭学習に活用するということ一つとってみてもまだまだ反対が多いのが現状です。


GIGAスクール下での学校教育は、保護者のみなさまが経験された学校のあり方とはきっと大きく変わっていることでしょう。私ですら、大きな変化に一瞬戸惑いの気持ちを覚えることがあります。ましてや大切なお子さまが受ける教育となれば、不安な気持ちがあるのは自然なことです。

しかし、そうはいってもこれからの世の中、ICTツールの活用は社会生活と切っても切り離せません。未来に生きる子ども達を大切に思うからこそ、新たな教育へのご理解とご協力をいただきたいのです。

現場で奮闘する先生方からも、「保護者からの理解があるだけでも勇気が出る。新しいチャレンジへの意欲が湧く」という声が寄せられています。私どもだけでは、令和の教育改革を成し遂げることはできません。お子さまの未来を明るくするためにも、ぜひみなさまのご協力を賜りたいと思います。
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