(インタビュー)iRobot|ルンバみたいなプログラミング学習ロボット「Root」でSTEM教育を実践
そのルンバの開発元であるiRobot(アイロボット)には、小型版ルンバとも言うべきプログラミング学習ロボットがあるんですよ!
その名も「Root(ルート)」。この通り、てのひらサイズでルンバのミニチュア版みたいですが実は非常に多機能で高性能なプログラミングロボットなんです。
今年の1月に発表されたばかりのRoot(ルート)は、小学校の授業やスクールでの新しい教材としてはもちろん、ご家庭でも楽しめるよう一般発売もスタートしています。
Rootの楽しい機能から、iRobot社が展開しているSTEM教育、そして子ども達の未来への想いまで、Rootプロジェクト担当の村田さまに詳しくお話を伺いました。ぜひご覧ください。
「ルンバ」で有名なiRobotが開発!プログラミングを学べる「Root(ルート)」とは
Rootは、ロボット掃除機ルンバをモチーフとしたプログラミング学習教材用のロボットです。現在は次の2種類が販売されています。
- Root rt0 20種以上の機能とセンサー
- Root rt1 30種以上の機能とセンサー
Rootが絵を描いたり走ることができるタイル状のマットやステッカーなどの付属品がついています。
Root本体は自分で絵を描いたり、ステッカーでカスタマイズすることもできます。別売りで交換パーツも揃っているので安心ですね。下記のパッドをセットすることで、Root本体にブロックで作ったキャラクターをのせて動かすことも可能!こんなワニ型ロボットにもできちゃうんです!
実にいろいろなことが楽しめそうですね。
ではさっそく、アイロボットジャパンのRootプロジェクト担当 村田 佳代さんのインタビューをご覧ください。
Rootはいろいろなことができる優秀なロボット
——編集部
今日はアイロボットジャパンで、実際にルンバをモチーフにしたプログラミング学習ロボット“Root”に触れさせていただき、いろいろとお話を伺いたいと思います。Rootを見るのは初めてなのですが、ルンバに似ていますね。
——村田さん
ええ、私たちも「小さなルンバ」とか「ミニルンバ」と呼んでいます。
名前のRoot(ルート)は、もともと根っこという意味です。子ども達のワクワクの根っこの部分をかき立てていこう!という意図からついた名前です。
——編集部
パッと見の印象は、「両手で持つことができる、ミニ掃除機」といった雰囲気ですね。どんなことができるのでしょう?
——村田さん
残念ながらルンバのように掃除はできないのですが、Rootの小さなボディには、さまざまな機能が詰め込まれています。
車輪がついているのでルンバのように走りますし、マグネットがついているのでホワイトボードに張り付いて、垂直に登っていくことができます。
カラーセンサーもついていますから、たとえば「赤い色を認識したら音を出す」なんてこともできます。
——編集部
好きな色のサインペンをRootにつけてお絵かきプログラミングができるんですね!
——村田さん
そうなんです。サインペンをこの中心につけると、プログラミングをした通りにお絵かきが楽しめます。イレイサー(消しゴム)もつているので、描いた絵を消すこともできます。
——編集部
わぁ、すごいですね!スルスル動いてあっという間にユニコーンが完成しました。これは子ども達も喜びそうです。他にもこんなことができるよ!という機能はありますか?
——村田さん
Rootをプレイヤーに見立ててサッカーをするのも楽しいですし、コントローラーとして使えば、家庭用ゲーム機のような動きもします。レースゲームをしても良いですね。ほかにも、想像力を働かせれば、出来ることは無限に広がると思いますよ。
3ステップのプログラミングアプリでレベル別に学べる
——編集部
本当にいろいろなことができて、子どもも大人も楽しめそうです。実際にプログラミングをするときには、どのように行うのでしょうか?
——村田さん
Rootには専用のアプリがあります。ブロックをつなげてプログラムするスタイルで、文字が読めないお子様でも直感的にわかるようになっています。
また、この専用アプリはアイロボットの公式サイトやアプリストアから誰でも無料でダウンロードできます。
——編集部
ロボット本体がなくても、プログラミング体験ができるのですね。
——村田さん
はい。Rootの動き方をシミュレーションする機能があるので、ご購入される前でも、「このようなロボットなんだ」とイメージを持っていただくことができます。手前味噌ですが、このプログラミングアプリがとてもよくできているんです。もっとも特徴的なのは、3つのレベルがあることです。
まず、レベル1(グラフィカルブロック)では文字がまったく読めないお子様でも、絵のついたブロックをつなげていくだけでプログラミングができるようになっています。
次に、レベル2(ハイブリッドブロック)は、いわゆるScratchと似ていますが、レベル1より少し複雑になっており、指示や動きなどのブロックを組み合わせることで、さまざまなことができるようになります。
そしてレベル3(フルテキストブロック)は、このように本格的なコーディングによってRootをプログラミングします。
——編集部
なるほど!お子様の年齢やレベルにあわせて、プログラミングの内容もステップアップしていけるんですね。Rootの対象年齢はいくつですか?
——村田さん
それが、米国バージョンでは4~99歳*と記載されているほど、* 非常に幅広いんですよ(笑)。
——編集部
これはユニーク!(笑)
小さなお子さんから本格的にエンジニアをめざすような大学生まで、レベルにあったプログラミングができるようになっているのは素晴らしいですね。
——村田さん
はい。お子様の学習ロボットとしてはもちろん、大人が趣味として楽しむこともできますし、アートや音楽など、興味のある分野でプログラミングを楽しむことができるようになっているんです。
——編集部
まさに、6歳から99歳まで、楽しみながら学べるロボットなんですね。
iRobotによるSTEM教育
——編集部
iRobotといえばロボット掃除機ルンバが有名ですが、なぜ、プログラミング学習のロボットを開発したのでしょうか?
——村田さん
iRobotでは以前より、STEM教育に力を入れています。実際に、もう10年以上前から「未来のエンジニアを育てよう」というプログラムを継続してきました。
今は、世界的にエンジニア不足と言われていますよね。むろん、日本も例外ではありません。そこで、未来のエンジニアを育てるために、ものづくりやロボットにぜひ興味を持ってもらおうと。このように考えたiRobotのCEOが、自ら先頭に立ってSTEM教育を推進してきたんです。
実は、ルンバでもプログラミングの体験はできます。しかし、より多くの子ども達に「人の役に立つロボット」とプログラミングの世界を知ってほしいという願いから、簡単に誰でもプログラミングが楽しめるRootが誕生しました。
——編集部
日本でのiRobotによるSTEMはいつから行っているのでしょうか?
——村田さん
2018年から日本でもSTEMプログラムを行っています。ここ(アイロボットジャパン東京オフィス)でも、2ヶ月に1度、ルンバをScratchで動かすワークショップを定期的に開催していました。現在はコロナ禍により、いったん休止しているのが残念でなりません。再開したらぜひRootを導入したいと思っています。
また、Rootについては、導入時に1,000台を全国の学校に無償配布させていただきました。現在は37都道府県の小学校でご利用いただいています。これは「みんなでRoot!プロジェクト」と呼ばれる取り組みです。
プロジェクトの趣旨は、学校の先生方とコミュニティでやり取りをしながら、一緒にRootを育てていこうというもので、この姿勢もSTEMの一環であり、SGDsにおける「質の良い教育をみんなに」を実現するための活動でもあります。
多くのお子様たちがロボットとプログラミングに触れる機会を作ることで、その中の一人でも、エンジニアとして、ふたたび、このアイロボットに戻ってきてくれたら嬉しいですよね。
——編集部
子ども時代にロボットと出会い、プログラミングに興味を持ち、やがてエンジニアを志してくれたら嬉しいですよね。非常に長期的なビジョンで、素敵な試みだと思います。
「人の役に立つロボット」がiRobotのテーマ
——編集部
改めてRootを見ると、「いかにもロボット」という無骨さがなく、コロンとして可愛らしいですね。
——村田さん
そうなんです。日本では、ロボットというと「ドラえもん」や「ベイマックス」のような、二足歩行ロボットをイメージすることが多いんですね。
でも、実は、ロボットはすでに私たちの生活の中にたくさんあります。たとえば、弊社のルンバはお掃除をするロボットですし、自動車メーカーの工場では、自動車を組み立てるロボットが働いています。定義によっては、自動販売機もロボットのひとつと言えます。
二足歩行型かどうかに囚われず、何か人の役に立つ、そういう機械がロボットなんだよ、と多くの人に知って頂きたい。特に、お子様たちに感じて欲しいと思っています。
——編集部
今の子ども達が大人になる頃には、より多くのロボットが社会で活躍していそうですよね。ロボットの存在を抵抗感なく受け入れるためにも、意義のある取り組みと感じます。
——村田さん
iRobotでは、ロボットを使った体験やアプリでのプログラミング体験を、年齢や性別はもちろん、現在の習熟レベルにも関係なく、モノづくりの基本について「学びたい」意欲を持った皆さんに届けたいと考えています。教育現場だけでなく、一般のご家庭にもです。
まだまだ生まれたてのRootですが、私たちプロジェクトチームだけでなく、大学の研究機関や学校の先生方にもご協力いただいて、日本でも愛されるRootにしていきたいなと思っています。
小学校や英会話スクールでもRootが活躍中!
——編集部
先ほど、Rootを学校に1,000台の無償配布をしたと伺いましたが、学校以外の場所ではどんなところで活躍していますか?
——村田さん
宮崎大学では、教育課程の学生さん達がRootを使った授業プランなどを研究してくださっています。また、お台場にあるTGG(東京都教育委員会と株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAYが提供する体験型英語学習施設)でも、教材としてRootが導入されています。
——編集部
もともとアメリカ生まれのRootは、英語学習にも向いていそうですね。
——村田さん
ええ、Rootはいろいろな学習に応用できます。たとえば、英語学習と合わせるなら、Rootでプログラミングした走行ルートを道案内のように英語で説明してみる、など英語+プログラミングの教材としてロボットをフルに利用して頂けたら嬉しいですね。
——編集部
実際に授業をご覧になって、子ども達の反応はどうでしょう?
——村田さん
それはもう、盛り上がります。
小学校ですと、3人で1台のRootを使うクラスが多いのですが、考える子、やる子、見ている子、と分かれたり。音楽を奏でる作業になると、急にピアノが得意な子が興味を示して熱中したり、子ども達のさまざまな表情を見られてとても楽しい経験です。
——編集部
授業のカリキュラムは、御社が考案されているのですか?
——村田さん
いえ、学校でもプログラミングスクールでも英会話教室でも、教えるということに関しては先生方がエキスパートですから、私たちはアイデアを出すことはありますが、基本的に先生方にお任せしています。
人の役に立つロボットがテーマなので、ただ遊ぶだけでなく、人のために何ができるだろう?と子ども達が考えられるようなカリキュラムができたらと思い、多くの先生方とコミュニケーションをとっているところです。
ルンバもユーザーの声をもとに改良!日本から生まれるグローバルスタンダード
——編集部誕生したばかりのRootですが、あえて、これから改良していきたいことがあれば教えてください。
——村田さん
もっともっと先生方からご意見を伺って、Root本体だけでなく、使い方も含めてまだまだこれから皆さんと一緒に育てていきたいと思っています。
たとえば、日本では「Rootをいれるバッグが欲しい」という声をいただき、専用のキャリーバッグもこの夏に販売予定です。
そもそも、日本人の感覚というのでしょうか、とても細かく「ここをこうして欲しい」「ここを直してほしい」というご意見を頂くことが多いんですね。
実はルンバも日本の意見が取り入れられて改良を重ね、より使いやすくなっているんですよ!
——編集部
それは知りませんでした!
——村田さん
たとえば、ルンバのダスト容器が水洗いできるようになったのは、もともと日本でのご要望が多かったからです。そして改良した結果、世界中に「これは良い!」と広がったのです。いわば、日本から生まれたグローバルスタンダードなんですよ。
Rootも同じく、教室やご家庭で使ってみて頂いて、ご意見を頂けたら、どんどん反映していくつもりです。
——編集部
Rootは一般販売もしているということですが、どちらで購入できますか?
——村田さん
アイロボットの公式ストアで購入できます。最近、シンプルな機能に特化したモデルも発売されました。中が見えるスケルトンのデザインで、これもとてもかわいいのでぜひご覧になってください。
Rootでプログラミングの楽しさを。子供たちの無限の創造性を引き出すプログラミングはデジタル世代には最適の楽しい学習メソッドです。アイロボットのプログラミングロボットRootなら、学校や家庭など、環境を選ぶことなくプログラミングを楽しく簡単に学ぶことができます。
https://www.irobot-jp.com/root/ >
——編集部
とてもおしゃれですね!使っていないときも、インテリアとして部屋に飾っておきたいくらいです。ロボットは一般的に男の子に人気と言われますが、これなら女の子も興味を持ちやすそうです。
——村田さん
はい。たとえば、ユニコーンを描くプログラミングは女の子が大好きですね。ピアノやダンスなども女の子に人気です。Rootには男女や年齢の区別なく、幅広い方が楽しめるコンテンツがたくさんありますので、ぜひアプリをチェックしてください。
英語と同じくらいプログラムを書けることが必要な時代がやってくる
——編集部
では最後に、コエテコ読者に向けてメッセージをお願い致します。
——村田さん
英語もプログラミングも小学校で必修化になりました。現在の英語と同じくらい、プログラミングのスキルや思考能力が大事なビジネススキルになる時代がすぐそこまで来ていると感じます。いずれは、プログラムが書けるか書けないかで、就ける仕事が変わる社会がやってくるのではないでしょうか。
そんな時代に向けて、今のうちから、「どうして?なぜ?」という子どもの好奇心を育ててあげてください。好奇心があれば、目的に向かって、「どう実現すればいいかな」と考える姿勢にもつながります。欲を言えば、ただロボットで遊ぶだけでなく、「人の役に立つロボット」という視点を持つことで、より論理的思考に親しんでくれると嬉しいですね。
いつか、Rootでプログラミングを知った子ども達がエンジニアとなり、iRobotのドアを叩いて、私たちの仲間となってくれたら最高に嬉しいです。Rootが皆さんのドアとなって、新しい世界が大きく開くように願っています。
ライターコメント
お掃除ロボット「ルンバ」の登場は、私たちにとって大きなインパクトがありました。そのiRobot社がプログラミングを学べるロボットを販売していることは、恥ずかしながら、今回初めて知りました。Rootはシンプルでモダンな印象があり、部屋に置いてあっても違和感がありません。小さなボディながら、さまざまなことができるのに驚かされました。
取材ではユニコーンを描くRootを見せて頂いたのですが、実際に動くところを見ると「うわ!すごい!」と思わず口にしてしまうほどビックリします。新鮮な感覚を持つ子ども達なら、もっともっと刺激を受けることでしょう。
Rootはぜひ、もっと多くの人に知って頂きたいロボット教材のひとつです。プログラミングスクールの新しい教材としても良さそうですし、ご家庭で購入しても、幼児期から大人になるまで楽しみ、学べるロボットとして活躍することでしょう。Rootの詳しい情報は、下のボタンから公式サイトでチェックしてください!
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