この記事では、ドルトンプラン教育の特徴や歴史、導入している学校の代表例についてわかりやすく紹介します。
ドルトンプラン教育の特徴を知ろう!
ドルトンプラン教育を提唱したのは、アメリカのヘレン・パーカーストです。1920年代に教師をしていたヘレン・パーカーストは、全学年が同じクラスで授業を行う「単級小学校」で指導していました。異なる年齢の子ども達に同じ教育をすることに疑問を感じたヘレン・パーカーストは、モンテッソーリ教育からもヒントを得て、教師の負担が大きすぎる指導方法を改善することになります。学年が異なる生徒に対し、個別の課題を与え生徒のペースに合わせて学習を指導する方法を導入しました。さらに、生徒1人1人に合わせた学習プランを立て、生徒自身が自主的に学習を進められるよう整備。このような教育法が、ドルトン教育法と呼ばれるようになります。
日本では、大正時代にドルトンプラン教育が導入される流れがありましたが、軍国主義へと移行する時代の流れと共に衰退していきました。その後、日本の教育現場にドルトンプラン教育が導入されるまでに、40年以上の歳月がかかったといわれています。
ドルトンプラン教育の原理
ドルトンプラン教育の原理には、自由と協同の2点があります。自由の原理では、画一的な教育方法ではなく子どもの好きな分野を伸ばし集中力を高めることを指します。子どもが意欲に満ちて学習に取り組めるようチャイムを鳴らさないのは、自由の原理によるものです。それに対し、協同は、異なる年齢や個性がある子ども同士が触れ合うことで、幅広い価値観を持った人と交流できるようになることを指します。社交的な人格を育成し、社会人になった際に柔軟なコミュニケーション能力が発揮できることを目指しています。
ハウス
ハウスは、従来の学校における「ホームルーム」を指します。同年代ごとに行うのではなく、異なる年齢の子ども達と共に行うのがハウスの特徴。異なる年代の子ども達とハウスのなかで自然に触れあうことは、実際の社会と共通する部分があります。アサインメント
アサインメントとは、従来の学校における「時間割」を意味します。アサインメントは、朝の会から始まり、午前中はプロジェクトやフリープレイを行うことが一般的です。昼にランチタイムを挟み、午後は屋外でガーデンプレイを行う傾向があります。ドルトンプラン教育では、アサインメントは授業で行われる内容が書かれた冊子を配布されるケースが多くあります。冊子のなかでは、学習のガイドラインが詳しく提示されています。
ラボラトリー
ラボラトリーとは「実験室」を意味し、専門教科について集中して学ぶための部屋を指します。ラボラトリーには、「ハウスアドバイザー」と呼ばれる専門分野の教師がいることが特徴です。ハウスアドバイザーに対し、授業で学んだ内容からさらに発展的な質問をすることも可能です。 専門的な本が並ぶラボラトリーでは、生徒が学習に没頭しやすいことがメリットだといえるでしょう。ドルトンプラン教育の導入例
日本においてドルトンプラン教育は、まだまだ浸透していないことが現状です。ここでは、ドルトンプラン教育を導入している学校について紹介します。The Dalton School
1976年に河合塾がニューヨークのドルトンスクールと提携したことにより、東京と名古屋にThe Dalton Schoolを開校しました。対象年齢は1~12歳までとしており、低年齢のグループでは、小さな子どもの能力を開花させるために遊びのなかで学びを得るスタイルです。小学生は「アフタースクール」と呼ばれるグループになり、実験や体験を通して子ども自身が興味を持てる学習を発見しやすいことが特徴。知的好奇心を育めるよう、1クラスあたり4~8名の少人数制を採用しています。
ドルトン東京学園 中等部・高等部
「生涯に渡って学べる楽しさ」を育めるのは、ドルトン東京学園 中等部・高等部です。探求型学習を採用しており、複数の教科を横断的に学ぶことが可能です。学びをインプットするだけに留まらず、積極的にアウトプットできるよう、学内外で発信できる場が設けられています。スポーツフェスやアートフェスなど、生徒が自発的に取り組めるハウスが運営されていることが特徴です。アカデミックな人材を育成するために、英語力の習得にも力を注いでいます。海外の大学への進学も視野に入るよう、英語のクラスは実力に合わせてアカデミック・アドバンスト・スタンダードの3クラスに分けられています。
ドルトンプラン教育の本をご紹介
ドルとプラン教育について詳しく知りたい方は、関連書籍を読んでみるのもおすすめです。本項目では、ドルトンプラン教育に関する知識を深めたい方におすすめの書籍を紹介します。ドルトン・プランにおける「自由」と「協同」の教育的構造/伊藤朋子(風間書房)
本書籍は、ドルトン・プランへのJ.デューイの影響を探り、「自由」と「協同」の教育的構造の成立過程とデューイの経験の理論的発展段階との連動性を解明した歴史的理論的研究書となります。本書籍では、ドルトンプランの基礎的な知識から詳細な内容までが十分に盛り込まれているので、学問として知識を深めたい方にもおすすめです。書籍:ドルトン・プランにおける「自由」と「協同」の教育的構造/伊藤朋子(風間書房)
世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書/おおたとしまさ(大和書房)
「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」は、教育ジャーナリストであるおおたとしまささんの著書であり、ドルトン・プランのみならず人気のモンテッソーリ教育からシュタイナー教育などなど、世界で多く知られている教育法についてそれぞれ詳しく解説されています。さらに親の疑問に応える教育現場レポート・先生インタビューも紹介されており、教育方法を学びたい方にとって実に濃い内容となっています。書籍:世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書/おおたとしまさ(大和書房)
今後の教育現場に浸透することが期待されるドルトンプラン教育
日本で「ドルトンプラン教育を導入した学校に入学したい!」と考えても、導入している学校は数少ないため、通学の面などで断念することもあるでしょう。日本におけるドルトンプラン教育の歴史は浅く、日本の教育現場に浸透するまでには時間がかかるかもしれません。ドルトンプラン教育を導入している学校が近くにある場合は、学校見学会や体験授業などを積極的に利用したいですね。実際に学習スタイルを目にすることで、ドルトンプラン教育への理解が深まり入学後のイメージも沸きやすくなるでしょう。