この特性をもつ子どもたちには、通常の学校教育に物足りなさや違和感を抱える場合があります。
そのような環境では学習意欲がなくなってしまい、才能を発揮できる機会を失ってしまうことも。
この記事では、ギフテッドの子をサポートするギフテッド教育について解説していきます。
ギフテッドとは?
ギフテッド教育について知るためには、そもそも「ギフテッド」がどういう概念なのをある程度理解しておく必要があるでしょう。ギフテッドは英語で書くと「Gifted」で、単純に訳せば「与えられたもの」「贈り物」といった意味になります。つまり、神様や天から特別な才能を与えられた子どものことを「Gifted(ギフテッド)」と呼ぶわけです。
日本において、どういった子どもがギフテッドなのかという明確な定義はありません。ギフテッド教育が盛んなアメリカでは、概ねIQ130以上の子どもがギフテッドと呼ばれることが多いようです。ところがIQでは測れない範囲での才能を示すギフテッドもいるので、IQが高いことがギフテッドの絶対的な条件ではありません。
ギフテッドは、その特徴からASDやADHDなど発達障害の子どもたちと判断がつかないことがあります。お子さんがギフテッドなのか、発達障害なのか、あるいはそのどちらでもないのかは個人で判断することはとても難しいです。気になる方は、不正確な情報を鵜呑みにすることなく医療機関を受診することをおすすめします。
ギフテッド教育が必要な理由
生まれつき特別な才能を持ったギフテッドの子どもたち。ギフテッドには、なぜ特別な教育が必要なのでしょうか。ギフテッドの子どもたちは、一般的に生きづらさを抱えていることが多いと言われています。その多くは、周りの子どもと違う特徴を持っていることが原因。他の子どもよりも勉強ができすぎたり、特定の物事ばかりに熱中しすぎたりしていると、社会生活の中で関係性を構築するのが難しくなってしまう場合があります。ある分野に対して理解が遅い子どもに対してケアが必要なように、ある分野に対して理解が早い子どもに対しても、それと同じようにケアが必要なのです。
これは子どもたちの関係性の中だけにある問題ではなく、教育現場にも問題があります。日本の小学校ではまだまだ全員が同じスピードで学ぶことを重視していることが多いため、突出した才能を持つ子どもたちの扱いに困ってしまう先生も多いようです。
その結果、「浮きこぼれ」という現象が起こります。ある分野に対してついていけないことを「落ちこぼれ」と呼びますが、優秀すぎる結果として「浮きこぼれ」になってしまうのです。その結果として、周りの子どもたちと馴染めなかったり、疎外感を抱えながら生活を営んでいくことになってしまいます。
才能のある子どもたちの芽を摘まないために、日本でもギフテッド教育を拡張していくことが必要だと言えるでしょう。
ギフテッド教育の特徴
ギフテッド教育では、突出した能力に合わせてカリキュラムを進めることで、ギフテッドの子をサポートしていきます。特にアメリカではギフテッド教育が盛んです。
例えば、ギフテッドの子向けのクラスを設置する、飛び級、夏休みの間にギフテッド向けの集中講義を行うなど、様々な方式のギフテッド教育が実施されています。
しかし、日本の場合は、残念ながら特別な才能を伸ばしていくための教育の議論や導入はまだ十分に行われていない状況です。
ギフテッド教育の実例
日本ではまだギフテッド教育が浸透しているとは言えない状況ですが、先進的な事例もあります。いくつか紹介していきます。
渋谷区のギフテッド教育
渋谷区では2017年9月よりギフテッド教育に取り組んでおり、ギフテッドを「全般的または特定の分野で高い能力を発揮する子ども」と定義しています。初年度の2017年には8回の特別なプログラムが実施されました。
プログラムの内容開発に協力するのは、2014年から「異才発掘プロジェクト ROCKET」にもかかわってきた東京大学先端科学技術研究センター。
初年度には、書道家の武田双雲氏、ロボットクリエイターの高橋智隆氏を招いた講義が行われました。
小学3年生から中学3年生までの下記の児童・生徒が対象となっています。
(1)特別支援教室拠点校の巡回指導教員による指導を受ける児童
(2)情緒障害等通級指導学級に在籍する生徒
(3)長期欠席児童・生徒
参考:マイナビニュース「渋谷区で動き出したギフテッド教育、協働する東大先端研と区長の思い」https://news.mynavi.jp/article/20170905-a018/
翔和学園
東京都中野区の翔和学園では、特別支援教育としてギフテッド教育が行われています。学校として実施している貴重な事例です。
言語に関わるIQが130以上の子どもたちに理数系に特化した個別教育が実施されています。
翔和学園の「ギフテッド・クラス」では、才能児であると同時に発達障害などの障害をもつ「二重に特殊な(2E:twice-exceptional)」に当てはまる子どもたちを対象としています。
才能よりも障害の治療に焦点が当てられて、才能を伸ばすことを目標とされなかった子を伸ばしていくことが目的です。
才能児であるからこそ学習を個性化して専門的な支援が必要という想いが込められています。
翔和学園の学校ホームページによると、ギフテッド・クラスは次のような特徴があります。
(1)Acceleration(量とスピードの違い)参考:翔和学園 公式ホームページ https://showa-gakuen.net/gifted
■上位学年相当の学習内容毎に子どもの個性に応じて先取りして学習していきます。
(2)Enrichment(質的な違い)
■普通学校のカリキュラムの内容を超えた学習をその子どもの適性に合わせて行います。
(3)特別プログラムの実施
■普通学校のカリキュラムの内容にはない学習をその子どもの適性に合わせて行います。
・個人学習・プロジェクト:テーマを決めて成果を発表します。
・実地見学:博物館・美術館・工場・研究施設などに訪問。興味の刺激を行います。
・専門指導:専門家による指導を実施します。
・長期休暇プログラム:合宿・キャンプ等を実施します。
ギフテッドの子どもにおすすめの通信教材
本項目では、ギフテッドの子どもにおすすめの通信教材をご紹介します。スマイルゼミ
スマイルゼミは、子どもの「今」の状態に最適な学びを得られるタブレット通信教材です。幼児向け、小学生向け、中学生向け、高校生向けにそれぞれ異なる教材が提供されており、教科書に準拠した学習はもちろん、ギフテッドの子どもの得意分野を幅広く伸ばしていけるでしょう。幼児向け、小学生向けコースでは、学習習慣や生活のリズムを身に着けつつ、一人で楽しみながら学習を進められます。また中学生向け、高校生向けコースには、タブレットが学習傾向に適した課題を提示してくれるほか、わかるまで何度でも見返せる映像授業、定期テスト対策や1年生からの復習なども受けられます。
一人ひとりの傾向ややる気に応じて学習を進められるので、わからないことがあってもつまずことがなく、ギフテッド教育にも最適です。
すらら
すららは、『経済産業省の未来の教室実証事業』に採用された、無学年方式の通信教材です。
学習できる範囲は、小学校・中学校・高校の国語・算数・英語・理科・社会です。
18万問という膨大な問題が集約されており、お子さまの才能や伸ばしていきたい力に合わせて学習に取り組むことができます。
さらにすららの通信教材は、お子さまのやる気を引き出すトークンエコノミー方式を採用。
目標達成ごとにポイントが付与され、貯まったポイントは欲しいアイテムと交換できます。ゲーム感覚で勉強を進められるため、学習習慣が自然と身に付いていくでしょう。
また放任学習になりがちな通信教材のデメリット面をカバーするサポートも充実。
現役の塾講師を中心としたすららコーチの『学習設計サポート』を活用すると、分からない箇所の質問もできるため、スムーズに学びを進めていくことができます。
天神
天神は、豊富な類題と問題数でとことん反復練習に取り組めるデジタル教材です。デジタル教材ではあるものの、インターネットに接続することなく利用できるため、学習に集中することができます。
また天神は全国の小学校の教科書に準拠しており、教科書の内容に沿って学習に取り組めます。さらに教科書の範囲だけではなく、応用・発展・入試対策問題も数多く収録されているため、ギフテットのお子さまにとっては、興味ある分野や得意な教科の学びをどんどん深めていくことが出来るでしょう。
学習できる範囲は幼児・小学校・中学校です。
1つの問題に集中できるだけではなく丁寧なヒントや解説がついているため、お子さまにとって負担の少ない環境で学習を進められます。
ギフテッド教育のメリット
ギフテッド教育のメリットについては下記のようなものが挙げられます。才能を開花させる
ギフテッドの子どもたちは、通常の学校教育に対して物足りなさを感じる、集団の中で浮いてしまうなどの困難を抱える場合があります。そのような時に、通常の学校に馴染ませることに重点がおかれた指導がなされてしまうことも。
せっかく備わっている高い能力や才能を育成する機会が失われる原因にもなります。
ギフテッド教育の場合は、指導者がギフテッドの子どもたちについての理解や知識がある環境で、子どもたちが個々の能力を伸ばす授業プログラムを受けることができます。
個々の問題への適切なサポート
ギフテッドの子どもたちはすべてのことに対して才能があるわけではありません。むしろ、特定の物事に対して夢中になってしまうことが問題となります。
1つの能力に長けていても、コミュニケーションスキルや他の能力が備わっていないと、周囲との衝突の原因にもなります。
ギフテッド特有の問題について、専門的な支援を受けることができます。
ギフテッド教育のデメリット
対応している学校が少ない
残念ながら、日本ではまだまだギフテッド教育を実施している学校は少ない状況です。実施している学校も非常に少ないので、お住まいの地域によってはギフテッド教育をお子さんに受けさせるのが難しい場合もあります。
飛び級制度が未発達
代表的なギフテッド教育の方法として「飛び級」がありますが、日本での飛び級は非常に珍しい例となります。そのため、海外のような能力に合わせて進学のスピードを早める形でのギフテッド教育については、現状の日本の教育では制度の面や理解の面でも難しいでしょう。
ギフテット教育まとめ
突出した能力があるからこその苦しみを抱えるギフテッドの子どもたち。個々の才能を伸ばすためには適切なサポートが必要になります。
今回の記事では、ギフテッドの子どもたち向けの「ギフテッド教育」について紹介しました。
ただ、日本でのギフテッド教育は海外と比べるとまだまだ未発達。
彼らを支援する実践例が少しずつ増えている状況です。
これからギフテッド教育にも注目が集まり、整備されていくことを期待します。