教科担任制というと、中学校や高校をイメージされる方が多いですよね。もちろん似た部分もあるのですが、小学校ならではの部分も多いです。
お子さんが高学年となると、なかなか学校の出来事を家庭で話さない子も多くなります。また、コロナ禍で学校行事も少なく、親にとっては、子どもが学校でどう過ごしているのか見えにくいですよね。
この記事では、
・小学校での教科担任制とは?
・教科担任制のメリット・デメリット
・教科担任制 3つの実例
をご紹介します。
小学校での教科担任制とは?
教科担任制と学級担任制
【教科担任制】先生ごとに担当科目をもち、複数のクラスに対して指導する形式です。
中学校をイメージすると分かりやすいですね。
【学級担任制】
担任の先生が、専科科目(音楽や図工など)以外の全ての教科について指導する形式です。
今まで小学校では、学級担任制が主でした。
なぜ、小学校で教科担任制?
小学校での様々な困りごとを解決するための手段として、「教科担任制」が示されたと言えます。まずは、「中1ギャップ」への対策です。幼稚園・保育園から小学校に上がる際の困りごととして「小1プロブレム」があるように、小6から中1になる際にも様々なギャップがあります。
また、以前に比べて、小学校で指導すべきことが増えているのは事実です。最近では英語・プログラミングなどが必修となり、先生の業務がますます増えています。
その他様々な課題への対策として、小学校高学年からの教科担任制が取り入れられることになりました。
教科担任制のメリット
小学校から中学校へのスムーズな進学
中1ギャップの中でも大きな要因が、教科担任制です。学校も友達も大きく変化する中で、教科ごとに先生が異なる教科担任制になかなか慣れない生徒が多いのです。小学校の高学年なら、既に学校には通い慣れています。小学校から段階的に教科担任制を導入することで、このギャップを少しでもなくしていくことができるとされています。
授業の質の向上
教科担任制では、先生たちの専門性を活かした授業を受けられるというメリットがあります。先生たちは、「国語が専門」「中学校社会の教員免許ももっている」など、専門性をもっている方が多いです。その専門分野を生かした授業で、子どもたちをぐんと伸ばしてくれます。また、同じ授業を複数のクラスで行うので、教え方も磨かれていきます。
より多くの目で子どもたちを見守る
教科担任制では、担任以外の先生が子どもたちを見ることになります。都内の公立小学校では、1つのクラスの1週間分の授業を10人で担当することも!多くの目で子どもたちを見守ることで、担任だけの主観的な視点ではなく、より多角的に子どもたちを理解できます。子どもたちにとっても、いろいろな大人がいるという多様性を感じたり、担任には出しにくい姿を他の教員に見せたりできます。
先生の負担が減る
小学校の先生たちは激務と言われ、常に働き方改革が叫ばれている状態です。子どもへの対応や事務作業に追われ、翌日の授業準備や教材研究に十分な時間をとれないこともあります。教科担任制なら、特定の教科を担当しますので、全教科の準備は必要なくなります。その分、担当する授業の準備に集中できます。
教科担任制のデメリット
その先生の専門でない教科を担当することがある
小学校の担任を編成する際には、先生の経験値・男女(宿泊学習やプールのとき、男女どちらの先生もいると良い)・子どもたちとの相性などを中心に決められていきます。そうすると、6年担任の専門教科が二人とも社会なんてこともあります。すると、どちらか一人は専門じゃない科目を担当することになります。今までは担任がほぼ全て教えていたので、今まで通りといえばその通りですが、負担感の差は生まれます。
時間割の調整が大変
学級担任制なら、「今日は外で観察をするから、雨が降らないうちに理科をやろう」と時間割を変更することが可能です。しかし教科担任制では、急な変更をすると他のクラスの授業にも支障が出てしまいます。小学校では、行事準備などで時間に融通を利かせられるほうが便利です。教科担任制を実施するには、時間割の調整に労力が必要です。
子どもの情報を共有するのに一苦労
小学校では、子どものあらゆる情報を鑑みて授業を準備します。例えば、喘息持ちの子がいれば運動量の調整を意識して授業の流れを考えたり、児童養護施設から通っている子がいれば「お父さん・お母さん」「お家の人」「保護者の方」など言葉を選んで話をしたりします。そのクラスの子どもに関わる大人が増えれば、情報共有をする相手も増えます。隣のクラスの先生となら、子どもが下校した後に話す時間をとることができます。しかし、その時間だけ指導に来る講師や近隣中学校の先生だと、勤務時間内で落ち着いて話すことが難しいのが現状です。
どうやって実施するの?教科担任制の実例をご紹介
文科省が提示している4つの指導形態
文部科学省では、小学校の教科担任制として4つの形を提案しています。※指導形態による教科担任制の4分類「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告)」概要
・中学校並みの完全教科担任制
・特定教科における教科担任制
・学級担任間の授業交換
・学級担任とのTeam Teaching
https://www.mext.go.jp/content/20210729-mxt_zaimu-000015519_2.pdf
また、特に優先して専科指導するべき教科として、「外国語」「理科」「算数」「体育」が挙げられています。
教科指導の専門性を持った教師によるきめ細かな指導と中学校の学びに 繋がる系統的な指導の充実を図る観点から、外国語、理科、算数及び体育 について優先的に専科指導の対象とすべき教科とすることが適当と考えられる。「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告)」概要
https://www.mext.go.jp/content/20210729-mxt_zaimu-000015519_2.pdf
【実例①】数年前から実施している学校では
全国で教科担任制が取り入れられることになったのは、2022年からですが、実は10年以上前から実施している自治体・学校もあります。1つの学年に2クラスある学校では、1組の先生は理科を、2組の先生が社会を教えると分担し、その時間だけ隣のクラスに行って授業をするスタイルでした。
1つの学年に3クラスの場合は、理科・社会に加え体育の3つに分担しています。これは、すでに専科となっている音楽・図工・家庭科以外の科目で、授業時間数が同じくらいのものを分担しています。
算数も少人数指導が取り入れられていますので、教科担任にできる科目はかなり限られていますね。
【実例②】学級数の少ない学校では
単級(1つの学年で1クラス)の学校では、隣のクラスと交換することができません。そこで、5年生の先生は5・6年の社会、6年生の先生が5・6年の理科と分担することが多いようです。また、近隣の中学校の先生に来てもらうという例もあります。システムだけではなく、中学校の先生に慣れるので、より中学校が身近なものになりますね。
【実例③】最近増えてきているのは
教科担任制度が示されてから増えてきているのが、「英語の先生」「体育の先生」です。教員として正規職員となっている場合は一人で指導することもあります。しかし小学校の教員免許をもたない時間講師の場合には、担任と二人体制で指導に当たる(TeamTeaching)のが一般的です。教科担任制でお子さんの学校ではどうしてる?
小学校での教科担任制は、職員の人数・学校全体のクラス数によって実施できる形態が変わってきます。また、子どもの発達段階や中学校との連携具合によっても取り入れ方が変わってくるものです。ママ・パパ世代が小中学生のころとは学校の仕組みもだいぶ変化してきています。
小学校での教科担任制、お子さんの学校ではどのように進んでいるでしょうか。
改めて、お子さんが普段どんな先生にお世話になっているのか、確認してみましょう。
そして、お子さんの成長にどんなメリットになっているか考えるきっかけになればと思います。