こうすれば理科や算数(あるいは物理や数学)に興味を持つという方法はあるのでしょうか?わが子をどんなふうに導けば理系へ進む可能性が高くなるのでしょうか?
いろいろなデータをもとに、いわゆる“リケジョ”が育つ土壌やその背景にあるものを探っていこうと思います。
理系女子を増やす!育て方のポイントは3つ
リケジョの育て方には3つのポイントにまとめられます。① 幼児期から小学校時代は理科的な体験(博物館に行く、実験やワークショップに参加する)を多くする。
② 親が無意識に子どもの「理系」を制限しない。
③ ロールモデルとなる理系女子と交流できる機会を作る。
ではでは、詳しく見ていきましょう!
理系女子の割合|そもそも理系女子は増えているのか?
引用:リケジョの躍進に期待!/旺文社教育情報センター上記は、理系への進学割合の調査結果です。斜線の部分は医療系、オレンジが理学・工学・農学へ進んだ割合です。医療系は、看護学や薬学など昔から女子に人気のある学部も含まれているため、あえてこのように分かれています。
なるほど、着実に理系に進む女子は増えていますね。
さらに男女共同参画局が出しているレポートを見ていきましょう。
引用:男女共同参画白書令和元年版/男女共同参画局
専攻分野別に見ると、女子学生の割合が多いのは人文科学、教育といったいわゆる文系です。理系の中では薬学・看護学等が多いですね。見てわかる通り、工学・理学は低く、工学部は15%、理学も約28%です。
全体の割合から考えると、やはりまだまだ工学系や理学系に進む女子は少ないと言わざるを得ません。しかし、理系に進む女子は着実に増えてはいます。
「データから読み解く」理系女子の育て方
内閣府が出したレポートに非常に興味深い記述がありました。
女性の理工系分野への進路選択に影響を与える要因まとめ(一部抜粋)引用:女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究/内閣府委託調査
- 女性の理工学部志望者は数学や物理が好きで、理数系の成績も上位者が多い。
- 幼少期の博物館体験やイベント等の理系的経験が多い。
- 進路選択の理由として、将来像が明確であり就職に有利で将来高い収入が得られるからなど、動機づけが高い。
- 保護者も理工系を専攻していた割合が高い。
政府が公開している調査結果では、女子が理系に進む「要因・理由・影響」などを上記のようにまとめています。でも、ちょっとわかりにくいですね。
そこでひとつずつ、さらに詳しいデータを提示しながら解説していきます。
①幼児期・小学校時代の理科的な体験がリケジョを育む!
理系的な経験として、大学や自治体などが主催するイベントへの参加経験、自身での工作や天体観測、プログラミング等、理工系に関連する活動経験が多い傾向にあり、こうした日常的な体験が、理工系への興味を深めるきっかけとなっていることが考えられる。
ただし、全体としてみれば、理工系志望者であっても工作や天体観測、プログラミング等の体験がない者も過半数にのぼり、そうした経験が理工系を志望する前提となっているわけではない点には留意が必要である。理科的な体験を多くしている子どもは、理科好き、ひいては理系に進むことが多い傾向があるとしています。
引用:女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究
小さい時から、博物館へ言ったり、植物園に行ったりする。図鑑を見たり、星空を見たりして調べる。実験教室に参加し、さまざまなワークショップに行ってみる。
こうした体験の積み重ねで自然と「理科って面白い」と感じて、好きになることは確かに多そうですよね。
ザイアンス効果というのはご存知でしょうか?
心理学者ザイアンスが「最初は興味や関心がないことでも、繰り返し接触することで好きになる」と提唱しています。よくマーケティングでも使われる用語ですが、教育でも活用できそうではありませんか。
理科的な体験を繰り返すうちに、興味を持つようになったり、好きになったりすることは実際にあるでしょう。もちろん、子どもの好奇心や個性は千差万別ですから一概には言えません。
さまざまな体験をさせてあげることで、新しい発見があります。まずは子どもにたくさんの理科的な体験をさせてあげましょう。
天体観測の体験に参加して興味を持ったら、プラネタリウムに一緒に行ったり、あるいは国立天文台の見学に申し込んでみたらいいかもしれません。
幼児期から小学校時代は、好きなものが見つかったら、どんどん深堀りして体験を積み重ねてあげましょう。
②「無意識のバイアス」で子どもの進路を阻まないように!
さて、少し話が飛びます。
実際に理系に進むかどうかは、多くの場合、高校時代に決断します。文理融合の学部も増えてはいますが、ここでは理系にフォーカスしているので、あえて「文系か理系か」に絞り込んで話を進めていきましょう。
「一般的に考えて、女の子が次に挙げる専門分野への大学進学を希望したら、賛成しますか」に対する保護者の回答です。
引用:女子生徒の進学を阻む要因は?/国立開発研究法人科学技術振興機構
一見すると、賛成(青とオレンジ)が多いように見えます。
しかしオレンジの「どちらかといえば賛成する」は少々微妙な回答です。つまり娘が「わたし、機械工学をやりたいの」と言ったら「あなたが希望するなら賛成はするけれど」と消極的な賛成である可能性も含まれます。
「まぁいいんじゃない」「へぇ理系ねぇ」「反対はしないけど本当にいいの?」親は賛成のつもりで発した言葉でも、受け止め方によっては(親は理系に進むのは乗り気じゃないんだな)と考えてしまうことも。
理系に進みたいけれど数学の成績が今ひとつだったり、周囲の子たちは文系ばかりで迷ったりする場合もあります。親のなにげないひと言が「だったらやっぱり文系にしておこうか」となるケースもあるかもしれません。
ここでは理系女子を育てたい方を対象としてお話しているので、あまりないとは思います。ただ、同じ理系でも「工学じゃなくて、薬学部とかはどう?」と、ついつい親の思い(希望)を口にしてしまうことも。
こうした発言が無意識に子どもの希望をリードしてしまうのは結果としてはよくあること。
子どもからアドバイスを求められた時に、中学や高校生なら親の気持ちや希望を伝えてもいいと思います。とはいえ、一番大切なのは子ども自身の希望です。
③親が理系だと子どもも理系に進む確率が高い!?
少し違うデータから見てみましょうか。引用:男女共同参画白書令和元年版/男女共同参画局
女性の保護者が文系であるか、理系であるかによって、その子どもの進路意向を調査した結果です。子どもの進路の意向を見ると、女性保護者が理系であると、その娘が理系に進む割合は文系の場合より約2倍の割合になっています。
親が理系だと、前述した「理科的体験」の機会を持つことが多くなるでしょうから、そうしたことも影響しているのかもしれません。そして自身が理系ですから「理系は楽しいよ!」と良い話を繰り返すことも多いでしょう。
そのため、理系の親がいる子どもは理系に進む割合が多いと言われています。
もちろん、逆に言えば、娘が文系に行きたいなと思っているところ「これからは理系よ!理系に進みなさいよ」なんて言ってしまうこともあるわけですが。
「私は文系の短大卒だから娘を理系に育てるのは無理ってこと?」なんて思った方、違いますよ!
本好きの親を見て、読書好きに育つ子が多いとか、スノボ好きの親が子どもをスキー場に連れて一緒に楽しめば、その子もやがてスノボに挑戦することが多いのと同じです。
たとえ親が理系でなかったとしても、理系の子に育てたいのであれば親も一緒に「理科的な体験」に興味を持つことが大事なのではないでしょうか。
④理数教科の女性教師が増えればリケジョも増える!?
女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究によると自身を「理系タイプである」もしくは「どちらかといえば理系タイプである」と位置付けている割合を,中学校で理数科目(数学,理科)を1科目でも女性教員から教わっている女子と,2科目ともに男性教員から教わっている女子とで比較すると,それぞれ33.8 %,22.5%となっており,前者が11.3%ポイント高くなっている引用:男女共同参画白書令和元年版/男女共同参画局
上記によると、女性の教師から理科を学んだ女子生徒は理系に進む割合が高くなっています。しかし、中学、高校では国語や英語に女性の教師が多いものの、数学や理科、社会系は男性教師が多い傾向があります。
これは次にお話するロールモデルにも通じることですが、「あの先生の授業が楽しかった。先生のようになりたい」と身近に感じることで、理数系への関心がよりリアルにふくらみ、進路決定につながることはありそうです。
女性教員の割合(小中高大)
引用:平成30年度学校基本調査/文部科学省
女性の教師が保育園や幼稚園に多いのは容易に想像できることです。こうしてグラフを見てみると、小学校から中学、高校、そして大学と教育課程があがるにつれて女性教員の数は減っています。
全体的には、教育現場では男性女性の比率はほぼ同じなのにも関わらずです。
より真剣に進路を考える時期に、女子生徒が女性の先生に「理系に進むってどうなのかな」と、気楽に相談できたらいいのかなと思います。
とはいえ、これは親がどうにかできることではありません。
ですが理数系の専門教師として、あるいは大学の教授として、より多くの女性が活躍することで、さらに次の世代が育つということは知っておきたいですね。
⑤理系女子のロールモデルを知る機会を作ってあげよう
小学生、中学生、高校生の女子が「こんな風になりたい」と思えるような理系に進んでいる「先輩」と触れ合う機会が少ないのは残念なことです。
キャリア教育と結びついてきますが、理系に進んだ先輩女性たちと出会える機会を小さい頃から作ってあげたいですね。
機械に興味がある小学校高学年の女の子が、「ワークショップに行ったけど男の子ばっかりで、知らない男子とペアを組んでやらされるのが嫌でその後は行かなくなった」と言っているのを聞いて、残念に思ったことがあります。
ジェンダーレスと言われる時代でも、小学生や中学生の女の子が「男子しかいない中に入るのは嫌」と思う気持ちはわかります。
ただ最近はリケジョを育てよう!と、さまざまな女の子・女子向けの体験会やワークショップも開催されています。
また、少し前まではこうしたイベントは都市圏のみで、なかなか参加できない女の子もいました。今はオンラインワークショップも盛んですから、興味があるならどこからでも参加できます。
小学生なら楽しそうなワークショップを、中高生なら進路についても話を聞けるような「先輩たち」と話せるイベントへの参加をすすめてみてはいかがでしょうか。
理系女子の先輩たちから「リケジョの未来」を学ぼう
理工チャレンジ(リコチャレ)は
ロールモデルがいないとされる要因を解消するために、政府が行っているのが「Let‘s be a STEM Girl!!~地域から未来の理工系女子を~」の取り組みです。
理工系分野で活躍するSTEM Girls Ambassadorsが、さまざまなイベントやトークに登場。
リケジョお姉さんたちが経験談を語り、みんなの質問に回答してくれます。理工系を希望する女子を応援するイベントもたくさん開催しているので、ぜひチェックしてください。
Robogals(ロボギャルズ)
Robogals(ロボギャルズ)は,オーストラリア・メルボルン大学の学生が設立した国際的ボランティア団体です。子どもたち、特に工学分野に興味を持つ女子を対象としたワークショップなどを開催してきました。
世界中に30を超える支部が設立されており、日本でも、東京や鹿児島に支部があります。昨今の状況下でイベント開催も自粛されてきましたが、また活発な活動が報告されるでしょう。
未来への選択肢を大きく広げていきましょう!
子どもの未来は最終的には子ども自身が見つけて掴んでいくものです。それでも「こんな道もあるよ?」とさまざまな選択肢を見せてあげるのも親の役割のひとつ。
理系に育てようとこだわるだけでなく、男女に限らず「あなたの未来にはこんなにたくさんの道がある」と大きく広がる未来への希望を育ててあげたいですね!
おまけ!KIKKAKEで「きっかけ」をつかんでみませんか?
コエテコも、理科的体験のきっかけ作りをお手伝いしています。その名も「ガールズプログラミングフェス きっかけ」です。
たとえばこんなこと、やります↓
- 集まれ女の子!自分だけのきせかえゲームを作ろう
- 占いアプリをつくろう
- 咲かせよう!自分だけのお花型メモスタンド
もしかしたら全く興味を示さないかもしれません。でも、いいんです。それなら別の理科的体験に挑戦してみましょう!それでも関心がないようなら無理強いはしないで、本人が好きだなと思うことを見つけられるようにしてあげるのが大事なところです。