「小学校の入学前から、英会話に慣れ親しむ機会を作ってあげたい」「英語を勉強するものではなく、日常的に使う言葉にしてあげたい」という親世代の間で、幼児向けのオンライン英会話が注目を集めています。歌やゲームなど幼児でも親しみやすいカリキュラムが用意されていることに加え、小学校の英語必修化の対象学年よりも数年早く学習を始められることがメリット。
今回は幼児向けのオンライン英会話の料金や特徴、選び方のポイントを紹介します。
幼児向けオンライン英会話とは?
幼児向けオンライン英会話とは、オンライン英会話の中でも1〜5歳前後向けのレッスンが充実しているものを指します。レッスンに絵本やゲームを取り入れたり、実績が豊富な子ども向け教材を採用するといった試みを行なっているオンライン英会話が該当します。
幼児向けオンライン英会話の特徴を解説します。
知育を兼ねた英語学習
幼児向けオンライン英会話は、ゲームや歌など「知育」の要素を交えつつ、英語学習できるサービスが中心です。子どもにとって、0〜9歳は言語形成期前半に位置付けられます。
この時期の子どもにとって、最も大切なことの1つは母語の確立。母語の発達レベルは、第二言語の発達の指針となります。
たとえば母語が日本語、第二言語が英語の3歳児を例にしてみましょう。
3歳児の段階では、母語の日本語の読み書き能力や語彙もまだまだ未熟であるケースが少なくありません。母語が十分に身についていない段階では、第二言語の学習も思うように進まないことが多いです。英語と日本語がうまくひもづかず、子どもが混乱する可能性があるためです。
子どもの母語は「消えやすい」ことにも注意が必要です。母語の能力が不十分な段階で、母語を使うコミュニティから離れ第二言語を日常的に使うようになると、母語の読み書き能力は低いレベルにとどまり「聞く・話す」に関する受動的な能力が残る形になりやすいです。
つまり、言語形成期前半の語学学習は「母語と第二言語、両方の能力を伸ばす」ことが重要。
英語に特化した学習を行うというよりは、知育を兼ねた学習を行いつつ、必要に応じて日本語によるサポートを受けられる環境が望ましいと言えるでしょう。
日本語サポートの品質はサービスによって様々で、日英バイリンガル講師による日本語サポートを提供するものもあれば、親による同伴を推奨することで日本語サポート代わりとするものもあります。
送迎不要で英会話学習ができる
教室での英語学習において、大きなネックとなりやすいのが「送迎」です。特に幼児の学習の場合、小学校高学年や中学生と異なり、現実的に親の送迎や同伴が必要なケースは多いでしょう。とはいえ共働き家庭が全国的に増える中、子どもの送迎や同伴をし続けることは親にとって非常に大きな負担となります。
オンライン英会話はパソコンやスマートフォン、タブレット端末から英会話レッスンを受講できるため、送迎が不要です。幼児の場合、パソコンやタブレットの操作に慣れるきっかけづくりの場としてもレッスンを役立てられるでしょう。
小学校の英語必修化を見据えた対策にもなる
2020年度から小学3年生〜6年生を対象に、英語必修化がスタート。必修化に先駆けて2018年度から移行措置も始まっており、小学生の子を持つ親の間で英語学習に対する関心が強まっています。たとえば英検受験者数の推移は、子どもの英語学習のトレンドを強く反映しています。2011年度と比較し、2015年度の受験者数は24%増加。英検3級の小学生の受験者数も増加しており、2015年度と比較し、2016年度は16.7%増加。
英語必修化が始まる小学3年生は、言語形成期前半の終わりに属します。幼児期は知育を兼ねて母語と英語を並行的に学び、9歳以後はより本格的な英語学習を始めるという学習プランを立てることができます。
幼児向けオンライン英会話サービスの選び方・ポイント
ここからは幼児向けオンライン英会話サービスの選び方のポイントを解説します。
幼児向けのオンライン英会話は、知育を兼ねることができるような「子どもが興味を持つような教材が用意されているか」や「1アカウントで受講できる人数」などが選ぶポイント。
より効果的かつお得に利用するために押さえておくべきポイントを1つ1つみていきましょう。
子どもが興味を持つトピックが教材に含まれているか
絵本の読み聞かせやフラッシュカードを使ったレッスンなど、子どもが親しみやすいレッスンの工夫や教材選択が行われているかは重要です。また幼児のレッスンの場合、英語に興味を持ち出すまでは集中力の無さが課題となるでしょう。
教材のチョイスに加え、子どもの様子を見ながら柔軟にレッスン内容を見直したり、アプローチを変更できる「講師の臨機応変さ」も大切です。
日本人講師も在籍しているか
言語形成期前半の幼児は、母語の言語能力自体もまだ不十分であることが多いです。英語の質問に対して「英語の語彙も、日本語の語彙も足りない」ことが理由で、子どもが戸惑ってしまったり、学習中に混乱してしまうこともあるはずです。
必要に応じて日本語でのサポートが得られると、より学習がはかどる時もあるでしょう。
ひとつのアカウントを家族複数名で一緒に使えるか
特にきょうだいでの受講の場合、1アカウントを複数名で共有できるかは大切です。きょうだい2人で、オンライン英会話を受講するとします。ひとつのアカウントを共有できる場合、月謝は1人分。きょうだい1人ごとにアカウントが必要な場合、月謝は倍となります。
また言語形成期の子どもにとって、使用言語の量と質は、言語能力を伸ばすためにとても大切です。「家庭の中で母語と第二言語がどれだけ話されているか」「第二言語の明確な学習目的」や「他言語のメディアへのアクセス」などが、子どもの成長に大きく影響します。
もしも親が英語を話せず、親類にも英語話者がいない環境であれば「親も一緒に英語を学ぶ姿勢」を見せることが有効です。子どもにとって、親と英語で話をする時間が生まれるからです。
幼児向けオンライン英会話比較7選
幼児向けオンライン英会話サービスを7つ比較しながら、紹介します。下記の表については、各サービスのサイトで確認できる内容をもとに作成しています。最新情報は各サイトをご確認ください。
サービス名 | 月額料金 | アカウント共用 |
クラウティ | 4500円 (1日1回) |
可 |
GLOBAL CROWN | 9800円 (週1回) |
不可 |
DMM英会話 | 6980円 (1日1回) |
不可 |
リップルキッズパーク | 2838円 (週1回) |
可 |
ネイティブキャンプ | 6480円 (制限なし) |
ファミリープラン加入で可 |
QQキッズ | 1980円 (週1回) |
不可 |
ハッチリンクジュニア | 2760円 (月4回) |
可 |
クラウティ
クラウティは「1つのアカウントを家族全員でシェアして学べるオンライン英会話」。子どもは絵本の読み聞かせなどで英語に親しみ、母親は旅行英会話を勉強、父親はビジネス英会話を学ぶなど、1家族最大6人までアカウントをシェアすることができます。学研制作の教材を使用します。
幼児〜小学生向けには、簡単な間違い探しや迷路、絵本の読み聞かせなどによるレッスンが用意されており、パズルなどの視覚的要素を重視しながら楽しく学習することができます。講師はフィリピン人です。
料金:4500円(税抜き)1日1回・プラン30
アカウントの共用:1家族6人まで
講師:フィリピン人
GLOBAL CROWN
GLOBAL CROWNは、バイリンガル講師と日本在住歴3年以上の外国人講師によるオンライン英会話サービスです。オンライン英会話としては珍しく、マンツーマンレッスン以外にも、グループレッスンに特化したサービスを提供しています。カードやイラストなどで視覚的に楽しめるアプリを使ったレッスンが特徴。豊富な教材をそろえており、AIによる発音チェックができるアプリもあります。
料金:9800円(税込み)週1回 ※グループレッスンは4980円(週1回)〜
アカウントの共用:不可
講師:日英バイリンガル講師
DMM英会話
DMM英会話は多国籍の講師とマンツーマンレッスンができる大手オンライン英会話サービス。子ども専用の「こどもオンライン英会話」では、270以上の教材を無料で利用でき、オックスフォード大学と提携した教材も用意しています。アメリカやイギリスなどのネイティブスピーカーによるコースも提供。対象年齢は3歳からです。URL:https://eikaiwa.dmm.com/kids/
料金:6980円(税込み)1日1回・スタンダードプラン
アカウントの共有:不可
講師:多国籍
リップルキッズパーク
リップルキッズパークは、3~18歳までを対象にした子ども専用オンライン英会話サービスです。視覚的な楽しさを重視したカリキュラムを用意。歌ったりパペットを使ったりして、遊びながら英語に親しむことができます。子どもの能力にあったレッスンを提供するため、レベルを9段階に分けています。英検対策などにも対応しています。URL:https://www.ripple-kidspark.com/
料金:2838円(税抜き)週1回・おてがる週1プラン
アカウントの共用:可
講師:フィリピン人
ネイティブキャンプ
ネイティブキャンプは、24時間・一年中レッスン回数無制限で受講できるオンライン英会話。就園前〜12歳の子どもに向けて、キッズコースが用意されています。英語学習経験がない幼児のレッスンには「Let’s Go」シリーズが主に使用されます。また英語に触れた経験がある子どもに向けてはまずレベルチェックが行われます。くまのTeddyが先生として話す「キャラクター講師」もいます。レベルチェックテストはネイティブキャンプの無料体験期間にも受講できるため、子どもの英語力を正確に測り、学習プランを立てるきっかけのサービスとしても活用できます。
URL:https://nativecamp.net/
料金:6480円 制限なし
アカウントの共用:ファミリープラン加入で可
講師:多国籍、日本人
QQキッズ
QQキッズは、QQEnglishが手がける子ども専門オンライン英会話。子ども向けのカランメソッドを導入したカリキュラムが特徴。カランメソッドは講師が2回、早口で英文の質問を繰り返し、生徒がフルセンテンスで返答するという「英語の反復練習」。先生の質問に早く応答することが求められるため「英語で聞いた質問に、英語で返答を考える」というプロセスに慣れることができます。頭の中で日本語を介すことなく、ネイティブスピードでの英会話ができます。
LINE見守りサービスも導入しており、子どもが受講したレッスンの内容や進捗を専属スタッフが確認し、LINEで報告をしてくれます。子ども一人で受講させた際の、学習進捗や不安点などを確認するために便利です。
URL:https://www.qqeng.com/qqkids/
料金:1980円(税抜き)週1回
アカウントの共用:不可
講師:フィリピン人
ハッチリンクジュニア
ハッチリンクジュニアは2760円という安価な料金で受講できる英会話サービス。フィリピン人講師に加え、日本人講師も在籍しており、日本語サポートも受けられます。オリジナル教材と市販教材を活用したレッスンを提供しています。アプリをダウンロードすれば授業が受けられます。
URL:https://www.hatchlinkjr.com/
料金:2760円(税抜き)月4回・エンジョイコース
アカウントの共用:可
講師:フィリピン人、日本人
幼児向けオンライン英会話についてよくある質問・Q&A
幼児向けオンライン英会話の選び方や、必要な機材などについて、よくある質問をまとめました。母語の定着と英会話学習、幼児の学習ではどちらを優先すべき?
母語が定着しておらず、言葉による感情表現などが難しい場合、第二言語の学習も難しいケースがあります。まずは母語の学習を優先しましょう。ある程度の語彙を覚え、日常会話ができるようになってきたら知育も兼ねて英語学習を始めると良いでしょう。
目安としては、幼児向けの英語学習は3歳ごろからスタート。言語形成期前半である9歳ごろまでは、主な学習目的は「知育」でも構わないでしょう。
英検受験や留学、インターナショナルスクール進学などを見据えた本格的な英語学習は9歳以降から始めると良いでしょう。ただし、子ども自身がより早く英語学習を希望する場合はこの限りではありません。
子どもをバイリンガルに育てたい。親も家では英語を話すべき?
もしも、親が英語を話せなくても、バイリンガルに育てることは可能です。そのためには、子どもと一緒に英語を使う時間を確保しましょう。言語形成期前半であれば日常生活の中に、ゲーム的に「英語だけを話す時間」などを盛り込み、上手に話すことができたらご褒美をあげるといったことをしてみると良いでしょう。そして、母語の教育も欠かしてはいけません。
母語の能力が十分に発達していない幼児が、英語で保育を受ける施設「プリスクール」に身を置いた場合、第二言語中心に生活を送るうちに母語の能力が衰える可能性があります。そのため、第二言語と母語をバランス良く習得できるような環境を整えることが大切です。母語と第二言語がともに「子どもの身近で使用されている言語」であることが大切です。
まとめ
5歳前後までの子どもを持つ、親の方に向けて幼児むけのオンライン英会話の選び方や英語学習のポイントを解説しました。幼児は「言語形成期前半」にあたり、まだ母語の能力も十分に固まっていない段階です。母語と第二言語を均等に伸ばすことができれば高い学習効果が見込める一方で、やみくもにハイレベルなレッスンだけをしても子どもを混乱させてしまうリスクがあります。
まずは「楽しむこと」「知育」を目的に、子どもに英語を体験してもらうことを大切にしながら、学習を進めてみてください。