(取材)VIQRC第3回ジャパンカップ2024|STEM教育と国際交流〈VEXロボティクス〉大会レポート


2024年3月、会場の昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校には、米国・香港・ベトナム・タイそして日本、5カ国で総勢132名の選手が集結。
外は春まだ浅く、寒さが残る日でしたが、会場に入ると汗ばむほどの熱気にあふれていました。熱い大会の様子をたくさんの写真と共にレポートします。
VIQRC第3回ジャパンカップとは

VIQRC第3回ジャパンカップは、YSE(一般社団法人青少年STEM教育振興会)による開催で、今年は3月23日に昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校にて行われました。競技会では、Innovation First Internationalが開発・製造する教育用ロボット「VEX Robotics」を使用します。
競技は大きく次の2つに分けられます。
- チームワークチャレンジ
- ロボットスキルチャレンジ
今回の競技会では、合計で73個のブロックをゴールにスコアして、どれだけポイントを獲得できるかを競います。なお、この競技テーマは毎年変わります。
世界中で行われているロボットプログラミング大会の中でも有数のハイレベルな大会がVEX IQ Competition/VEX Robotics Challenge。アメリカ生まれのSTEMロボット教材・VEX(ヴェックス)の競技大会です。ここでは、VEXとその競技会であるVEX IQ Competition/VEX Robotics Challengeについて紹介します。
2024/11/06 10:16
YSE 一般社団法人 青少年STEM教育振興会について
YSE(一般社団法人 青少年STEM教育振興会)は、課題解決と、ものづくりのプロセスを重視し、STEM教育の普及を使命としています。実験やプロジェクト、今回のような競技会を通じて実践的なスキルを養い、科学的な思考や問題解決能力を育み、世界で活躍するSTEAM人材を育成する目的のため設立されました。
VEXロボティクス競技会について

VEXロボティクスコンペティションは、毎年4~5月にアメリカで世界大会が開催されています。
新たなシーズンごとに競技テーマが設定され、世界70カ国以上、110万人以上の選手が腕に磨きをかけて世界大会をめざしています。大規模な競技会は、参加選手の人数の多さがギネス記録として認定されるほど盛大です。
競技会がスタート!

今回のVIQRC第3回ジャパンカップは、昨年よりもさらにスケールアップ!
小学生チームが15チーム、中学生チームが17チームで、米国から9チーム、香港から7チーム、ベトナムから3チーム、タイから1チーム、そして日本からは10チームの参加があり、総勢でなんと132人。
競技フィールド近くでも応援できますが、控室にも大会の様子は中継されるため、各教室で他チームのチャレンジを見守る保護者やチーム指導者の姿も多くありました。

海外からの応援チーム、カメラを向けると皆さん笑顔でポーズ!

リラックスした様子で、保護者や引率者同士の交流も盛んだ。
2023-2024シーズンのVIQRCの競技テーマは「FULL VOLUME」です。

ブロックを積み込んで、赤いパーツで囲まれたゴールのボックスにデリバリーし得点を競う
緑や紫、赤色のブロックをゴールにスコアするのですが、制限時間は60秒。鳴り響くブザーと共に、英語のアナウンスが流れて、「んん?ここは日本だっけ?」と思わず周囲を見渡してしまうような雰囲気です。

「これぞVIQRC」と感じるのがノリのいい進行が最高のMCだ。

盛り上げるMCに緊張もほぐれてくる選手たち
VEXの大会はさまざまなチャレンジがあり、次々と試合は進み、海外組の応援は情熱的で、エキサイティングな光景の連続!見ているだけでこちらも浮足立ってきます。
さて、今回の大会では一度になるべくたくさんのブロックを乗せられるように工夫しているためか、とにかく大型のロボットが目立ちました。

ピットではそれぞれのロボットを入念にチェック。

他のチームと話をしたりロボットを見せ合ったりするシーンも

迫力あるロボット!
中には小学生らしき子が、ひとりでは抱えきれないような大きなロボットも登場!
でも競技の面白さは、ロボットの迫力だけではありません。
着実に数個ずつ掴み上げるロボットもあれば、機敏に素早く方向転換をしてスピーディーにブロックを回収するロボットもあります。
あるロボットは「ジジジジジ」と立ち止まっているかのような挙動ですが、その実、休みなくギアが回転し、ブロックをまるで重機のように飲み込んでいきます。それぞれの工夫をこらしたギミックがとても興味深い!どのチャレンジも目が離せません。
総勢132人が大熱戦!
今回、男子65人、女子67人の総勢132人が参加し、熱戦を繰り広げました。では、世界に向かって羽ばたく選手たちが奮戦する様子を紹介しましょう。

ファイナルを前にして「満点が取りづらくなっている、戦略を考えたい」「チームワークでがんばりたい」と語ってくれたふたり。

実力ある日本チーム同士のファイナルも!少しでも高い得点をめざしてがんばりました。

「やった!」うまくいったときに爆発する喜びの笑顔は最高

大型ロボットがくるくる動く!ドライバーの操作も重要なポイント。

祈るようにロボットを見つめる。
「チームワークチャレンジ」は、ランダムに選ばれた2チームが協力しあって高得点獲得を目指します。また「ロボットスキルスチャレンジ」は、個々のチームのロボットの実力を競います。
チームワークチャレンジは、VEXロボティクス競技独特のルールです。初対面のチームともコミュニケーションを積極的にとり、力を合わせてチャレンジする体験は、子どもたちにとって大きな財産となることでしょう。
女子力爆発!「Girl Powered」

今回、注目したいのが「女子の活躍」です。

香港から来日したチーム。緻密な戦略をたてる姿が印象的

「撮影させてね」と話したら、こんな素敵なポーズをしてくれた♪

いざ競技フィールドに入ると女の子たちの表情も一変。

思い通りにいかないこともあるが、粘り強く対応する。
男子のみで結成されたチームが13チーム、女子のみで結成されたチームが6チーム、そして男女混合チームが13チーム。
女子の参加数が男子を上回っているのは、ロボット競技大会では非常に珍しいケースです。
特に日本では、ロボットやプログラミングはどうしても男の子の割合が多く、ジェンダーギャップは常に課題のひとつ。そんな中で、あちこちに女の子たちの姿があるVIQRC第3回ジャパンカップは、まさにジェンダーフリーの実現であり、感慨深いものがあります。

スキルスチャレンジに挑戦する女の子たち。
日本からも、昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校や大妻女子中学校高等学校の女子生徒さん達も参加していました。複雑なギミックが仕込まれた大型ロボットを堂々と操作している姿はかっこよかったですね!
「女の子もいっぱい参加しているよ!どんどんこっちにおいで!」と手招きしているようなメッセージを感じさせる大会でした。
海外チーム奮闘!

もうひとつ、VIQRC第3回ジャパンカップの特徴といえば国際色豊かな大会であることです。
ジャパンカップは世界大会とは違う位置づけですが、アメリカをはじめ、香港やタイなどからも選手が参加。競技の進行はすべて英語です。
とはいえ参加選手は全員が英語が話せるわけではありません。
それでも子どもたちの間に垣根はなく、ロボットを指さして何やら英単語を並べて意思疎通をはかろうとしたり、ジェスチャーでやりとりしたり、ロボットという共通の話題があるからこそ、自然とコミュニケーションがとれいている様子。
取材班がつたない英語で写真撮影をお願いすると、みんな笑顔で応じてくれます。

Lancer Robotics / Sacred Hearts Academy / Honolulu, Hawaii, United States(米国)

Vajiravudh College / All Wellness Company Limited / Bangkok, Thailand(タイ)

JSTEA /WEO Chang Pui Chung Memorial School / New Territories, Hong Kong(香港)

Ka'ōhao Iwotics / Ka’ohao Public Charter School / Kailua, Hawaii, United States(米国)

STEAM for Vietnam Foundation / Hanoi, Vietnam(ベトナム)

Miyakami VEX Club / Tokyo, Japan(日本)
撮影が終わって場所を移ろうとしたら、女の子がひとり駆け寄ってきました。
張沛松紀念中學(香港)の学生さんらしいのですが、「わたしがデザインしました。みなさんにどうぞ」と、素敵なクリアーファイルをわたし達に手渡し、くるりと背をむけてピットに戻ろうとします。あわててお礼を言うと、ちょっと振り返って、はにかむような笑顔を見せてくれました。
写真を撮影する時間もない、あっという間の出来事でしたが印象に残るシーンでした。
こんな風に「誰かとつながる小さな交流」が、VIQRCジャンパンカップのあちらこちらで見られるのは、とても幸せなことですね。
そして結果は?…受賞発表

VEXロボティクスの競技会は、競技そのものもパワフルでワクワクの連続ですが、表彰式もすごいんです!

表彰式は1階ホールで行われた。広いホールを埋め尽くした選手と応援団!

受賞が決まるたびに大きな歓声と拍手が!
VEXロボティクス競技会では、パフォーマンスアワードとジャッジドアワードというカテゴリがあり、その中にはチームワークを評価する賞やロボットスキルの賞、やる気や熱気に与えられる賞、コーディング技術やプログラミング設計を最も効果的に発揮したチームに贈られる賞など様々あります。
スキルやテクニック、勝敗のみならず、ポジティブな態度やスポーツマンシップを賞するアワードもあるのが、VEXロボティクス競技会の特色です。その中でもっとも栄誉ある賞が「エクセレンスアワード」です。
エクセレンスアワード/チームワークチャレンジチャンピオン
Kalama Robotics / Samuel Enoka Kalama Intermediate School / USA
エクセレンスアワードとチームワークチャレンジチャンピオンとロボットスキルスで2位を獲得したハワイから来日したチーム

ファイナルで「110ポイント」最高得点を獲得した。しっかり握手する姿が清々しい。
ハワイのチームは仲間の写真も一緒にエナジーアワードを受賞

Ka’ohao Public Charter School / Kailua, Hawaii, United StatesはおそろいのブルーのTシャツで。来日できなかった仲間の写真も一緒にパチリ
シンクアワード受賞!

Miyakami VEX Club / Japan 八王子市立宮上小学校の実力派チーム
日本のガレージチーム(子どもたちの自主的な活動チーム)も受賞!

複数の賞を受賞した、日本のガレージチーム(小中学校に通う児童・生徒の自主活動)
ロボットスキルス3位を獲得した香港のチーム

優しい笑顔を常にたやさなかった香港チームのひとつ。おめでとう!
ジャッジアワード受賞の大妻女子中学校「Echo's」

練習フィールドで熱心に調整を繰り返していた成果が出ました!
やりきった後の笑顔が最高!

元気いっぱい!笑顔あふれるハワイチームのひとつ。

「ロボットが大好き!」と話してくれたレッドバイソンズのみんな。

昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校の選手の皆さんと校長先生も一緒に。
青少年STEM教育振興会 市川理事のメッセージ

左:市川理事
VIQRCジャパンカップも無事に3回目を迎えることができました。
VIQRCジャパンカップは、ただ単にロボットを競う大会ではありません。さまざまな国の選手たちと出会い、自分たちの発想を超えたロボットに刺激を受け、たくさんの人とのコミュニケーションを通じて、新たな発見がたくさん見つかる大会です。
VIQRCジャパンカップは、同じ思いと同じ目的を持つ仲間が集い、競技会そのものを楽しみながら、たくさんのことを学べる貴重な機会です。今大会は特に女子の参加も多く、さらに昨年度よりも多くの海外選手も来日してくださり、素晴らしい大会になりました。
ぜひ、VEXロボティクスに挑戦してください!
ボランティアとスポンサーに支えられた大会


縁の下の力持ち!ボランティアの皆さん
VEXロボティクス競技会は、毎回、多くのボランティアによって運営されています。今大会でも約60名のボランティアスタッフが活躍。
海外からのボランティアもいれば、昨年まで選手として参加していた子たちの姿もあります。こうしたボランティアスタッフは、さまざまな役目を担いながらも子どもたちと共に熱く燃えて、とってもポジティブで、すべてを楽しんでいます。
エンジョイ!の気持ちでボランティアの皆さんが支えているからこそ、大会は情熱的でパワフル、そしてスポーツマンシップとフレンドシップにあふれているのでしょう。
また大会は協賛企業にも支えられています。スポンサーとボランティアも募集中です!
特別協賛:昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校
※パートナーズオブイヤーを受賞
協賛企業

みんなで世界をめざそう!
VIQRCジャパンカップは、STEM(科学・技術・工学・数学)に対する興味や関心を引き出し、子どもたちが持つ無限の可能性を大きく伸ばすためのさまざまな工夫がされています。「でも、難しそう!英語も話せないし……」
なんて心配しないでくださいね。VEXロボティクスの競技会は、初心者や初参加の選手たちにをあたたかく迎え入れるフレンドシップに満ちあふれていますから!
ビギナー向けのワークショップや体験会も開催しています。大きく広がる子どもたちの将来のために、小さな一歩から踏み出してみませんか?
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