今回の教育トピックでは、最初にさまざまな調査やデータをもとに、なぜ子どもは話してくれないのかを分析します。後半では「親子での会話が活発になった」先輩ママ・パパたちのリアルな体験談を紹介します。一緒に「どうしたら親子のコミュニケーションがとれるか」を探っていきましょう!
〝子どもが相談してくれない・話してくれない〟の実態は
多くの親が「うちの子は何も話してくれない」と悩んでいますが、子ども自身はどう思っているのでしょうか。下のグラフは、日本とアメリカ、中国、韓国の比較調査で親とよく話していると回答した子どもの割合です。出典:インターネット社会の親子関係に関する意識調査報告書~日本・米国・中国・韓国の比較/国立青少年教育振興機構
「親とよく話している」と回答した割合は、日本は85%と4ヶ国中もっとも高くなっています。こうしたアンケートですべての子どもが普段思っているとおりのことを回答しているとは限らないかな?と思うところも少しありますが、いずれにしても子ども達は「よく話をしている」と思っている、感じている子が大多数です。
でも、私たち保護者からすると、子どもが積極的に話をしているとは思えないことも多い、親と子の認識にどうやらギャップがありそうですね。
親子の会話時間「平均」はどれくらい?
では、実際にどれくらい親子で会話をしているのでしょうか。学年別・家族との会話時間の調査結果を見てみましょう。引用:親子関係に関する調査研究/公益財団法人日本教材文化研究財団
年齢が低いほうが「よく話す」イメージが勝手にあったのですが、この中ではもっとも年齢の低い小学校3年のうち「約46%が家族との会話が30分未満」で、1時間未満も加えると72%にものぼります。
夕飯のときに子どもが話し出すことはありますが、せいぜい30分くらいでしょうか。夕飯に家族が揃わないこともあるし、リビングで一緒にテレビを見ていても会話がないこともありますし、確かに平日は親子の会話は合計しても1時間程度のような気がしてきました。
思春期で会話が難しいと一般的によく言われる中学生のほうが、1時間以上の会話時間があるというのは意外かもしれません。ただ、中学生は進路や部活のことなど親に話す=伝達しないといけないことが色々あるので、結果的に会話時間が長くなっているのでしょう。
また、違う方向から推察すると、「別に」「何もないよ」であっても、子どもとしては親の問いかけに答えた、つまり会話はしたと考えている可能性もありそうですね。親が思う「親子の会話時間」と子どもが考えている「親と話した時間」、ここにもギャップがありそうです。
子どもが親に話さない理由は?
最初にも出した、日本とアメリカ、中国、韓国の子ども達の生活についての比較調査ですが、こちらに「親と話すのが好きではない子たちの理由」がでています。親と話すことが「あまり好きではない」「好きではない」と回答した者を対象に、好きでない理由を三肢選択で尋ねた。小学生の場合、日本では「よく叱られる」(37.5%)、「話したいことがない」(31.8%)が上位となっている。共感というのは会話では大切な要素です。私たち大人でも、話の途中で「それって、どうなの」と遮られたり、首をかしげたりされると、話を続ける気が失せます。「そうそう!」「わかる〜」と共感されると「それでね」とますます会話が盛り上がります。
出典:インターネット社会の親子関係に関する意識調査報告書~日本・米国・中国・韓国の比較/国立青少年教育振興機構
親子、家族は日々共に暮らしていますし、遠慮がないだけに、相手にあわせて相づちを打つのではなく、ついその時の気分で適当に受け流してしまうことはよくあります。子どもの話によっては「それ、どういうこと?」と咎める口調で問い返すこともありませんか? 私はよくあるんですよね。
子どもからすれば(ママは怒ってる、わたしの気持ちなんてわからないんだ)と思い、口を閉ざしてしまう場面は、たぶん、親である私たちが思っている以上に多いのではないでしょうか。それが繰り返されると、子どもは親に話してもしょうがない、話したいことがないと思ってしまうのかもしれません。
小学生が普段よく親と話す内容は?
では、逆に、小学生が「親とよく話す内容」の調査結果を見てみましょう。子どもの回答です。引用:親子のコミュニケーションに関する意識調査/株式会社バンダイ
親子の会話で多いのが授業や宿題について、つまり勉強のことです。
もしかして、ついつい文句や愚痴や説教じみた話が多くなっちゃうのは、やっぱり勉強の話題が一番多いから?
親としては気になる勉強のことに、つい口を出したくもなります。友だちとのことも「誰と仲がいいの」「なにちゃん?名前は?」「仲がよくない子とか、意地悪する子はいない?」と、子どもからすると会話というよりも問いただされているような話し方になりがちです。
せっかく親が知りたいと思っている、授業のことや友だちの話題が出ても、それ以上話したくないと思ってしまうような「聞き方」を親がしていないか、私たち親も一度振り返ってみる必要がありそうです。
そもそも親は子どもの話を本当に聞いているのか?
次の調査は、子どもが「親は私の話をよく聞いてくれる」にあてはまる割合です。引用:家庭における親の教育意識と青少年意識調査の結果/荒川区青少年問題協議会
黒いのは平成29年度ですが、全体でおよそ半分です。親は「子どもが話をしてくれない」と思っているけど、半数の子どもが「親が自分の話を聞いてくれない」と思っていることになります。
子どもが話そうとしているタイミングと、親が話を聞こうとしているタイミングが合わないことはけっこうありそうですね。仕事から帰宅し、夕飯の支度をしている真っ最中に「お母さん、あのね」と切り出されても「ちょっと待ってて」「あとでね」と受け流すことはよくあります。
忙しいと「あのね」と話しかけたことを忘れてしまうこともよくありますし、思い出して「さっき、何を言おうとしたの?」と聞けば「ううん、なんでもない」と答えるのもよくあるケースです。
子どもが話そうとしている時と、親が聞こうとしている時の「タイミングギャップ」ここでもギャップがポイントになりそうです。
「スマホ片手に話を聞く親」実はやってるかも!?
日本は「家族が一緒にいてもそれぞれスマートフォンを操作している」「私が、親と話そうとするとき、親は〝時間がない〟〝いま忙しい〟などと言う」の肯定率が4か国中最も高い。この調査では、親はスマホを使用しながら私と話すことがよくある、と回答している子どもは、親は真剣に私の話を聞いてくれることがよくある、と回答した割合がもっとも低いのです。
こちらは、江崎グリコによる「親子の会話」に関する調査結果です。
引用:親子の会話に関する調査結果/江崎グリコ
わたしも実際にスマホをチラ見しながら子どもの話にうなずいていること、ありますね……。
スマホ利用時間は「1時間以上2時間未満」(31%)の回答が最も多くなっています。子どもと対面で会話する時間は「30分以上1時間未満」(28%)が最も多いという結果で、つまりスマホの利用時間のほうが多いという結果になっています。ここでも、子どもと対面で会話する時間で最も多いのは、30分以上1時間未満、あらためて親子の会話時間って少ないなと感じます。
昔は食事中にテレビをつけるのは教育に良くないとか、親子の会話が減るとか言われたものです。スマホはさらに小さくて手におさまり、下を向いて見ていることがほとんどです。うつむいて集中しているように(見える)人に対して、用事がないならあえて話しかけることもない、ような気もします。
スマホが悪いわけではないのですが、こうした生活環境の変化から、子どもが話すきっかけを失っている面はあるのかもしれません。
子どもが話してくれないとき「先輩ママパパたちの対応は」体験談
では、ここから実際の体験談を見ていきましょう。
今回、取材した先輩ママ・パパたちで「子どもから話してくれない」「学校で何かあったらしいのに、聞いても答えてくれない」こんな悩みを抱え、それぞれの家庭が試行錯誤して「最近はそれなりに話してくれるようになった」「意識したら家族の会話が増えた」実体験です。
父子でジョギングや銭湯へ!環境を変えたら少しずつ話すように
夕飯の時なら話すかなと思っても、落ち込んでいたり不機嫌なときは、ご飯もそそくさと食べて話しかけても返事もまともにしない。それにパパが怒ってしまい、子どもも意地になって話さないことがありました。ところが、コロナ禍になり運動不足解消のためにパパが息子を誘ってジョギングするようになったら、途中の土手に並んで座ってジュースを飲んでいると、友だちとケンカしたこととか話すことが多くなったそうです。外で解放感もあり、運動して気持ちも発散したから?並んでいるので(食事は真向かいに座ってます)話しやすいのかも?しれないですね。
また時々、父子で銭湯や温泉スパにも行くようになり、大きいお風呂に入るときも子どもの方から話してくることが多いそうです。母親である私はつい「話してくれないとわからないよ!」なんて言ってしまうので、環境を変え、話し相手を変え、気分を変えて話しやすい雰囲気作りも必要なのかなと実感しています。(Nさん/子ども・小4)
本人が楽しいと思う話題から親子の会話を増やした
ひとり娘なのですが、ある時から登校しぶりをするようになりました。私は不安で不安で仕方ないのに、何を聞いても不機嫌になるだけで何も話そうとしてくれませんでした。このまま登校拒否になるのではと焦ってしまい、「いったい何があったのか教えてくれきゃ、ママだって何もできないじゃない!」と思わず怒鳴ってしまったことも……。学校のカウンセラーに相談したら、原因を突き止めようと問いただすのではなくまず本人が楽しいと思うことから親子の会話を増やしていってみては?と提案されました。
そこで、娘が大好きなアイドルの動画が有料配信だったので、わたしから「ママも見てみたいからコレ申し込む?」と誘ってみると、「え、いいの?うん!」と、しばらく見ていなかった笑顔になりました。動画を観ている間も、「この子かわいいね」「この服、どこのだろう」なんて感じで話をすると、アイドルのことについてですがアレコレとしゃべりだしました。
学校を腹痛で早退したときも、どうも仮病っぽいし、何があったのかと聞き出したくて仕方なかったけど、グッと我慢して学校の話はいっさいせずに今日の夕飯は何にしようかとか日常会話をするように心がけました。ある時、一緒に動画を観ていると「あのさ〜、仲良しだったグループがあって、いつも一緒に遊んでたのに、なんか急に仲間はずれにされたんだ」とぽつりと娘が口にしました。
「そうなんだ、それって辛いね」とあいづちを打つと、それから少しずつ、学校であった女子グループのイザコザについて話してくれました。カウンセラーの先生に「話し出したら最後まで聞いてあげてください、途中でお母さんの意見を言わずに、聞き手に徹してあげてください」とアドバイスを頂いていたので、その通りにしたつもりです。
子どもの性格にもよるでしょうが、心を開くというか、子どもが話しやすいこと、話したいこと、話していて楽しいことを中心にして会話していれば、そのうち悩み事を打ち明けてくれるんだなと実感しました。でもそれまでけっこう時間がかかりますし、正直、親としてはヤキモキしてストレスもたまります。あの時期は本当に疲れました……(Hさん/子ども・小5)
子どもの短い言葉を受け止めて
私が一生懸命に話しているとき、夫が手にしたスマホを見ながら気のない返事をするので「もう、いい!」と怒鳴ると、夫はぽかんとした様子で「え、なに怒ってるの?」と聞いてきたので、よけいにイラっとしたことがあります。それから数日後のことです。横でしゃべっていた娘がいきなり黙ったので顔をあげたのですが、あ、と思いました。私は片手に持っていたスマホをみながら、子どもの話にあいづちを打っていたんです。相手がスマホをいじっていたら話しかけている方は嫌な気持ちになると経験していながら、自分も無意識にやってるんだなと愕然としました。
それ以来、子どもが「学校からの手紙だよ」と言ってきただけでも、意識してスマホを置き「手紙? なんだろう」「縦笛を買うんだよ」「音楽かあ、今は音楽って何習ってるの?」と、そのまま少しでも会話をするようにしています。
子どもの発した短い言葉を受け止めて返していけば10回のうち3回くらいは会話のキャッチボールになりますよ。まぁ確率悪いですけど、話したいときは話すだろうし、話したくない時も誰にだってあるよな、と大きく受け止めればいいのではないでしょうか(Aさん/子ども・小4)
子どもが嫌がることばかり口にしていたみたい
祖父母の家ではけっこう話すみたいなので、なんでだろうと思っていたら、母(娘にとっては祖母)に「あんたは話しているとすぐ、勉強したらとか、悪いことして怒られた子いる?とか、発表会の司会決まった?立候補してみた?とか聞くからでしょ」「そういうのが嫌なんだって」と言われて、返答に窮しました。勝ち気な自分としては、ついつい、のんびり屋の娘をせっつきたくなるのですが、娘と似た性格の母にはわかるらしく、「それぞれ人格があるんだから、ある程度は尊重して話を聞いてあげなさいよ」と言われました。
親子だから気遣いは不要という部分はあるとは思うんですが、同時に親子だからって自分が思っていることと同じような考えをしているとは限らない、そんな当たり前のことを忘れて、一方的な会話をしていたのだなと今は思います。親子でも、たとえば他人と話すときに相手の表情や反応を見て、話題を選ぶように、ある程度は気遣いをすることも必要なのだなと思います(Kさん/子ども・小3)
子どもが話してくれないことがあってもいい
こうした「会話をする工夫」をした家庭もあれば、逆に「話さないことをそこまで気にする必要があるか」といった意見もあったので、そちらもご紹介しますね。
普段は話さないのでもいいと思う
私自身、口べたですし、口数も多くありません。子どもの頃、親に根掘り葉掘り学校のことを聞かれるのが本当に嫌だったので、こちらからは特に何かを問いかけることはしないです。娘もおとなしいタイプであまり話しません。学校の様子は本当におかしなことがあれば先生から連絡もあるでしょうし、周囲からも自然と話題が入ってきます。「困ったことがあったら、いつでも話を聞くからね」とだけ子どもにしっかり伝えておけばいいのではないでしょうか(Rさん/子ども・小2)
自分から話すまで待つ
小学生くらいともなれば子どもの心もだんだん複雑になってくるのだと思います。悩みごとがある様子でも、待つのが一番じゃないですか。自分で解決する経験も成長として必要だと思います。ただ、うちでも妻はハラハラするようで聞きたがるので、やんわりと自分が止めます。母親として心配していることはとてもよくわかるし、それも健全だなとも思いますが。悩み考える時間は子どもに必要だと思います(Nさん/子ども・小6)
親子の会話を増やす方法とは
さまざまな調査結果や、先輩ママパパたちの体験談をもとにまとめると、「子どもから話を聞きたいとき」は以下のような工夫ができそうです。① 子どもが楽しいと思える話題から話をする
② 問いたださない・根掘り葉掘り聞き出そうとしない
③ 親はスマホを手にしないで話を聞く
④ お風呂・公園・散策・旅行先など解放感がある場所で会話をする
一般的によく言われることも挙げておきます。
- 子どもの話を途中でさえぎらない
- 自分の考えや結論を押し付けない
- 子どもが話しかけたら、なるべくその場で座って話を聞く
- 大きなトラブルを抱えているようなら「ママもパパもあなたの味方だよ」いつでも助けになるよということだけは伝えておく
「親子の会話がない」と「子どもが話してくれない」の違いを考えよう
考えてみると「学校でのできごと」は小学生の子どもにとっては日常であり、ある種のプライベートな部分でもあり、自我が芽生えるタイミングで一時的にですが「親に言いたくない」と考える時期があってもおかしくありません。話してくれない子どもについて悩むのではなく、親子の会話を意識して作ることが大切なのかなと思います。子どもから話を聞き出すこと以上に、子どもが「親は私の話を真剣に聞いてくれる」と思えるような日頃からの親子関係を築くところが一番難しいけれども、一番大切ではないでしょうか。
う〜ん、でも親子で話している時間ってもっとあるような印象なんだけど?