この教員免許の更新制、実は2022年7月より廃止(文部省科学省では“発展的解消”としている)されました。
親からすると、教員免許の制度変更はそれほど関心が高いものではありません。とはいえ、わが子を指導する先生に関わることについては、多少なりとも知っておいたほうが安心します。
今回の教育トピックでは「教員免許とは」から始まり、免許更新制の廃止などを取り上げていきます。
そもそも教員免許とは
- 幼稚園・小学校・中学校・高等学校の教員は原則として学校の種類ごとの教員免許状が必要
- 教員免許状は申請により都道府県教育委員会から授与される
主な免許状の種類
- 普通免許状
- 特別免許状(例:看護師が看護科の授業を受け持つ、外国人講師が中学の英語科を受け持つなど)
- 臨時免許状
教員免許更新とは
教員免許状の有効期限は、10年と定められていました。かなり長い期間ですが、新卒で教師になった場合には、32歳、42歳で更新時期がくることになります。(ややこしいことに「旧免許状」「新免許状」で更新時期に違いがあるのですが、ここでは触れません。)
更新は10年に1度、先生は自腹で講習代を払い、時間をさいて講義を受けていたわけです。
ちなみに、有効期限を過ぎて更新をしなければ、免許状は失効します。私たち親は知らないだけで、毎年、失効してしまう教師がわずかですがいたようです。
教員免許更新制の廃止(発展的解消)
2022年7月1日より、免許更新は廃止されました。文部科学省の公式サイトを見ると発展的解消となっており、「廃止」とは少々ニュアンスが違います。
また、サイトを見ると「2023年から、教師に対して何らかの研修制度等を行う」ともなっています。更新制度としては廃止するものの、先生が教育の情報を得られる機会や技能や知識を発展させるフォローアップが用意されるようですね。
ただでさえ「ブラック」とも称される長時間労働の中で、決まった大学等で受講しなくてはならない“ややこしく少々面倒な”旧更新制度は取りやめにする。今後は研修の受講もインターネットで受けられたり、それぞれが必要な研修を学校の管理職と相談して選んで受けるなど、より柔軟で実用的な方法を選べるようになるようです。
令和4年7月1日付けで教員免許更新制は発展的に解消され、同日以降に新たに授与される教員免許状は有効期限のない生涯有効なものとなります。令和4年6月30日までに授与され、失効した免許状については、自動で有効となることはありませんが、都道府県教育委員会に再授与申請手続を行うことで、有効期限のない免許状の授与を受けることが基本的に可能です。
出典:令和4年7月1日意向の教員免許状の扱いについて/文部科学省
先生は教員免許更新制度の廃止をどう思っているの?
引用:ReseEd教育業界ニュース上記によると、免許更新制の廃止について先生方の75%が賛成しています。どちらかといえば賛成も含めると、90%を越えています!
いかにこの免許更新制が忙しい先生方にとって「困ったもの」であったことがわかります。
教員免許更新制が廃止|効果は?メリット・デメリットは?
少しは先生の時間が増えるかも?
教員免許更新では、基本的に30時間程度の更新講習を受講しなくてはなりませんでした。30時間といっても、当然ながら通常の授業や雑務をこなしながらですから、大変です。10年に1度のことで、更新のための講習を受けられる期間はかなり長いので、計画的に行えれば問題ないのでしょう。
しかし、先生はとにかくお仕事が多い!
必要な講習であれば、もちろん授業の質や子どもたちの指導のためにぜひ受けて頂きたいものですが、更新のためだけに不必要な講習まで受けなくてはならないこともあったでしょう。
教員免許更新制がなくなり、少しでも先生の時間が増えるのだとすれば、子どもを預ける側の親にとっても良い話です。
教員免許更新制廃止のデメリットは?
教員免許更新制の研修内容で気になるのは「教育の最新事情に関する事項(最新の知識や技能を身につける)」です。
たとえば現在、一気に広がった端末を使った学習、いわゆるICT教育については、毎年のように状況が変化しています。こうした教育の情報を得る機会がなくなってしまうリスクはないのでしょうか?
これに対し、文部科学省は、
- 大学等の良質なコンテンツを全国の教師が受講できるようにする
- 教師ひとりひとりが強みを伸ばせるよう、個性に即した個別最適な学びを行う
- 学びの成果を可視化できるようにする
「教員免許更新制」は不適格教員を見分けるものではない
不適格教員という言葉はご存知でしょうか。親にとって実はもっとも気になるのは、ここかもしれません。指導力が圧倒的にない、教師としてはいかがなものか的な先生がいたとします。しかし免許更新制は、先生の指導力や技能や知識をふるいにかけるものではありません。
不適格かどうかは、実際には親が決めることではありませんが、中には(この先生にだけはクラス担任になってほしくない)と思うようなケースもあるのは事実です。
ちなみに指導が不適切な教員であると認定するのは、校長先生や地区の教育委員会からの報告で、都道府県の教育委員会が行います。弁護士や医師なども加わり、認定するそうです。
性格や資質として子どもの指導にあたるのには不安がある人や、体罰のような問題となる行動をする先生を「きちんと見極めて、正しい指導や処分をしてほしい」というのが親の願いです。そうした制度こそ、しっかり構築してほしいところです。
このままでは本当に「教師不足」になってしまうかも
小中学校の教師不足(教師の数における不足の割合)は、文部科学省の発表によるとわずか0.28%となっています。
むむむ、小学校では担任が5月まで決まらなかったとか、臨時教師のままだとか、けっこう先生いない問題を耳にするのに……
では、「先生になりたい」と思っている学生はどうでしょうか。
こちらは、香川大学が教職希望の学生を対象としたアンケート結果です。出典:教員志望意識の変容に関する回顧的調査/香川大学教育実践総合研究
教職に対するイメージとして、やりがいや子ども好きが「大変あてはまる・あてはまる」を合計すると80%以上になり、ちょっとホッとします。
しかし一方で、労働時間の不安を持つ教職志望の学生も、90%弱もいますね・・・。もうひとつ、データを見てみましょう。下記は現職の教職員が感じているストレスです。
引用:OECD 国際教員指導環境調査(TALIS)2018報告書/文部科学省
OECDに参加している諸外国と比べても、日本は「事務的な業務が多く」「保護者の懸念に対峙すること」によりストレスを感じている先生が50%近くにもなっています。
保護者の懸念に対峙することは硬い表現ですが、要するに「保護者対応」です。中には「保護者のクレーム対応」も含まれるでしょう。
親としては先生に相談したい時もありますよね。面談の時間を利用したり、連絡帳で先生のご都合の良いタイミングを聞くなど、少しでも負担を減らす努力はしたいところです。
令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について/文部科学省
「教師不足」に関する実態調査/文部科学省
教師の労働環境について私たち親も考えたいこと
先生方は山ほど仕事を抱えていることは、親である私たちもよく知っています。さらに10年に1度とはいえ「教員免許状更新」で時間がとられていたのが、今回の制度改変で解消するとしたら、多少なりとも良いことなのでしょう。しかし、前述したように教師になりたい学生は減り、実際に教員は不足しているのが現実です。
先生が子どもたちへの指導や関わりに全力を注げるような環境づくりを、国が率先して行い、私たち親も協力していけるといいのではないでしょうか。
ざっくりですが、「教員免許状」の基礎知識でした!これを踏まえた上で教員免許更新を深堀りしていきましょう。