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今回の教育トピックでは、こども家庭庁・こども基本法を深堀りしながら、わかりやすく解説します。
こども家庭庁・こども基本法とは
こども家庭庁とは、大人中心の国や社会の形を「こどもまんなか」へと変えていく司令塔として作られた新しい組織です。併せて、子どもの権利や人権を守るための法律である、こども基本法も施行されました。引用:こども家庭庁発足式/首相官邸
こども家庭庁は内閣府外局(金融庁などと同じ)と位置づけられた総理大臣直属の組織で、こども政策担当大臣も任命されています。
では、なぜ「こども家庭庁」「こども基本法」ができたのでしょうか?
まず、わたし達が知っておきたいのは「日本の子ども達」の現状です。
知っておきたい「日本の子どもたち」の現状
周囲を見渡した時、実はそれほど差し迫って「子ども達が大変だ」と焦ることはないかもしれません。しかし、わたし達が実際に身の回りに起きた出来事として知らないだけで、決して日本の子育て事情・子どもたちの環境が良いとは言えない現実があります。
子どもの幸福度が低い日本
イノチェンティ レポートカード 16「子どもたちに影響する世界」(ユニセフ)引用:ユニセフ イノチェンティ レポートカード 16
このレポートでは、「日本は、『生活に満足している』と答えた子どもの割合が最も低い国のひとつ」としています。また大変気になるのが、自殺率が平均より高いという点です。
一方で、身体的な健康は非常に良く、医療や保険制度が整っており、基本的には安全・安心な環境であると言えます。スキル面は数学や読解力で高いレベルにあるのに対して、社会的スキル、たとえばレポートでは「日本の場合、すぐに友だちができる」と答えた割合が低いと指摘しています。
いずれにしても、身体的な健康は保たれていますが(それは確かに非常に重要です)、精神的な幸福度が低いことは、とても気にかかる部分です。
児童虐待やいじめの問題
引用:いじめの状況及び 文部科学省の取組について/文部科学省残念なことに、いじめの件数は増加傾向にあります。いじめの定義や受け止め方、あるいは学校が認知できていないなど、さまざまな条件によって「いじめがあるかどうか」に誤差はあるでしょう。しかし、いじめが減ってはいない現実は確かです。
引用:児童虐待防止対策/厚生労働省
さらに児童虐待の相談対応件数の推移を見ると、こちらも増加の傾向があります。子どもを取り巻く環境の現実には、安全でも安心でもない「暗い部分」があります。それは、他人事ではすまされない、わたし達の周辺にあることなのです。
加速する少子化
引用:令和4年版少子化社会対策白書/内閣府少子化についてはいろいろな要因が挙げられますが、将来への不安、経済的な不安、環境への不安など「子どもを育てることに対する不安」が影響していると言われています。安心して子どもを産める・育てられる社会にならなければ、少子化の加速を止めることはできません。
子どもの未来が不安というのは、なんとも残念なことです。
保育も養育も教育も「縦割り」だった日本のシステム
もうひとつ、社会システムとして以前から指摘されていることに、政府の「縦割り」による弊害があります。
これまでの管轄について
幼稚園 | 文部科学省 |
保育園 | 厚生労働省 |
認定こども園 | 内閣府 |
こども家庭庁の設置と共に、組織は改変されています。
こども家庭庁の仕組み引用:讀賣新聞オンライン
なるほど、認定こども園や保育所については、こども家庭庁に移管されましたが、「幼稚園」は依然として文部科学省の管轄です。連携はするようですが、いわゆる「幼保一元化」にはまだちょっと遠いようです。
こどもを「まんなか」にして考えた時、教育はとても重要です。しかし、その教育現場の管轄がバラバラなためにスピーディーな対応ができなかったり、新たな取り組みがスムーズに行われなかったりする問題が生じています。
そこで、こども家庭庁が司令塔となり、こどもに関することをとりまとめ、なおかつ、大人目線だけでなく、こどもや若い人の意見を取り入れて物事を進めていこうとする趣旨があります。
円滑に連携していけるかは、これからのこと。こども家庭庁がきちんと機能することを願うばかりです。
こども基本法を詳しく解説!
こども家庭庁の発足と共に、親として、おとなとして、学んでおきたいのが「こども基本法」です。
こども基本法とは
すべてのこどもや若者が将来にわたって 幸せな生活ができる社会を実現するため、こども基本法がつくられました。こども施策の基本理念などを明確にし、国や都道府県、市区町村など 社会全体でこどもや若者に関する取組「こども施策」を進めていきます。これからは、国や都道府県、市区町村が、この基本法の内容にそって、 こどもや若者に関する取組を行っていきます上記に出てくる「こども施策」とは、こどもや若者に関する取り組みのことで、
引用:こども基本法とは/こども家庭庁
- 教育施策 教育の振興
- 医療施策 小児医療を含む医療の確保や提供
- 雇用施策 若者の社会参加支援や就労支援
この法律によって、次で説明する「児童の権利に関する条約」にあるような、子どもの権利や人権が守られることが期待されています。
ちなみに「こども基本法」の「こども」は未成年と限定はしていません。心と身体の発達過程にある人を「こども」(つまり若者も含まれます)としています。
子どもの権利条約とは
こども基本法のバックグラウンドとして、国連が採択した「子どもの権利条約」(こども家庭庁では“児童の権利に関する条約”と表記)があります。子どもが、人間らしく、幸せに生きられ、健康に成長するために必要なことは、世界のどこに生まれても「おなじ」です。それを「子どもの権利」と呼びます。世界中すべての子どもに生まれながらに「子どもの権利」があり、だれもそれをうばいとることはできません。子どもの権利条約4つの原則とは
子どもがどんな権利をもっているのかを定めたのが「子どもの権利条約」です。日本をふくめ、世界196の国と地域がこの条約を守ることを約束しています。
出典:子どもの権利条約/ユニセフ
- 生命、生存及び発達に対する件い(命を守られ成長できること)
- 子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
- 子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)
- 差別の禁止
日本では、1994年に子どもの権利条約を守る約束をしています。それから長い時間がたちました。ようやく日本国憲法にもとづき、上記の4原則をはじめ、さまざまな子どもの権利や人権を守るための法律(こども基本法)が整ったことになります。
参考:子どもの権利条約/日本ユニセフ協会
こども家庭庁を詳しく解説!
では次に、こども家庭庁についても掘り下げていきましょう。
こども政策全体におけるリーダー的存在
こども家庭庁は、こども政策全体における「リーダー」になるとしています。担当する大臣は、他の省庁に対して「それで大丈夫?もっと改善できるのでは?」と勧告できます。たとえば文部科学省に対して、学校運営のあり方など「こども」の意見を取り入れ、その視点で物事をとらえて「見直したほうがいいのでは?」と発言できます。子どもに関することは、教育だけではなく実にさまざまなことがあります。どの省庁が管理するのか、行うのかが明確にならない「ボーダーライン上」の課題が宙に浮いてしまうことがないように、こども家庭庁はすべての「こどもに関すること」に取り組みます。
こども家庭庁の基本方針6つ
こども家庭庁の基本方針
- こどもや子育てをしている人の目線に立った政策を作ること
- すべてのこどもが心も身体も健康に育ち、幸せになること
- だれひとり取り残さないこと
- 政府の仕組みや組織、こどもの年齢によって、こどもや家庭への支援がとぎれないようにすること
- こどもや家庭が自分から動かなくても必要な支援が届くようにすること
- こどもに関する調査・データを集めそれをしっかり政策にいかすこと
こども家庭局の体制
引用:北海道新聞こども家庭庁は3つの部門に分かれています。長官官房はいわば「取りまとめ」役、生育局はすべての子どもの育ちをサポート、支援局は特に支援が必要な子どものサポートを行うとしています。
【こども家庭庁の課題・疑問】こどもの意見を取り入れるは本当に可能なのか?
こども若者★いけんぷらすに登録して自分たちの声を届けよう
こども家庭庁の特徴として「こどもの意見を取り入れる」ことが挙げられます。そのための取り組みとして「こども若者★いけんぷらす」の登録がスタートしました。引用:こども家庭庁
意見を伝えるテーマは、こども家庭庁や各省庁が示したものに限定せず、登録したメンバーから提示することも可能です。また、意見はさまざまな方法で伝えることができ、その後、意見をどう反映したか(しなかった場合にはその理由)も報告されます。
こども政策推進会議などの開催
特別な機関として、総理大臣をトップにした「こども政策推進会議」が設置されました。子どもの意見を取り入れながら、こども施策の基本的な方針(こども大綱)をつくります。さらに都道府県の自治体は、こども大綱にそって、具体的なこども施策についての計画をたてます。すでに、こども家庭庁では「こどもまんなかフォーラム」を開催しています。第1回は、経済産業省別館で行われ、出席者は小学校5~6年生と中学生のあわせて8名、さらに小倉こども政策担当大臣や白見内閣府大臣政務官が参加しました。
引用:こどもまんなかフォーラム/こども家庭庁
発言の詳細も掲載されていますが、子どもたちの意見が非常に具体的で興味深いので、お時間がある時に一読することをおすすめします。
【こども家庭庁の課題・疑問】子どもコミッショナーは設置されるのか?
子どもの権利が守られているかをチェックする独立した機構については、議論はされたものの設置はされませんでした。子どもコミッショナーと言われる(子どもオンブズパーソンなども)機関は、政府から独立している点がポイントです。
子どもコミッショナー等は、行政から独立しているので子どもの人権や利益が守られているか監視する役割を果たします。また子どもの声を直に聞いて、その意見を報告したりレポートにまとめたりもします。海外では、実際にその声が届いて法改正なども行われています。
現在、日本でも実はいくつかの自治体に子どもの人権養護機関が設置はされていますが、数は多くありません。子ども基本法が第一歩だとすれば、いずれ国による第三者機関の設立も叶うのでしょうか?議論は引き続き必要なようですが、私たち大人も、未来の子どもたちのことも考えて、こうした課題に関心を持ち続けたいですね。
参考:
こども基本法とは/こども家庭庁
こどもまんなかフォーラム/こども家庭庁
子どもを守るのはの「家庭・大人・社会」そして「国」
こども家庭庁が担う役割が今ひとつ、把握しきれない面もあります。しかし、とにかく「子どものための・子どもも主体的に参加できる」国が定める大きな組織が動き出したことは良かったのではないでしょうか。今後は、形だけでなく、本当に支援や活動が進んでいくか、わたし達も関心を持って見ていきたいですね。
「子どものこと」は教育に限らず、妊娠出産から就活まで、別の視点からすると格差社会や貧困の問題、さらには児童虐待や性犯罪、LGBTQや障がいへの支援や理解、課題も推進すべきことも、とにかく山のようにあります。
今回の「こども家庭庁」の発足で、よりスピーディーに子どもに関するさまざまな課題が解決され、子どもたちの幸福度が上がり、未来への希望が持てるようになることを願います。
子どもにとって身近な存在である「家庭」「大人」が、そして企業を含めた「社会全体」が、子どもの健やかな成長を守っていけるよう、わたし達ひとりひとりも意識していきましょう!
こうして客観的に見ていくと、子どもに関するいろいろな課題があることがわかりますね……。