今回の記事では、4回にわたる非常に密度の濃いカリキュラムと、参加した受講生の皆さんの様子をお届けします。
U-20ミライ創造カレッジが今年も開催!
公益財団法人ソフトピアジャパンとは
今、地方から力強い「IT支援・IT人材育成」の波がきています。公益財団法人ソフトピアジャパンは岐阜県のIT・IoT産業支援に加え、若い世代に向けた「専門的かつ高度なIT知識とスキルをわかりやすく伝える」特別講座も行っています。「将来の優秀なIT人材」を目指すきっかけ作りとして、岐阜県の学生ならどなたでも参加できます。*
2023年の取り組みは昨年に引き続いて「AI」に特化した特別講座を開講。プログラミングやITスキルに関心の高い受講生達が集まりました!
U-20 ミライ創造カレッジ〜カリキュラム内容とは〜
U-20 ミライ創造カレッジ「4日間のカリキュラム」
Day1 10:00〜16:30 |
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【ハンズオン】Teachable Machineを使ってAIを作成 【グループワーク】身の周りにある AIを探す 【グループワーク】通し課題のアイデアを相談 【ハンズオン】Google Cloud PlatformのAIを使ってみる | |
Day2 10:00〜12:30 |
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【グループワーク】宿題の発表 【ハンズオン】 HuggingFace の AI を使う | |
Day3 10:00〜16:30 |
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【グループワーク】宿題の発表 【ハンズオン】Dream Studioを使ってみよう 【ハンズオン】Google Colaboratoryを使ってAIを作る | |
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Day4 10:00〜13:30 |
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講座「U-20 ミライ創造カレッジ」は、AIに関する知識を網羅し、Teachable Machine(グーグルが提供する機械学習のツール)やGoogle Colaboratoryを使用しながら実践的にスキルを学びます。
講座のゴールは「Teachable Machine を使って身の回りの課題を解決する AI を作ってみよう」。テーマに沿ってAIを作成し、中間発表で講師や受講者からフィードバックをもらい、さらに練り直して最終日に成果を発表する流れです。
AI、データサイエンス、人工知能、これからの時代に必要となる領域の知識をしっかりと学びながら、まず自らの手を動かし、実際に作ってみる。そのプロセスを講師や他の受講生と共有し、互いに意見や感想を伝えながらスキルアップしていきます。
AIについて切り取って学ぶのではなく、体系的に「AIとは」を探究しながら同時に実践的なスキルを身につける、非常に密度の濃い内容となっています。講座の運営を行ったのはスキルアップAI。スキルアップAIはデータサイエンスのスペシャリストから体系的に学べるAI時代の学習コミュニティで、コエテコでも過去に取材しています!
(取材)中学生・高校生向け|オンラインでAIを学ぼう!スキルアップAI Youth体験会を徹底レポート
この記事でご紹介するのは中高生向けに特化したプログラミングスクール「スキルアップAI Youth(ユース)」です。「AIはまったくわからないけど、参加しても大丈夫かな」そんな中高生の皆さんや保護者の方!この記事ではたくさんの写真とともに、体験会の流れ・実際に参加した中高生の皆さんの感想をまとめています。もちろん、講師の先生にもインタビューしているので、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事をcoeteco.jp で読む >最終日には発表会!受講生のAI作品を紹介
最終日の発表はどれも見応えのある作品ばかりでした。県内で優秀なIT人材を育成しようと力をそそぐ公益財団法人ソフトピアジャパンの熱意が受講者の皆さんにも伝わっていたのでしょう。4日間という短い期間ながら、AIの知識とスキルをしっかりと積み上げられたことがわかる、素晴らしい発表会となりました。
では、受講生の作品を2つご紹介します。
AIによる焼肉判定機
発表者:岩田くん
作品名:焼肉判定機
まずは優秀賞を受賞した岩田くんの作品「焼肉判定機」。岩田くんが「焼肉判定機」をAIで作ろうと思ったきっかけは、視覚障害者のお話を聞いたことだそう。
焼肉は肉の色が変わることで焼けてきたことがわかります。しかし、視覚障害があると「焼けたかどうかがわからない」と聞いた岩田くん。
「焼肉は自分で目の前で焼きながら食べるのが楽しいところ。色が識別しづらい方にも、肉が焼ける状況がわかって、そろそろいいかなと思いながら食べてもらえたら」と思い、肉の焼き加減を判定するAIを思いつきました。
Teachable Machineに、さまざまな焼肉の画像を学習させ、肉が焼けた状態を判定できるようにさせます。
「50通りのテストを行い、1件のみ判定が違っていましたが、ほかの画像は正確に判定できました。今回は牛肉のみですが、鶏肉や豚肉も正確に判断が可能です」と岩田くん。
実際にAIを作成しながら「学習能力の高さに驚いた」と語る岩田くんですが、アプリの実装までは届かなかったようです。「技術不足を感じました」と発表会で話していましたが、技術はこれからどんどん身についていくわけですから、今後が楽しみですね。
講評として、課題そのものが素晴らしいというお話がありました。AIの機能ばかりに目が向きがちですが、大切なのは「AIで課題を解決すること」。その課題について、色の識別が難しい方にも「焼肉の楽しさ」を味わってほしいという“気づき”が素晴らしいという指摘がありました。
また発表もとてもわかりやすかったです。「これはもしかしたら、お店が肉の焼き具合を判定してお客さんに伝えるといった使い方もできるかもしれません」と講師の先生からお話がありましたが、もっと改良されていくと本当に商品化も夢ではないかもしれませんね!
AIで駐車場の空き状況を判定
発表者:水野くん
作品名:駐車場判定AI
もうひとつご紹介するのは水野くんの作品「駐車場判定AI」。ショッピングモールなどに車で行った際に、駐車場が空いているかどうかがすぐに分かるアプリです。
「次のステップにつながるアイデアのもとになるAIを作る」という課題設定で、より高度な機能を備えた完成系を見据えて今回のアプリを開発したそう。完成系については最後に発表があります。
空いている駐車場の写真と車が停まっている駐車場の写真をインターネット上で収集し、Teachable Machineの画像分析AIに学習させました。
駐車場判定AIに画像をアップロードすると、「停まっている」「空いている」それぞれのパーセンテージが表示されます。
空いている駐車場の写真をアップロードすると、「空いている」が94%!しっかりと判定できているように見えますが、別の写真をアップロードすると、駐車できるスペースがあるにもかかわらず、「空いている」が1%と判定されてしまいました。
AIの学習に利用したインターネット上の駐車場の画像は背景に余分なものが含まれていることが多く、学習データとしてなかなかいいものが集められなかったそう。
データの集め方を工夫すること、判定結果に「半分空いている」という項目を作り、選択肢を増やして制度を上げることでより精度があげられるのではないか、と水野くんは振り返ります。結果からしっかりと改善案まで導き出せるところは素晴らしいですね!
次に、今回開発したプロダクトをもとに完成系として考えているAIプロダクトのアイデアを紹介してくれました。プロダクト名は「駐車場自動案内AI」。スマホアプリと連動し、空いている駐車場にスムーズに車を停められるサービスです。
今回課題となったデータの集め方については、立体駐車場の天井にカメラを設置して駐車場の様子を撮影する、ドローンで駐車場全体を撮影して駐車場のマップを作成する、というアイデアを紹介してくれました。
講師の先生からは、「大きなアイデアが浮かんだときに、いかに要素を小さく分解していくか、どこから攻めていくかを考えることが、AIを活用するときにすごく大事になってくる。それを実際に体現して、第一歩を踏み出してみたというストーリーになっているのがすごくよかった」とお話がありました。
受講者の皆さんに聞いてみました!
AIの台頭は、ちょうどスマホが世の中に浸透したときと同じような流れを個人的には感じています。
実際にやってみて、簡単にAIが使えることに驚いたのと同時に、著作権などの問題について深く考えるようになりました。権利や法律の線引きが難しいところですが、線引きをする考え方の基本をこの講座で知ることができ、とても勉強になりました。
僕は、情報処理とプログラミングの検定を受けて、プログラミング1級、情報処理2級取得、日本情報処理の表計算1級を取得済みです。「IT系の進路を考えているならAIも学んだ方がいい」と勧めらて、今回の講座に参加しました。
4回の講座でしたが、僕が1番興味を持ったのは、GAN(敵対的生成ネットワーク“Generative Adversarial Network”)ですね。AIとAIを互いに学習させて高める仕組みが印象的でした。
いずれ人間がやっている仕事はAIに置き換えられるのでは、と一時期話題になりましたが、それを聞いた時に自分も何か武器を持った方が将来のためになるのではないかと考えました。
そのきっかけとして、まずAIに触れて、学んでおこうと思って講座に参加しました。
オンライン講座でしたが、グループワークで初対面のみんなとディスカッションしたり、アドバイスし合ったりしたのが非常に刺激になりましたし、とても面白かったです。
岩田くんは「雑談をする時間が少しあったのですが、学校とは違う同年代の人といろいろな話ができる機会が持ててよかった」、水野くんも「他の受講生と意見交換ができて刺激を受けました」と話してくれました。
また、全体のカリキュラムとしては
- 著作権侵害について
- AIの放言をどのように制御するか・どこまで制御すべきか
こうした問題について、皆さんが深い関心を寄せていることが印象に残りました。
AIの仕組みを知るだけでなく、AIの持つ課題や、人間がどう使いこなしていくべきか、一歩踏み込んだ内容は受講生の皆さんにとって新たな学びとなったのではないでしょうか。
講師の先生にもお話を伺いました
AI講座を担当して下さった小宮先生、よろしくお願いします。
オンライン講座で、さまざまなレベルの受講生が対象となりましたが、カリキュラムで工夫した点を教えていただけますか?
また、受講生がより高いレベルを一人でも学べるよう、まとめ以降の発展的な資料も揃えました。
カリキュラムの中では、特に3日目の「AIに何ができて、どこからできないのか」「AIの使い方によって問題になることとは」といった観点からの講義に重点を置きました。
AIの機能は素晴らしいものですが、AIと人間のどこに境界線を引くのか、そうした意識を持ってほしかったからです。
なるほど、AIと人間の関係についての思考もとても大切なのですね。では、最後に受講生の皆さんへのメッセージをお願いいたします。
ぜひ、今回の講座で得た知見とスキルを、これからの人生を「生き抜くチカラ」として活用してほしいと思っています。
公益財団法人ソフトピアジャパンからのメッセージ
「U-20 ミライ創造カレッジ」の開催について、そして受講生の皆さんへのメッセージをお願いします!
私たちは、進路が決まりきっていない段階で最新の技術に触れることで将来の幅が大きく広がると考えています。ITの分野に関心を持ち、より深く広く知ることで、新たな発見があり、将来への展望が大きく開けていくことでしょう。
U-20 ミライ創造カレッジが若い皆さんの未来への扉を開くきっかけになれば、こんなに嬉しいことはありません。
最終日の発表は想像を遥かに超えるレベルの高いものでしたし、何より、家族や周囲の人との会話を通じて身近な課題に気づいてくれた点が素晴らしいと思いました。
先生からもお話がありましたが、課題に気づくのはAIではなく、私たち人間です。その課題をどうしたら解決できるか、アイデアだけでなくテクノロジーを駆使して実装に至るまで考えてくれた受講生の皆さんに感激しました。
変化の激しい今の時代、指示されたことをするだけでなく、自分で課題を設定し解決していく力が必要です。今回受講された皆さんの、今後の活躍を期待しています!
羽ばたけ!岐阜県発「ミライを創るIT人材」
ChatGPTをはじめ、10代にとっても興味深いAIを取り上げた今回の講座・発表会を取材させていただき、また受講生の皆さんとお話をさせていただき感じたのは、「みんな、とても深く考えている」ことです。AIの機能や知識、スキルを得て、仲間との交流や先生のお話から深く考察し、どうすればいいのかを考え、考えをテクノロジーを使ってカタチにしていくプロセスを経験したことは今後の人生にも大いに役立つことでしょう。
まさに「ミライ」へ飛び立とうとする若く力強いエネルギーを感じたイベントでした!
今回の講座では、AIを作ることはもちろん、法律、権利の問題をしっかり学べたのが非常に勉強になりました。
イラストなど、その人にしか描けないものを模倣して描く生成AIについて、権利がどうなっているかがずっと気になっていたのですが、それがわかってよかったです。