公立小学校なのに、こんなにお金がかかる?学用品費の実態と「学校備品化」で進む負担軽減
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一方で、2026年7月には、算数セットや彫刻刀を学校の備品として整備する自治体の事例を、文部科学省がまとめて全国に周知しました。
今回の教育トピックでは、学用品費の実態と、そこから生まれつつある「学校備品化」という新しい動き、そして家計が厳しいときに頼れる就学援助制度について、まとめてお伝えします。
公立小学校でも、学用品費だけで年間約27,000円近くかかる

公立小学校の授業料はかかりませんが、学用品や教材にかかる費用は、そのほとんどを家庭が負担しています。
文部科学省「子供の学習費調査」(2026年1月16日公表/令和5年度調査)によると、公立小学校で保護者が支出した学校教育費(授業料以外の教育費)は、子ども一人あたり年間74,336円でした。内訳は次の表のとおりです。
費目 |
金額 |
構成比 |
| 図書・学用品・実習材料費等 | 26,860円 | 36.1% |
| 通学関係費(通学・通学用品など) | 21,718円 | 29.2% |
| 学校納付金等(PTA会費など) | 9,533円 | 12.8% |
| 修学旅行費等 | 6,718円 | 9.0% |
| その他 | 5,827円 | 7.8% |
| 教科外活動費 | 3,154円 | 4.2% |
| 入学金等 | 526円 | 0.7% |
| 合計(学校教育費) | 74,336円 | 100% |
学用品費がいちばん重い理由
26,860円のなかでいちばん大きいのは、ノートや鉛筆といった毎日使う文房具です。でも、それだけではありません。絵の具セット、裁縫道具、彫刻刀といった、教科ごとに買わされる「あの教材」も、ぜんぶここに含まれています。思い返してみると、入学してすぐは教科書と一緒に配られたプリントに「購入品リスト」がずらりと並んでいて、なんとなく全部そろえた記憶がある方も多いはずです。

1年生では算数セットや絵の具セット、中学年になると裁縫道具、高学年では彫刻刀と、学年が上がるたびに新しい「専用セット」の購入案内が届きます。1回1回は数千円でも、積み重なると年間26,860円というのも、うなずける金額です。
公立小学校は授業料がかかりません。だからこそ、この学用品費だけが「学校にかかるお金」として、家計のなかでぽつんと目立ってしまうのです。
私立小学校だと学校教育費全体が約98万円にもなるため、学用品費の割合はたった6.3%。「授業料に比べれば誤差の範囲」で済んでしまいます。一方、公立の場合は学校教育費のうち36.1%をこの学用品費が占めていて、「義務教育で無償のはずなのに、なんだかんだお金がかかる」という実感につながっているようです。
月6,000円、されど月6,000円
公立小学校の学校教育費「年間74,336円」を月額に直すと、約6,000円です。筆記用具だとか体操着だとか、家庭で担うべきものも含まれているので、単純に6,000円が「負担」とは言えませんが、ひとつの目安として「公立小学校でも、一定のお金はかかる」ことに変わりはありません。子どもに関わる費用として見れば、それほど高いとは感じないかもしれません。ですが、子どもがふたりいれば月12,000円、年間で約15万円の出費になります。
教育トピックでは『東京23区、子育て世帯は「世帯年収1,000万円」が平均?データと家庭のリアルから考える』という記事も出していますが、実際には都内でも世帯年収600万円前後の家庭は多く、全国で見れば400〜500万円台の世帯も少なくありません。
世帯年収600万円で、ボーナスを含めた手取りを月換算すると、月30万円前後というケースが多いでしょう。この場合、月6,000円という金額は、払えない額ではありません。
ただし、この6,000円があれば、通信教育をひとつ追加できたり、週末に家族で少し遠出したり、子ども服を買い足したりすることもできます。「妥当な出費」であると同時に、「他に使いたかった6,000円」でもあるのです。
「個人で買うべきもの」の線引き
学校教育費全体でみれば、筆記用具だとか、運動靴とか、傘といった類は当然、家庭で揃えるべきものでしょう。とはいえ引っかかるのは、裁縫セットや絵の具セットなどの学用品を、家庭ごとに買いそろえる必要があるのかという点です。欧米諸国の多くでは、絵の具のような教科専用のセットを個人で買う習慣がなく、学校の備品として用意されています。

そりゃ、筆箱や筆記用具とか親が用意するのが当然だけど…
家庭で用意するのは、はさみ・定規・のり・バインダーといった、ふだん使いの文房具くらいのもの。それ以外は教室でシェアしたり、学校がまとめて揃えたりするのが当たり前になっています。
日本の場合、1点あたりはそこまで大きな金額ではありません。「これくらい払うのは当然」と感じる家庭もあれば、「学校の備品にしてくれたら助かるのに」と思う家庭もあるでしょう。
負担には感じつつも、なんとなく毎年買い続けている、という家庭が多いのではないでしょうか。「学校からあっせんのチラシが来るし、まわりも買っているから」と、深く考えずに購入しているケースも、きっと少なくありません。
「一度しか出番がない」学用品の、もったいない問題
学用品費の負担は、金額の大きさだけの問題ではありません。「数回しか使わないのに、買わざるを得ない」という、もったいなさも見過ごせない課題です。
絵の具セットも、卒業後は使わないまま放置し、やがて廃棄……
彫刻刀や絵の具セットは、その典型です。彫刻刀は木版画の授業が終われば出番がなくなり、絵の具セットも卒業と同時に子どものベッド下なんかに押し込まれたまま。一度も再利用されず処分する家庭も少なくありません。
算数セットも、状態がきれいなまま眠っていても、周囲の家庭もそれぞれ購入済みのため、譲り先が見つかりません。
一方、卒業アルバムや記念品は、また別の種類の議論を呼んでいます。
近年は制作費が高額化しており、積立だけでまかなうのが難しく、PTA会費や公費で一部を補助する学校も出てきました。ただし「欲しい家庭だけが購入すればよいのではないか」「記念品自体が本当に必要か」と、そもそもの必要性を問う声もあります。
学用品費の負担には、「お金がかかる」という面だけでなく、「せっかく買ったのに、あまり使わないまま終わってしまう」「それって買う必要があるのかな?」というモヤモヤも含まれているのです。
算数セット・裁縫セットが「学校備品」に?広がる学校備品化の動き

「学校の備品にしてくれたら助かるのに」という声に応えるように、算数セットや彫刻刀を学校の備品として整備する自治体が、2026年に入ってから、全国で増えています。
文部科学省は2026年7月17日、「学校教育に係る保護者の負担軽減プロジェクトチーム」を初等中等教育局に設置し、全国の自治体・学校で実践されている備品化や学校指定品見直しの好事例を取りまとめ、教育委員会等に周知しました。

周知の中身は、「学校における補助教材及び学用品等に係る保護者等の負担軽減策の事例周知について(事務連絡)(令和8年7月17日)」として公表されています。
学用品等を「備品化・軽減化」した事例
自治体 |
備品化・軽減した主な品目 |
内容・軽減学の目安 |
| 札幌市 | 算数ブロック、彫刻刀 | 予算を追加配分し、全小学校の教材用備品として整備 (1クラス分の積算は35名分で70,000円) |
| さいたま市 | 算数セットの一部(ブロック・計算カード) 国語辞典・漢字辞典、制服・運動着 |
算数セットの一部備品化で約1,800円、 辞典の備品化で約5,000円の負担軽減 制服・運動着はリユースも推進 |
| 海老名市 | 裁縫道具 (裁ちばさみ・竹尺・チャコペン・メジャー) 彫刻刀 |
使用頻度の低い道具を備品化し 頻度の高い針や糸切りばさみは 個人支給の基本キットとして仕分け |
| 那覇市 | 算数セット、習字・裁縫・彫刻刀セットなど | お下がりやリサイクル品の活用、必要最小限の購入を呼びかけ 令和7年度小学1年生では前年度比1,452円減少 |
札幌市とさいたま市は、これまで各家庭が買っていたものを丸ごと学校の備品に切り替える「一括備品化」型です。
一方、海老名市は使用頻度に応じて備品と個人持ちを仕分ける「ハイブリッド型」、那覇市は購入自体を減らす「呼びかけ型」と、自治体によってアプローチが分かれているのが興味深いところです。
こうした備品化は、自治体の予算措置だけで急にできるようになったものではありません。
文部科学省は各教科等で学校に備えるべき教材の目安を「教材整備指針」として示しており、自治体がそれをもとに教材を整備できるよう地方財政措置を講じている旨を、令和7年6月25日付けの通知で明らかにしています。
財源の裏付けがあるからこそ、各自治体が備品化に踏み出しやすくなっている面があると言えそうです。
学年別・学用品リストと費用の目安

学用品は学年ごとに新しく必要になるものが多く、1年間だけを見ると数千円でも、6年間トータルで見るとまとまった金額になっていきます。
算数セットの費用:3,000円前後
- 1年生の入学時に購入する定番教材
- おはじき・数え棒・時計の模型などがひとまとめに
- 学校指定・斡旋での購入が一般的
- 2〜3年生の図画工作の授業から必要
- パレット・筆・水入れなど一式揃い、バッグつき
- 学校斡旋や推奨での購入が多い
- 家庭科の授業が始まる5年生前後で購入
- 針・はさみ・チャコペンなど道具一式
- 一度そろえれば6年生まで使い続けられる
- 書写の授業が本格化する3年生ごろから使用
- 筆・墨・下敷きなど一式で購入するのが一般的
- 学年が上がっても買い替えは少ない
- 図画工作で木版画に取り組む4〜5年生ごろに必要
- 刃物のため、安全性に配慮した仕様のものを選ぶ家庭が多い
- 使用機会は限られるが、購入は避けにくい教材
学年 |
主な購入品目 |
費用目安 |
| 1年生 | 算数セット、クレヨン、防災頭巾カバーなど | 約8,000〜10,000円 |
| 2〜3年生 | 絵の具セット、習字道具 | 約6,000〜7,000円 |
| 4〜5年生 | 彫刻刀、裁縫セット、リコーダー | 約7,000〜8,000円 |
| 6年生 | 卒業アルバム、記念品代など | 約5,000〜8,000円 |
一つひとつの品目は数千円でも、6年間積み重なるとまとまった負担になるというのが、実際に子どもを通わせている家庭の実感に近いところではないでしょうか。

入学準備が重なる1年生と、彫刻刀・裁縫セットが重なる4〜5年生は、特に出費がかさみやすい学年と言えます。また、卒業アルバムは、一般的には「卒業対策費」「諸校費」等の名目で保護者が積立をし、購入費*にあてています。
上の表の目安を単純に6年間分積み上げると、学用品だけで3万円台後半から4万円台になる計算です。きょうだいが複数いる家庭では、この負担が同時期に重なることも珍しくありません。
家計が厳しい家庭を支える「就学援助」制度

学校備品化の流れとは別に、家計が厳しい家庭には「就学援助」という制度が用意されています。
ここまでご紹介した学用品費や備品化の話は、どちらかというと「払えるし、結局購入はするけど、意外と負担になっているんだけどな」という家庭向けの内容でした。一方、経済的な事情でより支援が必要な家庭には、就学援助という別の仕組みがあります。ご自身が対象かどうかにかかわらず、知っておいて損はない制度です。
就学援助は、学校教育法第19条の「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」という規定にもとづく制度です。
学用品費はいくら支給される?

新入学時の学用品費については、令和8年度から支給単価が引き上げられ、小学校で64,300円(前年度比7,240円増)となっています。通常の学用品費についても、市町村ごとに支給額が定められています。
対象になるのはどんな世帯?(要保護・準要保護の基準)
就学援助の対象は、次の2区分に分かれています。- 要保護者:生活保護法に規定する要保護者(令和6年度で全国約8万人)
- 準要保護者:市町村教育委員会が要保護者に準ずる程度に困窮していると認める世帯(令和6年度で全国約109万人)
申請方法・時期
就学援助の申請は、多くの市町村で入学前または新学期のタイミングに合わせて受け付けています。申請書は、学校または市町村教育委員会の窓口で配布されることが一般的です。支給額や対象基準は自治体によって差があるため、まずはお住まいの市町村の教育委員会に確認してみましょう。
公立小学校の「保護者負担」は変わり始めている
算数セットや彫刻刀といった学用品は、これまで「買うのが当たり前」とされてきましたが、その前提が自治体レベルで見直され始めています。背景には、物価高による家計への影響と、教職員の徴収金管理の負担という、2つの課題があります。
文部科学省が備品化の好事例を取りまとめて周知したことで、今後さらに多くの自治体で同様の取組が進む可能性があります。すでに周知した事例には札幌市・福島市・さいたま市・茂原市・海老名市・寝屋川市・別府市・那覇市が含まれており、備品化だけでなく、学校指定品の見直しや制服・体操服のリユースなど、その幅も広がっています。
一方で、備品化のスピードや対象品目は自治体によって差があるのが現状です。お住まいの自治体でどこまで取組が進んでいるかは、学校からのお知らせやPTAの情報、市区町村のホームページなどで確認しておきましょう。家計が厳しいと感じる場合は、就学援助制度の利用や学校への相談も、選択肢のひとつです。
まずはお子さんの学校で使っている学用品のうち、ひとつでも「これは備品にならないの?」と疑問を持ってみること。「これまで、ずっとそうだったから」「まわりもみんなそうだから」では、なかなか環境は変わりません。
「家庭での負担にすべきこと」「そうでないもの」の線引きを考え、「算数セットってお名前つけも大変だしさ、学校の備品にしてくれたらいいのにね」と話題に出すだけでも、小さな一歩です。
いずれにしても、学用品費は、家庭だけで抱え込む負担ではなく、社会全体で見直されつつあるテーマになってきていると言えそうです。
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