小中学校は義務教育ですし、高校も無償化が進んでいますが、いずれにしても子どもに整った環境を与えようと考えれば、どうしても教育費はかさみます。その点、国公立の学校は最小限に学費を抑えられることからも、親としては大変に興味がありますね。
もはや全国の都道府県で当たり前になりつつある「公立の中高一貫校」に加えて、ついに全国初!「小学校から12年間学べる公立一貫校」がスタートします。さまざまな角度から都立小中高一貫教育校を見ていきましょう。
都立「小中高一貫校」が2022年4月に開校!
公立中高一貫校は都内では2005年にスタートしていますが、中高だけでなく小学校・中学校・高校まで12年間の小中高一貫校が2022年4月より開校します。東京都立小中高一貫教育校とは
2022年に開校する都立小中高一貫教育校の情報をまとめました。現時点では「東京都立小中高一貫教育校」が仮称となっています。都立小中高一貫教育校|教育理念と特徴
教育理念
都立小中高一貫教育校の教育理念は「次代を担う児童・生徒一人一人の資質や能力を最大限に伸長させるとともに、 豊かな国際感覚を養い、世界で活躍し貢献できる人間を育成する」となっています。特徴
①語学力と言語能力の育成②12年間の探求プログラム
① 語学力と言語能力の育成とは
小学校1年生から英語教育に力を入れ、週4時間授業を実施、小中の9年間で通常の公立学校よりも1,000時間以上多く英語を学びます。小学校から第二外国語にふれ、世界で通用する語学力を育み、国際社会で活躍する力を身につけることも目標のひとつとして掲げています。都立小中高一貫教育校の市村校長先生は以下のように公式サイトで述べています。語学はツールであり、大切なことは、そのツールを活用して何を発信するのかということです。ただ英語が話せるようになればいいのではなく国語教育を重視し、すべての学習を支える言語能力の向上をめざします。12年という長いタームでカリキュラムを組める利点を充分に活かした学習が期待できますね。
引用:東京都立小中高一貫教育校公式サイト
② 12年間の探求プログラムとは
実は2019年から高校の授業に「探求」という科目ができたのはご存知でしょうか? 総合学習の時間を探求的な学びに特化させた感じですね。探求的な学びは次のようなプロセスです。引用:生徒と共につくる探求的な学び/お茶の水女子大学附属高等学校
ここで注目したいのが、探求的な学び「自分で課題をたて情報を集め整理し、調べたことを発表する学習活動」に積極的に取り組んでいる子どもは、どうやら成績があがっている(教科の平均正答率が高い)という調査結果です。引用:総合的な学習の時間の成果と課題について/文部科学省
もちろん、これだけで「あ、探求って学習時間をいっぱいやれば、子ども達の成績があがるのね!」と一概には決めつけられません。しかし結果として自ら学ぶ姿勢を持ち、課題解決力を身につけると成績アップにつながっているんですね。もちろん、一般的な公立小学校や中学校でも総合学習の時間はあります。しかしこちらの調査でも、取り組みが不十分だったり、校内の体制が整わず、学校によってかなり「格差」があると報告されています。
都立小中高教育一貫校では、高校までの一環した学びが得られる環境を活かし、探求的な学びを長期にわたり継続的に行える点は大きいのかなと感じます。
コエテコで取り上げているSTEAM教育やプログラミングスクールのカリキュラムも「探求的な学び」と共通するものがありますね!
都立小中高一貫教育校|基本情報
住所 | 東京都立川市曙町:校舎建築中 開設準備室:東京都立立川国際中等教育学校内 |
開校予定日 | 2022年4月 |
一期生の対象年齢 | 2015年(平成27年)4月2日~2016年(平成28年)4月1日生まれ |
都立小中高一貫教育校はこんな感じ!
都立小中高一貫教育校は、すでにある立川国際中等教育学校に併設されます。施設は中等教育学校と空中回廊でつながっています。まだ校舎は建設途中ですがイラストを見るかぎりでは、開放的で海外のハイスクールや大学のようなイメージに近いですね。「2022年入学の1年生」となる子どもの年齢は?
2022年4月に第一期生として小学校に入学するのは2015年(平成27年)4月2日~2016年(平成28年)4月1日生まれのお子さんです。2020年現在、3歳~4歳のお子さんですから、保育園や幼稚園に在籍していることでしょう。またそれ以降に生まれたお子さんは順次、対象の年齢となります。都立小中高一貫教育校の募集要項について
① 募集人数 小学1年生(80名)男子40名女子40名② 通学区域 学校までの所要時間が40分以内にある鉄道の駅やバス停を含む区市町村または地域
③ 検査 抽選と適性検査
中高一貫校でも「試験」とは言わずに「適性検査」と呼ぶのですが、都立小中高一貫教育校入学者の決定方法に関する検討委員会報告によると、検査内容は5歳児の発達段階を考慮し「遊び」の要素を取り入れて作成するとしています。
都立小中高一貫教育校の「生徒の将来の姿」と照らして設定した能力等を把握することができる内容とする、検査時のグループ分けは男女混合を基本とし、評価は評価項目(例・コミュニケーション能力など)ごとに適性の有無等を総合的に判定、となっています。
うーん、この時点ではまだわかりづらいけど、いわゆる小学校受験のプリント問題とは少し違うのかも・・・?
コロナ後「公立中高一貫校」の人気が高まる!?
「なるべく学費を抑えつつ子どもには質の高い学習環境を与えたい」とは、多くの親が思うことです。中学までは義務教育ですから基本的に多くのお金はかかりませんし、最近は高校無償化の動きも進んでいますが、こうした「国の政策」はいつ何時変わるかわかりません。
2020年に思いがけぬ災いがわたしたちの生活を襲いました。
新型コロナウイルスによる影響は社会全体の問題です。特に経済的な影響は大きく、ボーナスの減額を含め収入が減少し家計を直撃している家庭も多いことでしょう。
いずれにしても、現在はなんとかやっていけるが、このような状況が再び起こるとしたら、あるいはコロナ後の新しい生活の中で家計に余裕がなくなることは決して他人ごとではありません。
しかし同時に「子どもの教育費は別問題」として捉える家庭は多いですね。身近なことを言えば「ゲーム買って!」には「冗談じゃない」と答える親も、「塾へ行きたい」「○○をやってみたい(習いたい)」と言われたら、多少の無理をしてもやらせてあげたいと思うものです。
そんな中で、公立の中高一貫校は再び注目を集めています。地域により差はありますが、公立中高一貫校は地域の公立中よりは費用がかかるものの、私立中のような金額にはなりません。家計に大きく響かない範囲で子どもを中高一貫校に通わせられます。
では小学校から高校(大学)まであがれる、いわゆる私立の付属校はどうでしょう。私立付属校ともなると年間でもろもろ含めて100万以上かかることを覚悟しなくてはなりません。
学費がすべてではありません。ですが「子どものためだから」「教育費だからしょうがない」ではすまされないこともあります。なぜなら学費は1年で終わるものではないからです。
国立・私立小学校の学費を比較して考える
国立・私立小学校における学費等の比較表小学校 | 初年度 | 2年〜の学費 |
筑波大付属小学校 | 約27万 | 約12万 |
東京学芸大付属竹早小学校 | 約10万 | 約8万弱 |
学習院初等科 | 約150万 | 約120万 |
文教大学附属小学校 | 約80万 | 約60万 |
中学受験は比較的、耳にすることも多いですが、小学校受験となると「特別」な印象が強くありませんか。
小学校受験は、親自身が附属育ちで同じように育てたいとか、子どもが通う学校に対して強い希望と明確な目標を持っていたりとか、当然ながら子ども本人より親の意思が強く影響します。加えて経済的な余裕がなくては私立小学校受験は難しいのが現状です。学費は1年ではなく、通学する間ずっと、小学校なら6年間かかります。
単純な計算をすれば、学習院初等科の場合、学費だけで小学校卒業までに750万円かかることになります。他にも交通費や寄付金、さまざまな教育費が積み重なることを考慮すると、よほど家計にゆとりがなければ続けられませんね。
参考:中高一貫校向け塾
都立小中高一貫教育校の学費は?
現時点では都立小中高一貫教育校の学費は公式サイト上では明記されていません。今後の学校説明会等で説明があるでしょうが、基本的に私立校のような授業料を徴収することはないと思われます。いずれにしても都立校は私立校とくらべて格段に低い学費となるはずです。
小学校から私立の附属なんて無理!と思っていた家庭でも都立なら通わせられる、高校受験もなく12年かけて大学進学をめざせるのは魅力かな。とはいえ新設校は情報が少ないので判断が難しいですね
広がる小学校の選択肢と親が考えたいこと
子どもがうまれて早いうちから「ウチは○○小学校にいれたい」「いずれは東大にいれたい」と明確に進路の希望がある家は、周囲の声を気にせず、進学にむけて着々と幼児教育から塾へとプランをたてて実行します。いっぽうで「小さいうちは地域の学校で友だちとたくさん遊ぶのが大事!」と受験はまったく考えずに、子育てをする家もあります。だけどもしかしたら、一番多いのが「途中、途中で何度も子どもの進路に迷ってしまう」親ではないでしょうか。
わたしもブレブレにブレた教育方針のない親でした(涙)
地域の公立小学校が評判が悪いなどと耳にすれば「だったら隣の学区の学校にしたほうがいいのかしら」などとアタフタし、入学したらしたで、周りが塾に入り、子どもも通ってみたいと言うから行かせてみたら「がんばれば○○にだって行けますよ」などと言われて、むむむ、中学受験チャレンジさせてみるか!と思い立ったり、成績が落ちれば「だから無理だと思ったのよ、やっぱ中学は公立だな、本人のやる気が出てから高校受験で頑張らせよう」と揺れ動いたりなんだかブレまくってしまう親って、本当はけっこういるような気がします。
子どもの進路についてブレるのはよくないと言われますが、わたしは子どもの成長に従って親の気持ちが揺れ動くのは当たり前のようにも思うのです。
ただ、「わが子のことを考えて」が、揺れ動く親心のなかで、いつの間にか「わたしの考えでは」になり、「わたしの理想」になり、それを子どもに押し付けるようなことだけは避けたいなと思います。わが子は可愛い分身ですが、自分自身ではありません。やがてはひとりだちし、巣立っていくのが「子ども」です。
家族で子どもの将来を考えるのは、楽しいことでもあります。教育方針や進路に関して、夫婦間や家族で意見が分かれたら、納得するまで話し合いましょう。何より大切なのは「子どもの学びについて関心をもつこと」です。
「うちの子はこういう性格だよね」
「え、もっと違うとこあると思うよ」
話してみると、パパとママでさえ、子どもの性質について違う印象を持っているのに驚くこともあります。
小学校・中学校くらいまでは親の気持ちや意見が子どもの歩む道筋に大きな影響を与えます。いろいろな学校の情報を収集しつつ、わが子を中心にして「どれが○○ちゃんにとって一番いいのかな」「もっと大きくなったときにこんな方向も残してあげたいよね」とたくさん、たくさん話をしてください。
いずれ子ども本人が希望や夢を語るようになったら、またその時に家族で「子どもが進む道」を一緒に考えていきましょう。
思い込んでしまいがちな、ひとりの視点で子どもを見るのではなく、家族みんなの、周囲の先生や知り合いの、おじいちゃんやおばあちゃんの、さまざまな立ち位置から見えてくる「わが子の姿」から将来へとつづく道を子どもと一緒に切り開いていけたらいいですね!
*今度、教育トピックとして、その時々におけるニュースや話題を取り上げていきます。今回は公立の一貫校についてですが、次回は新型コロナウイルスから「新しい生活様式へ」と言われる中で変化する子どもの学校選びについて「私立校のほうがいいの?」「公立が安心」といった保護者の声を深掘りしていきます。
義務教育の期間で1,000時間以上も英語授業が多いってかなりスゴイですね。特色がハッキリしている感じです!