フリーランスの働き方は、一見すると自由度が高く感じられます。しかし、実際に経験してみると、企業務めとは全く別のさまざまな壁があります。この記事では、初心者フリーランスが踏むべき手順や必要な知識についてご紹介します。
フリーランスの定義
フリーランスとは、会社などの組織や団体と雇用関係を持たずに個人のスキルを活かして仕事を請け負う働き方のことを意味します。契約方法は、依頼ごとに求められるスキルやコンテンツを提供し、その対価として報酬を受け取ります。フリーランスの契約方法は仕事内容によってさまざまですが、主に単発の仕事ごとに業務委託契約を結ぶスタイルが多いです。
初心者フリーランスに必要な手続き「開業届」
初心者フリーランスがまず行うべき手続きは、「開業届」を提出することです。開業届は、「事業開始の事実があった日から1ヵ月以内」に提出しなければなりません。もしも早めに準備が整っている場合は、開業日前に提出することもできます。開業届には「青色申告」と「白色申告」があります。初心者フリーランスの場合は、青色申告をするケースが一般的です。青色申告は白色申告に比べて節税効果にすぐれており、収入に応じて10万円・55万円・65万円のいずれかの特別控除を受けることができます。
開業届の提出を怠ると、以下のようなデメリットが発生する恐れがあります。
- 銀行からの融資を受けられない
- 補助金や助成金の申請ができない
- 屋号入りの口座を開設できない
フリーランスになる前に準備しておくこと
フリーランスとして独立する前に、事前準備をしておくことは大切です。では、具体的にどのような準備をする必要があるのでしょうか?そこで、次にフリーランスになる前に準備しておくことについて紹介します。クレジットカードを作る
フリーランスとして仕事を請け負うことになると、お金の管理を自分で行う必要があります。そこで、お金の管理をスムーズに行うためにも、事業用とプライベートのクレジットカードをそれぞれ用意しておくと経費の管理がしやすくなるのでオススメです。なお、クレジットカードは安定した収入がある方が審査に通りやすいため、フリーランスになる前に事業用のクレジットカードを作成しておきましょう。
名刺を用意しておく
会社員としての肩書が無い状態で仕事をするフリーランスにとって、名刺は自分をアピールする大事な看板となります。名刺を所持しておくことで、打ち合わせや営業、または交流会などに参加する際に信頼を得やすくなる、または人脈が広がるなどのメリットがあります。名刺には屋号、メールアドレスの他に、あなたの業務内容なども入れておきましょう。
事業用の銀行口座の開設、印鑑
プライベート用と、事業用の銀行口座が一緒になってしまうと、経費とプライベートの出費や入金の区別がわかりづらくなってしまいます。確定申告の書類作成がスムーズにできるように、あらかじめ事業用の銀行口座を開設しておきましょう。また、フリーランスは契約書や請求書などの書類作成時に印鑑の押印が求められます。事業用の銀行口座用の印鑑とあわせて、契約書や請求書用の印鑑も用意しておくと安心です。
フリーランスの代表的な職種
フリーランスの仕事には多くの種類があり、自分のスキルや経験に合わせて仕事を選ぶことができます。フリーランスという働き方のなかでも、とくに代表的とされる職種について紹介していきます。エンジニア
エンジニアのように、Webで完結しやすい仕事はフリーランスに多い職種です。なお、エンジニアと一口にいってもシステム開発の上流工程を担当するシステムエンジニア、ワードプレスに関わる業務を行うワードプレスエンジニア、アプリ開発などを担うiosエンジニアなど、仕事内容はさまざまです。そのため、エンジニアの仕事を選ぶ際は、自分がどんな仕事が得意で、何をやりたいかを明確にした上で仕事した方が良いでしょう。
動画クリエーター
YouTubeによる動画制作などの仕事が増え、動画クリエイターの需要が高まっています。動画クリエーターは、動画の編集を行う仕事が多いですが、撮影、ナレーション、台本作成などの作業や、企画、ディレクションなどの上流工程も含めて作業を行うとさらに単価が上がる傾向にあります。近年では企業がYouTube、インスタグラムで動画広告を運用する流れも起きているので、今後もますます需要が増えると予想される職種と言えるでしょう。
ライター
ライターは、Web媒体や雑誌、企業のコラムサイトなどに記事を書く仕事です。ライターの仕事はパソコンとインターネット環境さえあればどこでも仕事ができるため、フリーランスという働き方で仕事をする人が多い仕事となります。フリーランスのライターは、時間や場所に捉われず、自由に仕事できるメリットがあります。ただ、案件を継続して獲得できずにいると収入が不安定になってしまうため、継続して案件を受注できるような工夫をする必要があります。
初心者フリーランスにおすすめの節税対策と保証制度
初心者フリーランスにおすすめの節税対策として、「小規模企業共済」があります。こちらは、1,000円から7万円までの任意の金額を毎月積み立てると、100%以上の利率で返礼される制度です。掛金が全額控除となる利点を生かし、退職金代わりに積み立てをしているフリーランスもいます。この制度はフリーランスの特権で、会社員の方は加入できません。開業後初めての確定申告の際に慌てないよう、必要書類を揃えておくと共に効果的な節税対策について、アンテナを張っておくと良いでしょう。
フリーランスでも加入できる保証制度は、年々増えてきています。中でもおすすめなのは、「フリーランス協会」が提供している「ベネフィットプラン」です。具体的には、以下の項目ごとにサービスが用意されています。
- 仕事上のトラブル→賠償責任保険、報酬トラブル弁護士費用保険「フリーガル」(任意)
- 仕事上のリスク→「フリーランスDB」、各種スキルアップセミナー、キャリア相談
- 生活健康のリスク→「WELBOX」、収入・怪我・介護の保険(任意)
初心者フリーランスが案件を獲得する手段
初心者フリーランスが案件を獲得する方法は、大きく分けて以下の3つです。- クラウドソーシング型、もしくはエージェント型の案件サイトに登録をして希望の案件に応募する
- 企業へ直接営業の連絡を入れる
- SNS経由で案件に応募、もしくは営業をする
企業への直営業の際には、自ら企画を提案することで採用率が上がります。企業側が求める方向性を軸に、自分の得意ジャンルを生かせる企画を提案することをおすすめします。
初心者フリーランスが継続して案件を獲得するためのポイント
初心者フリーランスが、継続して案件を獲得するために押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。①素早いレスポンスを心がける
クライアントは、複数のワーカーとやり取りをしていることがほとんどです。同じ力量のフリーランスがいたとして、契約を継続する際、レスポンスの遅い方と早い方であればどちらを優先するでしょうか。言うまでもなく、後者ですね。双方の仕事をスムーズに進めるためにも、できる限り素早いレスポンスを心がけましょう。②納期を厳守する
初心者フリーランスの場合、いかにクライアントに信用してもらえるかが、契約を継続できるかどうかの重要なカギになります。そのためにも、納期は厳守すべきです。最初の段階から納期を守れない初心者フリーランスに、継続で案件を任せようとは誰も思わないでしょう。「納期を守る」というのは一見当たり前のように思えますが、「守れない」人が少なくないフリーランス業界において、当たり前のことをきちんと継続できる人材は重宝されます。③複数のスキルを持っている人は、手持ちのスキルを掛け合わせる
例えば、「ライター」としてのスキルのみを持っている人と、「ライター」と「カメラマン」両方のスキルを持っている人ならば、取材記事の依頼をする側がどちらに依頼するかは一目瞭然です。また、単独スキルは突出した才能がない限り、代替えされやすい傾向にあります。自分のスキルを上手に掛け合わせることで、初心者フリーランスでも条件の良い案件を獲得できる確率が上がります。初心者フリーランスは年間通してのキャッシュフローを把握しよう
開業直後から安定的に仕事を受注できる初心者フリーランスは、ごくまれです。開業直後は収入が安定しないケースのほうが圧倒的に多いため、資金繰りが重要となります。契約時には必ず支払い期を確認し、手元の資金が枯渇しないスケジューリングを心がけましょう。また、freeeなどの会計ソフトを活用してこまめに収支を記録し、年間通してのキャッシュフローを把握できるようにしておきましょう。次年度の改善点が可視化されるだけではなく、のちに来る確定申告でも大いに役立ちます。
誰しもが最初は「初心者フリーランス」
初心者フリーランスは、あらゆる面において情報収集が必須です。事前リサーチが足りなかったばかりに、大きなトラブルに見舞われてしまうケースは数多く見られます。しかし、それは裏を返せば、知識があれば未然にトラブルを回避できるということです。誰しもが最初は「初心者フリーランス」です。フリーランスという働き方を心から楽しむために、必要な情報を集め、自身が望む最適な環境をこつこつと作り上げていきましょう。