今回はおうちモンテを試す前に抑えておきたいポイントや簡単な取り入れ方を解説しています。「おうちモンテの始め方がわからない」「子どもの年齢に合った方法が知りたい」と考えている人はぜひ最後までご覧ください。
おうちモンテとは?
おうちモンテの土台となるモンテッソーリ教育はイタリア女性初の医学博士であるマリア・モンテッソーリ博士の実践から生まれた教育方法です。1900年代から続く歴史ある教育方法で、子どもに備わる自立心や思いやり、責任感といった心の育ちを科学的な方法で引き出すことを提唱しています。AmazonやGoogle、Facebookといった企業の創始者や世界の芸術家、スポーツ選手といった著名人がモンテッソーリ教育を受けていたのは有名な話です。棋士の藤井聡太さんの出身幼稚園もモンテッソーリ教育を取り入れていたとのこと。
モンテッソーリ教師の北川真理子氏はモンテッソーリ教育について以下のように発信しています。
モンテッソーリ教育は「子どもが自分で育つ力を信じる教育」です。言い換えれば、「大人が子どもに教えない」教育ともいえます。引用:『いちばんていねいな はじめてのおうちモンテッソーリ』著:北川 真理子
モンテッソーリ教育の大きな特徴は子どもが「自分でやってみたい」と自己選択していく姿に着目する点です。子どもの本能的な欲求を引き出し、責任感や自己教育力、思いやりや素直さといった心の発達を育むことが重要と考えているのです。
参考:モンテッソーリ教育とは
なぜ今おうちモンテが人気なの?
おうちモンテは専門の先生や教具がなくてもモンテッソーリ教育が実践できる方法として話題を呼んでいます。モンテッソーリ園や教具の費用が高いと感じる人も多いようですが、おうちモンテなら家庭にある材料でできることを気軽に実践することができます。さらにSNSでは100均グッズを使った手作り教具を発信している人が増えています。近年ではおうち時間が増えたことをきっかけにモンテッソーリ教育を取り入れてみたという子育て世代も多いようです。
おうちモンテは誰でもできる?
おうちモンテはどんな性格の子どもにもピッタリな教育方法です。子どもの年齢や発達段階を目安に物的環境・人的環境を整えることで一人ひとりに合った実践が叶います。またおうちモンテを始める時期について「いつから始めればいいのかわからない」という人も多いですが、モンテッソーリ教育では胎生7ヶ月頃から話し言葉における敏感期が迎えると考えます。つまり生まれてすぐの子どもはもちろん、妊娠中からモンテッソーリ流の関わりを始めることもできるのです。
「うちの子は外遊びが好きだから向いてないかも」「落ち着きがないからできない」と考える人もいるかもしれませんが、おうちモンテでは子どもの本能的な欲求を見守り、存分に取り組ませることが大切です。親が望む姿に育てようとするのではなく、目の前の子どもの姿をよく観察して教具を提示していきましょう。
おうちモンテを試す前に知っておきたいポイント
おうちモンテを試す前に、モンテッソーリの基本となる発達段階を把握しておきましょう。子どもが今どんな発達段階を迎えているのかを知っているかどうかで取り組み方が大きく変わります。モンテッソーリ教育の発達段階を知ろう
モンテッソーリ教育では0~24歳を以下の「発達の4段階」に分けて考えます。日本のモンテッソーリ教育は乳幼時期を対象としているイメージがありますが、世界では小学校から大学までの教育として取り入れられている地域もあります。- 0~6歳:乳幼児期
- 6~12歳:児童期
- 12~18歳:思春期
- 18~24歳:青年期
参考:日本モンテッソーリ教育綜合研究所
参考:モンテッソーリ教育とは?
乳幼児期は「無意識に吸収する時期」と「意識の芽生えの時期」
乳幼児期は前半と後半をそれぞれ「無意識に吸収する時期」と「意識の芽生えの時期」の2段階に分けて考えます。それぞれの特徴を確認しておきましょう。0歳から3歳「無意識に吸収する時期」
0歳から3歳はずり這いから歩行までの全身運動や手指の微細運動、言葉の獲得や芸術を感覚的に楽しむ力などが育まれ、人生のなかで最も吸収力の強い時期といわれます。無意識のうちに人間社会に適応する自己教育力は大人にも勝る目覚ましい能力でしょう。3歳から6歳「意識の芽生えの時期」
3歳から6歳になると乳幼児期の前期に吸収した感覚を意識的に整理することができます。掃除や料理といった日常生活の動作を真似するようになったり、社会や科学の事象を知りたがるようになったりと興味の幅がぐんと広がります。また感覚器が発達することによってあらゆる感覚刺激に敏感になる姿を「感覚の敏感期」と呼びます。モンテッソーリでは言語・算数・文化教育分野を中心に子どもの感覚をより洗練するための教具や環境を提供します。
参考:幼児教育から英語を始めるのは正解? 早期英語教育のメリットと注意点
モンテッソーリ教育における「子どもの敏感期」
子どもが同じ動作や遊びを繰り返す時期を敏感期と呼びます。9項目の敏感期について、それぞれの特徴や年齢の目安は以下のようになっています。敏感期 | 特徴 | 時期 |
運動 | 自分の意思で身体を動かすことが喜び | 6ヶ月~4歳半頃 |
言語 | 母国語を吸収することが楽しい |
胎生7ヶ月~5歳半頃 |
秩序 | 仕組みや順番、習慣などに強くにこだわる |
6ヶ月~4歳 |
小さいもの | 目の焦点を合わせて小さいものを見たい |
1~3歳 |
感覚 | あらゆる感覚を五感ではっきり整理したい |
0~6歳 |
書くこと | 目で見ながらしっかり書きたい衝動に駆られる |
3~5歳 |
読むこと | あれもこれも読んでみたい | 4~5歳半 |
数 | なんでも数えたい、量にこだわる |
3~6歳 |
文化・礼儀 | 挨拶を真似したい | 4歳半~ |
子どもが思わぬ場所で走り回ったりミニカーを縦列駐車のように並べたりといった行動は、身体を自分の思い通りにコントロールしたり秩序や数の衝動に駆られている姿のようです。散歩をしながら柵や壁の触り心地を確かめている姿は感覚の敏感期といえますね。
6歳頃までの子どもがあらゆる敏感期の渦中だということを知れば、一見イタズラのようにも見える子どもの行動への見方も変わるでしょう。発達段階の見通しをもちながら子どもを観察することはモンテッソーリ流の子育ての基本です。おうちモンテを実践する際には敏感期を意識して環境づくりをしてみましょう。
参考:『0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!』著:藤崎 達宏
おうちモンテの手作り教具アイデア
おうちモンテは特別な教具を用意しなくても始めることができますが「おうちでも教具を使ってみたい」という人は簡単で費用が安い手作り教具から試してみるのがおすすめです。ここでは家庭にある材料や100均グッズでできる手作り教具をご紹介していきます。子どもの敏感期に合ったおもちゃを作ってみましょう。
手作りモビール
- 時期:生まれてすぐ
- 材料:厚紙、白と黒の画用紙、竹ひご、タコ糸など
ムナリ・モビールはデザイン型紙を利用することで手作りできます。型紙で作るのが難しいという場合は色のコントラストが強いオリジナルモビールを作ってみましょう。クリスマスのオーナメントやガチャガチャのカプセル、食品用トレーといった廃材を利用するのもおすすめです。
ホース落とし
- 時期:1歳頃~運動・感覚の敏感期
- 材料:円柱型の米びつタッパーや冷水筒、ホース
ホースの代用としてはペットボトルキャップを繋げた筒やストロー爪楊枝などさまざまです。落とすものの直径と同じくらいの穴にすることで指先のコントロール力を鍛えます。
ポンポンうつし
- 時期:運動・感覚の敏感期
- 材料:ポンポン、仕切りのある箱か製氷皿、トング、トレー
仕切りのある箱の底に色紙を敷いて色別にわけたり、ポンポンの大きさを変えたりすることで難易度が変わります。3~4歳頃には箸の練習にもなります。
マグネットで絵合わせ
- 時期:3歳~、運動・秩序・数の敏感期
- 材料:マグネット、ホワイトボード、シール
小さなマグネットをたくさん用意しておけば、数を数えたり並べたりすることもできます。数や秩序の敏感期を迎えた子どもにもピッタリなアイテムです。
文字なぞり
- 時期:4歳~、書く・読む・運動の敏感期
- 材料:ひらがな練習用紙(100均グッズ)、チョーク、ティッシュ
紙が汚れてしまうのが気になる場合は台紙の上に半透明のシートを乗せ、シートの上からなぞるのもおすすめです。シートはクリアファイルでも代用できます。
おうちモンテの注意点
特別な教具がなくてもできる
手作り教具を使うとモンテッソーリ教育に効果的なアプローチができますが、もちろん教具がなくてもおうちモンテを始められます。たとえば料理や洗濯、掃除などの家事を一緒に行うことで自然と手指の運動や物を数える練習になります。お茶をコップに入れる動作や野菜の下処理、たたんだ洗濯物を種類別にタンスにしまうことも敏感期の子どもを刺激する活動です。同様に身支度を自分で行うのも効果的です。
子どもの敏感期を意識しながら生活するだけでもおうちモンテの実践になるでしょう。
手作りグッズを使うときは子どもから離れない
おうちモンテで使える手作りグッズの材料はマグネットやポンポンなどの小さな部品が多いため、誤飲の恐れがあります。たとえばペットボトルキャップを接着剤やテープで繋げ合わせたポットン落としは0歳児向けの遊びですが、子どもが触ったり舐めたりするうちにキャップのつなぎ目が劣化しておもちゃが分解してしまうことも考えられます。手作りの段階で補強しておくことも大切ですが、なにより教具の使用中は子どもから離れないようにすることが事故を防ぎます。
大人の声かけは基本的に不要
子どもが集中している間、大人は静かに見守りましょう。思わず「わからないの?」「こうやるんだよ」といった声掛けをしたくなりますが、子どもの自然な欲求に寄り添うためにも子どもの姿を観察することに徹します。やり方がわからないという子どもにはゆっくり手や身体の動きを見せます。やりたくないという子どもには無理強いせず、別の教具を用意したり1週間後に再び提示してみたりしましょう。
おうちモンテのデメリット
おうちモンテでは、ひらがな練習帳、ホワイトボードなどのアイテムを多く使うので、最初の頃は家の中が散らかります。とくに最初から一気にさまざまなアイテムを使用すると部屋が散乱する恐れがあるので、最初はアイテムを使用する数を少量からスタートしていくといいでしょう。また、おうちでモンテを行うので「本当に、これで合っているのか?」と親が悩むことがあります。おうちモンテでは「子どもが夢中になっていること」、「子どもがいま、何を求めているのかを見極めること」がまず重要なので、内容が合っているか否かよりも、子どもの様子を観察しながら進めていくことが大切です。
また、モンテッソーリ教育を理解したい場合は、マリア・モンテッソーリの著書を読んでおくのがおすすめです。
まずは気軽におうちモンテを試してみよう
おうちモンテとはモンテッソーリ教育が家庭で簡単にできるというもので、乳幼児期の子どもの身体や心の成長を促す世界的な教育方法です。胎生7ヶ月から6歳頃までのあらゆる感覚は9つの敏感期に分けて考え、一人ひとりに合った教具や生活環境を準備することで本能的な欲求を満たします。またおうちモンテは特別な教具がいりませんが、余裕があれば簡単に安く作れる手作り教具をつくるのもおすすめです。まずは子どもが夢中になっていることを観察して日常生活でできることから始めてみましょう。
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