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(レポート)「Scratch Day in Aoyama」個性豊かなクリエイター作品とScratch最新動向

去る2022年6月26日(日)、青山学院大学 革新技術と社会共創研究所(所長:河島茂生 青山学院大学コミュニティ人間科学部准教授)によるイベントScratch Day in Aoyama feat. 青学つくまなラボ(仮)」が開催されました。

イベントではScratchの最新動向と「Aoyama Creative Learning Lab(愛称:青学つくまなラボ)※仮称」に向けての構想が発表されたほか、クリエイターによるScratch作品の発表(Show&Tell)と、Scratchでプログラミングしたデザインをミシンで刺繍するワークショップが行われました。

この記事では、個性豊かな作品発表の様子をダイジェストでお届けします。

別室で行われた刺繍ワークショップの様子。講師のスマートフォンを通じて実況された


刺繍作品のサンプル。Scratchの可能性は無限大だ

(冒頭挨拶)青山学院大学 革新技術と社会共創研究所所長 河島茂生氏


青山学院大学 革新技術と社会共創研究所は、2021年8月に設置されたばかりの研究所です。

本研究所では、私たちの社会をより良く、より豊かにするためにはどのような創造環境と社会制度を作っていくべきなのかを研究し、議論しております。

中でも着目しているのがコンピュータの可能性です。コンピュータは仕事の効率を高めるだけでなく、音楽やイラストを作ったり、文章を要約したりと、創造的な分野での活用も進んできました。囲碁や将棋のAIが驚くべき成果を残していることなども注目に値します。


それならば、コンピュータの可能性を生かし、子ども達の創造性をより伸ばすことはできないか。本日、ここで開催する「Scratch Day」にもそうした期待を込めております。

なお、本研究所では今後も各種イベントを開催予定ですので、ぜひ公式ページをチェックしていただければ幸いです。

Scratch最新動向紹介)同研究所研究員 阿部和広氏


Scratchの歴史は、1993年にボストン地域の博物館から始まったMITメディアラボの「コンピュータークラブハウス」プロジェクトに端を発します。

このプロジェクトは、コンピュータの力で子ども達の創造性を伸ばすことを目的としたもので、実際に子ども達がレゴをプログラミングできるようにしたものなど、最先端の研究に触れることができました。

すると、子ども達が夜間に博物館に忍び込もうとするほど夢中になってしまった。MITはきっと、ものづくりを通した学習に想像以上の手応えを感じたことでしょう。

(よりくわしい流れはコエテコの過去記事でも扱っています)

こうして創造的な学習の可能性を知ったMITメディアラボは、その経験をインターネットに拡大するため、2004年に最初のScratchを作ります。そこから数年かけてバージョンアップを重ね、2008年の9月に日本語対応をしました。この翻訳には私が一部携わっております。


Scratchに関して、直近の大きな出来事といえば、やはり2019年に行われたScratch 3.0へのバージョンアップでしょう。

Scratch 2.0はFlashで作られていたのですが、Flash自体がサービス終了してしまったため、Scratchもバージョンアップされたという経緯でした。

Scratch 3.0に関する問題はコエテコの過去記事でも扱っています)

さて、そんなScratchの利用人数は伸び続けており、今月(2022年6月)には共有プロジェクトの数が1億を超えました。登録ユーザー数も9000万人を超え、今年中には1億人を超えるのではないかと予想されています。


ユーザー数の伸びを時系列グラフで見てみると、2013年と、2019年の伸び率が高い。2013年に伸びているのは、オバマ大統領がSTEM教育に注力すると宣言したためです。対する2019年は、お察しの通り新型コロナウイルスの影響ですね。日本でも臨時休校の影響で外に出られなかった子ども達が、“保護者に叱られることなく楽しめる娯楽”としてScratchを選んだと考えられます。


また、GIGAスクールによってScratchに触れる子ども達の数も増え続けており、全世界に対して日本のユーザーが占める割合もずいぶん高まりました。


Scratchが民間スクールに与える影響も無視できません。これはコエテコ総研の調査結果ですが、民間プログラミングスクールにおいてもScratchがかなり使われている。Scratchベースやライクな教材(UI・UXをScratchに似せたオリジナル教材)も含めれば、全体の約37%がScratchであると捉えることもできます。

(より詳しい分析はこちらのプレスリリースよりご覧ください)

さらには今年度の全国学力テスト「算数」で、Scratchによく似た問題が出題されました。つまり、公教育でも、民間でも、家庭でも、Scratchが子ども達に与える影響はますます大きくなっているということです。


ただ、その上で、私がひとつ懸念していることがあります。それは、Scratchがまるで勉強の手段かのように扱われている」ことです。

言い換えれば、先ほどの学力テストの問題のように、Scratchが学校の勉強をするための教材だと思われている。

しかし本来、コンピュータはあくまでも子どもの可能性と創造性を広げるためのツールであるはずです。大人が決めた範囲に閉じ込めるのは、子ども達の可能性を狭める行為だと言わざるを得ません。

今日の「Scratch Day」には、小学生から大学生まで、さまざまなクリエイターに来ていただきました。彼らの作品を見れば、Scratchが決して算数の教材でないことを分かっていただけるかと思います。クリエイターのみなさん、どうぞよろしくお願いいたします。

阿部氏のセッションでは同大学が取り組む「つくまな」構想も語られた

アイテムを資産と負債に分けよう!「仕訳体験ゲーム」


僕の作品は「仕訳体験ゲーム」です。

プログラムをスタートさせると、カメラが起動します。このカメラはプレイヤーの手の動きを捉えるセンサーになっています。

プレイヤーは制限時間内に、ある項目が「資産」なのか「負債」なのかを仕分けていきます。たとえば家は固定資産ですので、「資産」に仕分けます。借金は「負債」ですね。


シンプルなプログラムに見えますが、実際には手の動きの閾値をどこに設定するかなど、こまごまと苦労しながら制作しました。現在はPythonなど、他の言語でも制作できないか学習を進めている途中です。

オーディオを個別に調整できる「Scratch Audio Manager」


僕の作品はScratch Audio Manager」、略称「SAM(サム)」です。

Scratchでは、1つのスプライトに複数のサウンドを付与している場合、それぞれのサウンドを個別に調整できない仕様になっています。

つまり、あるスプライトに対し、「プロペラ」「レーザー」の2種類をつけていた場合、「プロペラだけループさせる」とか、「レーザーだけ音を下げる」みたいな調整ができない。これはかなり不便だなということで、各サウンドを個別に調整できるツールを作りました。


ちなみに、SAMはもちろん他のクリエイターさんに使っていただくこともできます。詳しくは僕の作品ページやSNSをご覧ください。バグの報告や改善要望なども受け付けています。

レトロなFPSゲームを再現「Textured RayCaster mark.02」


僕の作品は「Textured RayCaster mark.02」と言います。これはざっくりいうと、昔のFPSゲームのような3DゲームをScratch上で再現した作品です。

Scratchのプログラム自体はそこまで複雑ではないのですが、データの構造を工夫し、Scratch上でなめらかに動くようにしました。


プログラムにあたっては、高校時代にさぼっていた三角関数をかなりしっかり使う必要があり、学び直すのが大変でした(笑)。

他にも、全体を綺麗に見せるため、奥の描画は細かく、手前の描画は荒くするなどの工夫も施しました。

シンプルに見えて奥が深い「ストップウォッチ」


僕の作品は「ストップウォッチ」です。

これはシンプルで高精度なストップウォッチで、Scratch上で1000分の1秒まで測ることができます。もちろんラップタイムを記録することもできます。


簡単な作品に見えますが、実はSctachの独自仕様がけっこう厄介でして、誤差が出ないよう繊細にプログラムしています。ちなみに、デジタル数字のスプライトも自分で作りました。


僕はゴールのない作品制作が苦手というのか、たとえばゲームのようにしっかりと構想を練って、ストーリーを作り、キャラクターのイラストを描いて……といったプロジェクトは不得手です。それに対し、こういうツールは目的が決まっているので、とても楽しく作れました。

修学旅行の思い出をデジタルアートに「伏見稲荷大社〜千本鳥居〜」


私の作品は「伏見稲荷大社〜千本鳥居〜」です。修学旅行で訪れた伏見稲荷(京都)が思い出深かったため、Scratchで再現しようと思って制作しました。


背景の画像も自分で描き、霧がかった山なみの様子が伝わるように工夫しました。


奥のほうの鳥居がスムーズに消失するよう、ちょうどいい縮小率を手探りで決めるのに時間がかかりました。

楽しく節電意識を高める「電気を消して帰ろうゲーム」


僕の作品は「電気を消して帰ろうゲーム」です。学校でSDGsを学んだことから、節電をテーマにゲームを作りました。


プログラムをスタートさせると、学校の中で、いくつかの教室の電気がつけっぱなしになっていることが分かります。これを制限時間内に正しい順番で消していくのがゲームの目的です。


工夫した点は、ゲームが難しくなりすぎないよう、ヒント機能をつけたことです。みなさんも身近なところから節電にチャレンジしてみてください。

アイディア一発勝負「お茶を吹っ飛ばすだけの作品」


僕の作品は「お茶を吹っ飛ばすだけの作品」です。これはその名の通り、お茶を吹き飛ばすだけのお笑いプログラムで、とくに深いテーマはありません(笑)。


他の皆さんとはまったく毛色が違うかもしれませんが、Scratchでこんな作品を作るのもアリだなと感じていただければ嬉しいです。

アプローチは人それぞれ。次はあなたがクリエイターに

実用的なツールやSDGsを学べるゲーム、思い出をアートにした作品、はたまたシンプルなお笑いゲームなど、個性豊かな作品が飛び出した「Scratch Day」。

イベント終了後、クリエイターの皆様に「なぜScrachで作品を作るのですか?」とたずねてみると、こんな答えが返ってきました。

「自分で描いたキャラクターが動くと嬉しい。中学受験の息抜きにもなっている」

Scratchはすぐに作品づくりが始められ、気軽。コンパイルの必要もなく、作って、動かして、というトライアンドエラーが気軽にできる」

「UnityやPythonは誰でも高度なことができる分、アイディアの質が高くないと評価されづらい。Scratchなら地道にクオリティを高められるし、全世界に開かれたプラットフォームがあるので、いろいろな人に遊んでもらえる」

オリジナルの作品が気軽に作れて、全世界の人に見てもらえる。それが創作のモチベーションに結びつく。それがきっとScratchの魅力なのでしょう。

GIGAスクール構想でますます多くの子ども達がScratchに触れる中、次はどのようなクリエイターに出会えるのか?未来が楽しみになるイベントでした。

フロアからの質疑に堂々と答えるクリエイターの皆さん

(阿部和広氏メッセージ)同研究所の新プロジェクト「つくまなラボ(仮称)」に期待

ここ数年は、新型コロナウイルスの影響で対面でのイベントを開催できませんでした。

そのため本日のイベントをたいへん楽しみにしていたのですが、参加してくださったクリエイターの皆さんが、我々の予想をはるかに超える素晴らしい作品を見せてくれて、感動しました。

GIGAスクール構想が始まり、プログラミング教育が必修化したとはいえ、積極的な活用はまだまだ一部の子ども達に限られているように感じます。

こうした社会課題を受け、我々はより多くの子ども達に創造的な環境を届けられるよう、「Aoyama Creative Learning Lab(愛称:青学つくまなラボ)※仮称」の開設などさまざまなプロジェクトを予定しております。今度、青山学院大学 革新技術と社会共創研究所の公式Webサイトなどで発表していきますので、どうぞご期待ください。


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