JAPAN CUPは東京お台場のTOKYO GLOBAL GATEWAYにて開催されました。日本のみならず、ハワイ・インドからも合わせて27チームが参加。
初対面の参加者同士でも、VEXのロボット製作を通じてあっという間に親しくなっていきます。子どもたちの順応性の高さ、コミュニケーション力の高さには目を見張るものがありました。見守る親やメンターたちも、みんなが「ひとつになって」素晴らしい大会の空気感を醸し出していました。
英語のMCや効果音も入り、活気にあふれた会場はまるで常夏のハワイにいるような熱気でした!そんな「熱い大会」の様子をぜひご覧ください。
VEX|VEX IQ Competitionとは
VEXは、次世代を担うリーダーを育成するため、アメリカで開発されたSTEMロボット教材です。その競技大会であるVEX IQ Competitionでは、競技を通じて、
- チームワーク
- リーダーシップ
- コミュニケーション力
- グローバリズム
- プロジェクト遂行力
- 課題解決力
- クリティカル・シンキング
といったソーシャルスキルを育みます。
VEXは世界60か国で120万人のユーザーを擁する人気教材で、アメリカでは大手企業やNASAをスポンサーに持つREC財団が世界大会を開催しています。各国の子どもたちがそれぞれの国旗を持って入場するセレモニーから始まる世界大会は、日ごろの学習成果を世界という大舞台で試すまたとないチャンスです。
なお、日本では一般社団法人青少年STEM教育振興会が共催でVEXイベントを開催しています。
VEX JAPAN CUP(シグネチャーイベント)
今回のVEX JAPAN CUPは、親善交流が目的の国際交流競技大会として開催されました。
VEX IQ Competition Japan Cup in 2023の競技内容
VEXは毎年、世界大会の最終日に翌年の「競技内容」が発表されます。その新しい競技に向けたロボットを、各国のチームが1年をかけて作り、世界大会出場に向け準備を進めていくそうです。
今大会は、VEX IQ Competitionの「SLAPSHOT(スラップ・ショット)」による競技が行われました。
ゲームフィールドは半分ずつに分かれており、プレイヤーはまず、片面の各所に設置されているディスペンサーからオレンジのディスクを落とします。これだけでも得点が入りますが、中央のグレーのバーの下をくぐり抜けるようにして反対側のフィールドにシュートすると、さらに高得点がもらえるルール。
ゴールゾーンは4つに区別され、どのゾーンにディスクをシュートするかで得点が変わります。
VEX IQ Competition Japan Cup in 2023のスケジュール
大会は2日間にわたって開催されました。
1日目は国際交流イベントが行われ、ハワイチームがフラダンスとレイ作りを教えてくれました。そして2日目が競技大会です。午前中にはスキルスチャレンジがあり、お昼をはさんでチームワークチャレンジの予選が行われました。
チームワークチャレンジはVEXにおける大会の特徴で、当日ランダムに他のチームと組み、2チームが「ワンチーム」として相手と競います。
初めて知り合った選手とチームメイトになるわけですから、短時間でいかにコミュニケーションをとり、息を合わせて競技に臨めるかがポイントになります。
その後は予選を通過したチームによる決勝が行われ、最後にアワード発表(最終結果)が行われました。以降では、とくに注目のシーンをダイジェストでお届けします。
「VEX IQ Competition Japan Cup in 2023」ここがスゴかった!
VEX JAPAN CUPの注目ポイント
- ① 日本から!ハワイから!インドから!27チームが参加した盛大なイベント
- ② 英語で交流する中で育つグローバリズム
- ③ ガールズパワーが炸裂「女の子たちの活躍」
- ④ プロセスやプレゼンテーションも重要とされる「採点方式」
- ⑤ 年齢も国籍も性別も関係ない「多様性」
- ⑥ ボランティアによる運営と観客の盛り上がり
① 日本から!ハワイから!インドから!27チームが参加した盛大なイベント
今大会の目的のひとつが「国際親善交流」です。日本からはプログラミングスクール、公立小学校のチーム、インターナショナルスクールのチーム、さらにインドやハワイからもチームが参加。合計27チームが競う盛大なイベントで、ファミリーや先生方の熱い応援もあり熱気あふれる大会になりました!
② 英語で交流する中で育つグローバリズム
VEXはグローバリズムを重視しており、大会の進行はすべて英語です。ボランティアの通訳もいますが、子どもたちは最大限の英語を駆使して身振り手振りでコミュニケーションをとっており、印象的でした。
世界に出ていくのが当たり前の時代、たとえ英語が上手でなくても相手と意思疎通をとろうとする体験はとても貴重です。何より「ことばも国境も関係なく、子どもたちが同じ目標に向かって一致団結している」それこそがグローバリズムの根底にあるものだと気づかせてくれた瞬間でした。
③ ガールズパワーが炸裂「女の子たちの活躍」
VEXの大会の特徴のひとつとして、女子の参加率が高いことが挙げられます。今大会では、ガールズチームの躍進が目立ちました。
こちらは、ハワイから参加の「Lancer Robotics」チームの一員である、日本から留学中の女の子と地元の女の子のペア。「緊張している」と話す女の子の背中に軽く手をあてながら、「1回目、2回目と少しずつ点数があがっているので、楽しみながらがんばりたい」と留学中のYunaさんが話してくれました。
ジェンダーに関係なく「ITスキル」は次世代に必要なスキルとされています。これからの日本に必要な「性別を意識することなく」好きなこと、得意なことに打ち込める環境こそが、子どもたちの大きな成長につながることを改めて気付かせてくれた大会でした。
④ プロセスやプレゼンテーションも重要とされる「採点方式」
VEXの大会では、単純にロボット競技だけが採点対象になるわけではありません。
競技大会では、課題を解決してきた記録をまとめたエンジニアリングノートブックの提出が必須で、ジャッジ(審査員)がチームを回りながら質疑応答をします。
ロボット製作のプロセスや、ジャッジの問いかけにどう応えるかなど、コミュニケーション力も評価された上で、最終的な順位が決まります。また、エナジー・アワードやスポーツマンシップ・アワードといった、競技に対する意欲や姿勢を評価する賞があることも、VEX大会の特徴です。
⑤ 年齢も国籍も性別も関係ない「多様性」
競技大会は小学生から参加できますが、どの年齢からVEXを始めても、大学生までずっと継続できます。未就学児から大学生まで一気通貫のカリキュラムはVEXの大きな特徴で、VEXコンティニューアムと呼ばれているそう。
VEXワールドチャンピオンシップには世界中から1万人以上の子どもたちが集まるそうですが、この頂点をめざして、国籍や性別、年齢も関係ない「交流」が生まれます。まさに多様性を感じられる体験と言えるのではないでしょうか。
⑥ ボランティアによる運営と観客の盛り上がり
大会の運営を支えるのは多くのボランティアです。表彰式(アワード)では、ボランティアを称える賞もあります。
世界大会もそうですが「おとながみんなで子どもの世界を支える」思考がベースとなり、すべての観客がすべてのチームに熱い応援をおくるのもVEX競技の素晴らしいところです。アワードの授賞式では、受賞した子どもたちの笑顔と会場全体に響き渡る大きな拍手が印象的でした!
VEX JAPAN CUP 注目チームの活躍をレポート
日本代表の女子チームがJAPAN CUPでも躍進!世界大会へつながる経験に
今回、特に注目されていたのが、日本代表として世界大会へ出場が決まっているチームです。そのひとつが、DOHSCHOOL(プログラミングスクール)に通う女の子たちで結成された「Laurels 」です。Laurelsは、市川はるさん、小林千紘さん、前島香音さん、土屋莉乃さんの4人で構成されたチーム。
「世界大会では、いろいろな国の人とコミュニケーションをとり、楽しみたい」と語ってくれた市川さん。すでに世界大会に出場した経験があるだけに、ただ良い成績を目指すだけでなく、熱気と情熱に満ちた空間で「自分たちのカラー、力を発揮したい」という、しっかりした目標を持っていたのが印象的でした。
今大会ではスキルスチャレンジなどで苦労した点もあったようですが、きっちり修正してくることもこのチームの強みです。世界大会もぜひ頑張ってほしいですね。
(取材・スポンサー募集)『VEX Robotics World Championship2022』躍進の女子中学生に独占インタビュー
米国テキサス州ダラスで開催された「VEX ROBOTICS WORLD CHAMPIONSHIP 2022」に日本代表として出場し、VIQC Elementary部門のディビジョンファイナル9位に入賞した市川はるさん(13歳)。 この記事では笑顔の素敵な市川さんに、2,800以上のチームが参加したスペクタルな国際ロボットコンペティションの様子についてお話を伺いました!
この記事をcoeteco.jp で読む >トップチームは国内無敵の強さ!世界大会への抱負を語る
世界大会出場が決まっているSanEi Robotics所属の「Beast Hunter」は、今回、ひとりが参加できず出場に迷っていたそう。しかし、VEXの大会ではこうしたハプニングがあった場合には他チームのメンバーと組んで出場することもよくあります。
そしてインド代表の子と組んだ住友和樹くん、なにしろ日本の国内代表決定戦では3大アワード全てを獲得した最強チームのひとりですし、インド代表も実力者とあって、堂々たるゲーム展開でした。
「世界大会は(年齢的に)今回が最後です。去年は悔しい結果だったので、今年は絶対にがんばりたい。1ヶ月で仕上げて必ず結果を出します」と力強く語ってくれました。実力者同士のペアは、スキルスチャレンジで文句なしのアワードを受賞しました。
陽気なハワイチーム・緻密なインドチーム
今大会を大いに盛り上げてくれたのが海外から参戦したチームです。
インドのチームは団結力があり、粘り強くロボットを修正しては試走させチャレンジを続けました。こちらの問いかけにじっくり考え、言葉を選ぶように丁寧に返答してくれたのが印象に残りました。
ハワイからのチームはとにかく元気いっぱい!声をかけると、子どもたちは互いに肩を組みながら笑顔いっぱいで一斉に話し出してくれました!応援のファミリーも「アローハ!」と取材陣を迎え入れ、待ち時間にはハワイと日本のレストラン事情について、熱く語り合う「交流」が実現。おとなも自然と交流できる、まさに「親善交流」が目的の国際交流競技大会に相応しい時間でした。
VEX JAPAN CUP 受賞者
ジャッジド・アワード
- エクセレンス・アワード(中学生の部):Laurels(日本)
- エクセレンス・アワード(小学生の部):Ka'ōhao Iwotics(米国)
- デザイン・アワード(中学生の部):Titans(米国)
- デザイン・アワード(小学生の部):Samurai of the future(日本)
- ジャッジ・アワード:Lancer Robotics(米国)
- イノベート・アワード:Cold Breaker(日本)
- シンク・アワード:Beast Hunter(日本)
- アメイズ・アワード:Black Shark(日本)
- ビルド・アワード:Ka'ōhao Iwotics(米国)
- クリエイト・アワード:TECHKNIGHTS(インド)
- スポーツマンシップ・アワード:TECH TITANS(インド)
- エナジー・アワード:Domo(米国)
- インスパイヤー・アワード:Initial T(日本)
パフォーマンス・アワード
- チームワークチャレンジ・チャンピオン:Giant Intake Robot(日本)
- チームワークチャレンジ・チャンピオン:Samurai of the future(日本)
- チームワークチャレンジ・セカンドプレイス:Ka'ōhao Iwotics(米国)
- チームワークチャレンジ・セカンドプレイス:Titans(米国)
- ロボットスキルス・チャンピオン(中学生の部):Beast Hunter(日本)
- ロボットスキルス・チャンピオン(小学生の部):R & R(日本)
- ロボットスキルス・セカンドプレイス(中学生の部):Cold Breaker(日本)
- ロボットスキルス・セカンドプレイス(小学生の部):Black Shark(日本)
各運営組織によるアワード
- ボランティア・オブ・ザイヤー:Tomoko Takeshige & Maiko Aoi(日本)
- ボランティア・オブ・ザイヤー:Randy Wallingsford(日本)
- メンター・オブ・ザイヤー:Nagashilpa Seethamraju(インド)
- パートナー・オブ・ザイヤー:Hawaii Space Grant Consortium(米国)
- パートナー・オブ・ザイヤー:株式会社パワープロジェクト(日本)
- パートナー・オブ・ザイヤー:株式会社映像センター(日本)
入口は広く、頂点は高く!誰でも気軽に始めて世界最高峰をめざそう
青少年STEM教育振興会理事の市川 晋也(三英株式会社)さんは、VEXの魅力について、次のように語っています。
VEXはまったくロボットやプログラミングに触れたことがないお子さまでも、楽しく学べます。競技大会に初参加のお子さまでも、がんばったことが審査員から表彰されることもありますし、得点は低くても美しいデザインや機構を持つロボットがデザイン・アワードを受賞したり、スポーツマンシップに富んだペアが評価されたり、さまざまな面で子どもたちの素晴らしさを称えるのがVEX競技会です。ぜひ皆さん、VEXのワークショップや体験会に参加してみませんか?そして、今回のような素敵な大会にチャレンジしてみてくださいね!
一方で世界大会は非常に高いレベルになり、ロボット製作だけでなく、プロセスをわかりやすく記録したエンジニアノートやプレゼンテーションも重視されます。
VEXは、入口は広く低く、そして出口として最高峰の高い頂点までめざせるのが大きな魅力だと思います。