エリクソンの発達段階とは?幼児期から心理社会的発達理論も解説
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「エリクソンの発達段階」という言葉を、教育や心理学の分野で耳にしたことはありませんか?
これは、著名な発達心理学者エリク・エリクソンが提唱した、人の一生涯にわたる心の成長を8つのステージに分けてとらえる考え方です。
この記事では、エリクソンの発達段階について、各ステージの課題や特徴を初心者の方にも分かりやすく解説します。
子育てで子どもの行動の理由を理解したり、自分自身が抱える悩みや人生の課題を乗り越えたりするためのヒントを与えてくれるので、ぜひ参考にしてくださいね。
エリクソンの発達段階とは?人生の成長ロードマップ

エリクソンの発達段階は、正式には「心理社会的発達理論」と呼ばれます。
人間の一生を8つの段階に分け、各段階で直面する心理的な課題(心理社会的危機)と、それを乗り越えて得られる強さを体系的に示したものです。
エリクソンは、人の発達が特定の年齢で終わるのではなく、生涯にわたって続くと考えました。
各段階の課題をクリアすると、次のステージへ健全に進むための土台が築かれるとされています。
提唱者エリク・エリクソンはどのような人物?

エリク・ホーンブルガー・エリクソン(1902-1994)は、ドイツ生まれの発達心理学者であり、精神分析家です。
自身の出自に関する経験から、「アイデンティティ(自我同一性)」の概念を探求し、提唱したことで広く知られています。
アイデンティティとは、「自分は何者か」という問いに対する、一貫した自己認識を表します。
エリクソンは、青年期にこのアイデンティティを確立するのが重要な発達課題として、そのための社会的猶予期間を「心理的モラトリアム」と呼びました。
精神分析に文化人類学的な視点を取り入れた彼の研究は、幼児から老人まで、人の一生涯にわたる心の成長を解き明かす画期的なものでした。
【一覧表】エリクソンの発達段階8ステージ

エリクソンが提唱した8つの発達段階の全体像を一覧で見てみましょう。
各段階には、乗り越えるべき「心理社会的危機」と、それによって獲得できる心理的な強さが設定されています。
発達段階 | 年齢(目安) | 心理社会的危機 | 獲得する要素 |
---|---|---|---|
乳児期 | 0~1.5歳 | 信頼 vs 不信 | 希望 |
幼児前期 | 1.5~3歳 | 自律性 vs 恥・疑惑 | 意志 |
幼児後期 | 3~5歳 | 積極性 vs 罪悪感 | 目的 |
学童期 | 5~13歳 | 勤勉性 vs 劣等感 | 有能感 |
青年期 | 13~20歳 | アイデンティティ vs 同一性の混乱 | 忠誠 |
成人初期 | 20~40歳 | 親密性 vs 孤立 | 愛 |
成人期 | 40~65歳 | 世代性 vs 停滞 | 世話 |
老年期 | 65歳~ | 統合 vs 絶望 | 賢さ |
ここからは、各段階について詳しく解説していきます。
【乳児期】0~1.5歳頃:基本的信頼 vs 基本的不信
乳時期の赤ちゃんは、主に母親(または主たる養育者)との関わりの中で世界を学びます。お腹が空いたらミルクをもらい、不快なときはおむつを替えてもらう経験を通じて、「世界は信頼できる場所だ」という基本的信頼感を育みます。
この信頼感が、将来他者を信じ、前向きに生きるための「希望」の強さの土台となるでしょう。
逆に、欲求が満たされない経験が続くと、世界や他者に対する不信感を抱えてしまう可能性があります。
参考:0歳の習い事
参考:1歳の習い事
【幼児前期】1.5~3歳頃:自律性 vs 恥・疑惑
歩き始め、言葉を覚え、「イヤイヤ期」とも呼ばれるこの時期は、自分で物事をやりたいと自律性が芽生える大切な段階です。トイレトレーニングや着替えなど、子どもが「自分でやる!」と主張する場面が増えるでしょう。
親がその挑戦を温かく見守り、失敗を許容すると、子どもは自分の能力を信じ、「意志」の力を持つようになります。
過度な干渉や叱責は、「自分にはできない」と恥や疑惑の感情が芽生えるかもしれません。
参考:2歳の習い事
参考:3歳の習い事
【幼児後期】3~5歳頃:積極性 vs 罪悪感
幼児後期の子どもは、ごっこ遊びなどを通じて社会のルールや役割を学び、自ら計画を立てて行動する積極性を発揮します。「なぜ?」「どうして?」などの質問が増えるのもこの頃です。
周囲の大人がその好奇心や自発的な行動を認めると、子どもは「目的」を持って行動する力を獲得します。
一方で、行動を過剰に制限したり、罰したりすると、子どもは「悪いことをしている」と罪悪感を抱き、自発性が損なわれます。
参考:4歳の習い事
【学童期】5~13歳頃:勤勉性 vs 劣等感
小学校に入学し、集団生活の中で勉強やスポーツなどに取り組む時期です。他者と自分を比較するようになり、さまざまな課題をやり遂げれば「自分もやればできる」と勤勉性を身につけられます。
この成功体験が、自信や「有能感」につながりますが、失敗が続いたり、他者との比較でうまくいかないと感じたりすると、自分はダメだという劣等感を抱きやすくなります。
結果だけでなく、努力の過程を認めてあげることが重要です。
参考:学童期はいつからいつまで?
【青年期】13~20歳頃:アイデンティティ vs 同一性の混乱
「自分とは何者か」「将来どうなりたいか」などの問いに直面する、思春期の段階です。友人関係や部活動、進路選択などを通じて自己を探求し、アイデンティティ(自我同一性)を確立するのが課題となります。
これを達成すると、自分が信じる価値観に誠実である「忠誠」という強さを得ますが、答えが見つからない状態が続くと、自分が何者か分からなくなる「同一性の混乱」に陥ります。
【成人初期】20~40歳頃:親密性 vs 孤立
青年期に確立したアイデンティティを基に、他者との深い関係を築く時期です。恋愛や結婚、親友との関係で、自己をさらけ出し、相手を受け入れることで親密性を育みます。
他者を深く思いやる「愛」を獲得できます。
一方で、他者との深い関わりを避けると、社会的な孤独を感じやすくなる可能性があります。
【成人期】40~65歳頃:世代性 vs 停滞
成人期の課題は、次の世代の育成に関心を持つ「世代性(生殖性)」です。これは、自分の子どもを育てるだけでなく、仕事を通じて後進を指導したり、地域の活動に貢献したりすることも含みます。
次世代のために何かを残そうとすると、人は「世話」のあり方を身につけます。
自分のことだけにしか関心が向かない場合、人生が停滞していると感じ、空虚感を抱くかもしれません。
【老年期】65歳頃~:統合 vs 絶望
今までの人生を振り返り、その意味を見出す時期です。成功も失敗も含めて自分の人生全体を受け入れ、「これでよかったのだ」と感じられる状態が「統合」です。
この境地に至ることで、物事の本質を見通す「賢さ」がもたらされます。
逆に、人生に対する後悔や未解決の課題が多いと、「もっと違う生き方があったはずだ」と絶望の念に駆られます。
エリクソンの発達段階を学ぶ2つのメリット

エリクソンの発達段階の学習には以下の2つのメリットがあります。
エリクソンの発達段階を学ぶと、子どもの行動の裏にある心理的な発達課題を理解する手助けになります。
「なぜ言うことを聞かないんだろう?」と感じるイヤイヤ期も、「自律性」を育むための重要なステップだと分かれば、親の関わり方も変わってくるでしょう。
また、自己理解を深められるため、自分が今どの発達段階にいて、どのような課題に直面しているのかを客観的にとらえられます。
たとえば、成人期にキャリアの停滞感を感じているなら、それは「世代性」の課題と向き合うサインかもしれません。
自分の状況を理論に当てはめると、解決の糸口が見つかるでしょう。
エリクソンの発達段階から考える現代のキャリア形成

エリクソンの理論は、現代を生きる私たちのキャリア形成にも多くの示唆を与えてくれます。
特に成人期以降、「親密性」「世代性」などの課題は、職場での人間関係や後輩育成、社会貢献という形で現れます。
もし現在のキャリアに悩みや停滞感を感じているなら、それは発達課題と向き合うよい機会かもしれません。
もし、キャリアチェンジを考えているけれど、何から手をつければよいか分からない方は、プロの力を借りてみましょう。
プログラミングスクールなどが提供する無料のキャリア相談では、自分の適性や市場のニーズがわかります。
新しいスキルを身につけることは、学童期の「勤勉性」や「有能感」を再び獲得する経験にもつながり、人生の次のステージに進む大きな自信となるでしょう。
まとめ:エリクソンの発達段階を人生の羅針盤に

エリクソンの発達段階は、私たちが人生の各ステージで直面する課題と、それを乗り越えた先に待っている成長を示してくれる「心の地図」のようなものです。
重要なのは、ある段階の課題をクリアできなくても、後の段階で取り戻すチャンスがあるとエリクソンが考えていた点です。
「自分はもう手遅れだ」と考える必要はありません。
子育てに悩んだとき、自分自身の生き方に迷ったとき、このエリクソンの理論を思い出してみてください。
今自分がどの地点にいるのかを知ることで、心が少し軽くなり、次の一歩を踏み出す勇気が湧いてくるかもしれません。
参考:東京工芸大学工学部紀要.人文・社会編/Vol.37/No.2
参考:慶應義塾大学「慶應義塾大学学術リポジトリ(KOARA)」
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