選択登校制が2学期当初に行われた小学校では、どちらにするかずいぶんと悩んだご家庭も多かったようです。
オンライン授業と対面授業の両方を組み合わせたハイブリッド型授業はいったん終了し、通常登校に戻っていますが、いつまたパンデミックや突発的な出来事があるかわかりません。予測不能な時代と言われる今、ハイブリッド型授業は学びを止めない選択肢として注目されています。
とはいえ、「ハイブリッド型授業ってよくわからない」という親の声も少なくありません。今回はハイブリッド型授業について、幅広く解説していきます。
オンライン授業と対面式授業をミックス「ハイブリッド型授業」とは
家でパソコンを使用し授業を受けるオンライン授業と、学校に通学し授業を受ける対面式、この両方を組み合わせた授業スタイルを「ハイブリッド型授業」と呼んでいます。
ハイブリッド型授業には大きく分けて2種類あります。
- ブレンド型(対面授業・学習動画・オンラインライブ授業等の組み合わせ)
- ハイフレックス型(対面授業と同時にオンラインで同じ授業を受けられる)
ハイブリッド授業/ブレンド型
事前に録画してある授業や学習動画(オンデマンド)、リアルタイム配信(ライブ型の授業を配信)、対面授業(通学)を組み合わせたスタイルをブレンド型といいます。事前にオンラインで録画された動画授業を学び、対面授業で先生や生徒同士がコミュニケーションをとりながら、その授業をさらに深く学ぶ「反転授業」も、大学や一部の学校で導入されています。
ハイブリッド授業/ハイフレックス型
ハイフレックス型は、同じ内容の授業をオンラインでも対面でも受けられるスタイルです。実際に行われている授業がライブで配信され、オンラインで参加します。コロナ禍がある程度の収束を見せた後、小学校で取り入れられたのはこの方式です。
授業は通常通りに行われ、同時配信されて、在宅でオンラインを受けている生徒も発言したり、他の生徒たちの様子を見ることも可能です。
「通学かオンラインか」選択登校制で悩む親
小学校でいざ「通学させるかオンラインで授業を受けさせるか」となった場合、親としてはさまざまな不安や疑問が浮かびます。
中でも多かったのが「オンラインだと欠席扱いになるのか」という疑問です。
オンライン授業は出席か欠席か~文部科学省の見解~
文部科学省が2021年9月に「新型コロナウイルス感染症等により登校できない児童生徒の出席の扱いについて」の資料を更新しました。資料によると、感染はしていないが不安で休ませたい場合、病気療養や不登校といった生徒をのぞき、校長が合理的であると判断すれば、- 出席停止・忌引の取扱になり「出席にも欠席にもならない」
出典:新型コロナウイルス感染症等により登校できない児童生徒等の出席等の取扱いについて/文部科学省
オンライン授業は欠席でも出席でもないって!?!?
資料では、一定の方法によるオンラインを活用した学習の指導を受けたと校長が認める場合には「オンラインを活用した特例の授業」として記録されるとなっています。親が気になるのは、あまりに欠席日数が多くなってしまうと、たとえば中学受験であるとか、中学進学時に悪い影響がないか、という点です。上記の資料でいえば、出席停止(欠席ではないが出席でもない)にはなるが、校長も認めているオンラインを活用した授業を受けた場合には「オンライン授業を受けていた」と記録される=進学先もオンラインで授業を受けていたとわかる、ということになっています。
実際には自治体によって学校の対応が違います。
(2)今後の対応(通常授業とオンライン学習の選択制)
3実施方法 教室での通常授業への出席又は家庭等でのオンライン学習のいずれかを選択して頂きます。オンライン学習を選択しても欠席扱いとはいたしません。
引用:区立園・学校における2学期の当面の教育活動等について(令和3年9月8日)/世田谷区教育委員会
2 出欠席の取扱いについて出席停止は、欠席にはなりません。しかし出席の扱いでもありません。実施した小学校の多くは文部科学省のガイドラインに沿っています。
ハイブリッド授業期間中については、次のように取り扱います。
1登校 【出 席】 2 オンライン授業に参加 【出席停止】
3 学校を欠席し、オンライン授業も不参加で風邪様症状等有【出席停止】
4 学校を欠席し、オンライン授業も不参加 【欠 席】
引用:さいたま市
しかし自治体によっては独自の判断をしているところもあります。福岡市の教育委員会では以下のように公表しています。
(4)基礎疾患や感染不安により登校しない場合
欠席期間中→オンライン授業を受ける 出席
引用:オンライン授業について/福岡市教育センター
学校や地域によって、差があるのはどうなのかなぁ。オンラインでちゃんと授業受けて先生も確認しているのなら、出席にしてほしいなぁ!
ハイブリッド授業のメリット・デメリット
小学校はあくまで登校し、皆で授業を受けるのが基本ではあるでしょうが、このような状況下では、オンライン授業を選択したい家庭も少なくなかったはずです。
また、今後も、たとえば他の感染症による学級閉鎖や、何かしらの災害や地域的なアクシデントがあり、通学が難しいことがあった場合に、今回のように「通学かオンライン授業か」と親が選ぶことはあるかしれません。
そこで、ハイブリッド授業のメリットとデメリットを把握しておきましょう!
ハイブリッド授業のメリット
- 感染等の不安が減る
- 各家庭の事情によって登校かオンラインかを選べる
- 学びをとめることなく継続できる
オンライン授業であれば、要するにステイホームができるわけですから感染リスクは確かに減ります。
また、家庭によっては高齢者が同居している、基礎疾患や病気を持つ家族がいることもあり、より感染に気をつけなくてはならない場合もあります。このようなケースでもオンライン授業を受けられるのであれば、安心感が増します。
こうした感染症に限らず、たとえば何らかの理由による学級や学年閉鎖が数日間以上続くとき、また地域における事故や災害等で一部エリアでは通学が難しいということがあった場合にも、ハイブリッド授業は学びをとめることなく授業を進められるメリットがあります。
ハイブリッド授業のデメリット
- オンライン授業は家庭でのサポートが必要
- Wi-Fi等の設備によっては配信が不安定
- 電気代など家庭の負担
- 登校している生徒たちとそうでない生徒たちの関係に対する不安
もし家庭でオンライン授業を受けられたとしても、Wi-Fiなどの設備がしっかりしていないと「動画が途中で切れる」「音声がしっかり聞こえない」という問題はよくあることです。
公立小学校には、さまざまな家庭の子どもたちが通学しています。ある家庭にとっては当たり前のことでも、別の家庭にとっては通信料や電気代の負担も重荷になることもあるでしょう。
多くの親が感じているのが「オンラインで受けていると、学校に通わずにラクしていると言われないか」「登校している子たちとの関係がうまくいかないのでは」という心配です。
では、実際にハイブリッド授業を導入した小学校ではどうだったのかを次に見ていきましょう。
実際にハイブリッド授業を導入した小学校もある!
ハイブリッド授業は、実際に公立の小学校でも展開されています。さいたま市は、2021年2学期当初(緊急事態宣言中だった)にはハイブリッド授業で、オンラインか通学を選択できました。さいたま市教育委員会の資料によれば、おおむね20%程度の子どもたちがオンラインを選択していることがわかります。
東京新聞では、横浜市緑区の霧が丘学園小学部で教室と自宅に分かれ半数がオンラインで授業を受ける様子を報道しています。
大阪府寝屋川市でも市立小・中学校における「選択登校制」を実施しました。そして寝屋川市では、一定の条件を満たしていれば「出席扱い」としています。
それぞれの学校によるレポート等を見ると、在宅の子どもたちがモニターに映ると登校している子どもたちが一斉に手をふったり、笑顔を見せたり、「登校する子・しない子」の間に壁があるようには思えません。
とにかくハイブリッド授業が複数の小学校で実施されたこと自体が画期的であるとも言えますね。
ハイブリッド授業の課題点
とはいえ、どの学校でも地域でも、正直なところハイブリッド授業は「試行錯誤」で、保護者の評価も賛否両論あるようです。特に「オンライン授業をした場合を欠席とするのか、欠席でも出席でもないとするのか」は自治体によって違うケースもあり、保護者側としては「どうしてウチの学校は出席扱いにしないの?」と不満に思うことも。
たとえばオンライン授業をしたとしても昼食の問題があるため「給食だけ食べに学校へ行く」という苦肉の策をとった学校もありました。在宅勤務の親であっても「しょっちゅう子どもに呼ばれて仕事にならない」という声も少なからずありました。
配信の準備をしたり、撮影をするための人材を確保したり、学校側の負担も大きい上に、教室の子どもたちとオンラインでつながっている子どもたちの両方を見ながら授業を勧めるのは簡単なことではなく、苦労した先生方も多かったことでしょう。
ハイブリッド授業はいろいろな状況に対応できる良さはあるのですが、大小さまざまなな課題もあるのは事実です。今後は国や自治体、あるいは企業等のサポートでこうした課題を解決し、ハイブリッド授業がスムーズに進むようになるといいですね。
積極的不登校とオンライン授業
引用:新型コロナウイルス感染症に対応した新しい初等中等教育の在り方について/文部科学省
残念ながら、不登校の生徒数は近年増えています。
そのような中で「登校できなくても(しなくても)オンライン授業を受ければいいじゃないか」という積極的不登校が増えています。
もともと不登校といえば、親も心配し、一生懸命に子どもを学校へ行かせるように努力する傾向が強かったのですが、今では、逆に「家にいても必要な学習ができる環境にあるのだから、そんなにつらい思いをして学校に行く必要はない」と、親も積極的に不登校をすすめる、あるいは受け入れるケースも見受けられます。
また、積極的不登校には、何か学校に対する大きな不安があるのではなく、「自分なりの学習方法」「自分なりの学び」を追求し、学校は必要ではない、と判断した結果というケースもあります。
さらにパンデミックによる感染を避けるための「積極的な不登校」もあります。選択登校制ではない小学校に通う地域では、一時的に感染者が増えた場合、欠席覚悟で子どもを休ませることもあります。
積極的不登校は解釈が難しい言葉です。
不登校の理由も原因もひとりひとり違いますし、親の考えも違います。ただ、オンライン授業という選択肢ができたことで、不登校による対応次第によっては、苦しい思いをしている子どもたちに新しい道筋が拓けたとは言えるのではないでしょうか。
不登校の子ども向けにおすすめの学習塾もあります。下記記事にて詳しく解説しておりますので、参考にしてみてください。
不登校の生徒は珍しいものではありません。この記事では、不登校は決して悪いものではないということと、学校に行かなくても十分に勉強ができる世の中になっていることを解説・説明しつつ、その手助けとなる不登校向け塾を7つご紹介します。
この記事をcoeteco.jp で読む >学校へ行くこと・オンラインで授業を受けること
ハイブリッド授業は「学校で先生や友だちと授業をうける」と「オンラインで今いる場所で同じようなカリキュラムで授業をうける」両方を実施することです。
ここからは改めて「学校という社会で学ぶこと」と「オンラインによる学びの良さ」を見ていきます。
学校に行くことの意味と大切さ
子どもたちが心身ともに健やかに成長するのに、学校が果たす役割はとても大きなものです。確かに前述したように、学校という制度が合わない、いじめの問題などにより、登校が大きな負担となる子どももいます。
いっぽうで、多くの子どもたちは学校という社会で、さまざまなことを学びます。理不尽なことや納得がいかないことへどう対応していくか、周囲とどうコミュニケーションをとるのか学校は「こころ」の成長を育む場所でもあります。
なかよしの友だちとの楽しい時間を過ごし、喧嘩をし嫌な思いをしながら仲直りをするのも、学校という社会生活で体験できる大切な成長過程のひとつです。
地域社会で育まれる子ども
小学校は地域の中にあります。小学校に通うことで、地域の人々と触れ合う機会も増えるでしょう。社会性は、家族単位だけではなかなか育てられません。大勢の大人や、年齢の違う子どもたちとまじり、また、生活や環境が違う他人とも交流する中でしかわからない“気づき”や、学びもあるでしょう。
オンラインなら日本中・世界中とつながれる
一方で、デジタル化やオンライン授業によるメリットも多くあります。たとえば、オンライン授業では遠いところとも簡単につながることができます。沖縄の小学校と北海道の小学校が交流できますし、外国語学習もスタートしていますから、海外とつながり、同い年の生徒たちとやりとりできるのは、とても楽しい体験です。
引用:富谷初「世界とつながるオンライン授業(あけの平小学校)/トミコス
グローバル教育と言われて久しいですが、誰もが留学できるわけではありません。オンライン授業で世界中の人々と交流することで、さまざまな人が暮らす地球を感じ、グローバル教育の最初の一歩となるのではないでしょうか。
ひとりひとりの事情に寄り添えるオンライン授業
子どもたちには、それぞれに事情を抱えているケースもあります。病院にいても、治療を受けていても、オンライン授業であれば受けやすいメリットがあります。過疎化する地域で学校が非常に遠い場合、天候や状況に応じてオンラインでの授業参加が可能になれば、登校せずとも同じ学びを受けられます。
不登校の対応もそうですが、オンライン授業ではひとりひとりが置かれている環境や困っていることを考慮し、ITを活用しきめ細やかに対策を練ることもできるでしょう。
また、授業をオンラインで行う家庭教師のサービスや学習塾にも増えており、教師や講師のオンラインの授業を通したコミュニケーションの質も上がっていく可能性が高いです。
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この記事ではおすすめの料金が安いオンライン家庭教師について、料金や授業形式、機器のレンタル、サポート体制などを分かりやすく一覧で比較しています。オンライン家庭教師の料金相場やメリット・デメリット、オンライン学習塾との違いなど、おすすめのオンライン家庭教師がすべてわかります。
この記事をcoeteco.jp で読む >必要なときにハイブリッド授業がすぐにできるように
ハイブリッド授業がどこの学校でも「すぐに対応できる環境」にあれば、さまざまに活用できます。今回のような長期にわたるパンデミックは二度と起きてはほしくありません。しかし、どのような出来事があっても「子どもたちの学びを止めず、学びたい子どもたちに学びを届ける」ことはとても大切です。
コロナ禍による「一時的な措置」ではなく、ハイブリッド授業がいつでも必要なときに運用できるような環境が整うことを願うばかりです。
一時期、ハイブリッド型授業はニュースでも取り上げられていましたね。