近年、アクティブラーニングという言葉がよく聞かれるようになりました。
時代が移り変わるにつれて旧来的な授業スタイルが見直され、より現代的で先進的な授業スタイルの波が日本にもやってきています。ここにきて大学だけでなく、小中高の授業にもアクティブラーニングを取り入れようとする動きが活発になってきています。
アクティブラーニングとは一体何なのか、そのメリットは何なのか、また現在日本でどれくらい広まり、今後どのような展望が抱けるのか。今回はアクティブラーニングについて詳しくご紹介していきます。
1.アクティブラーニングのスタイルについて
アクティブラーニングとは学生が受動的に授業を受けるスタイルではなく、学生主導で能動的に授業を行っていくスタイルのことを言います。
これまで、「授業」とは教師が学生に向かって一方的に教えたり説明したりするものでした。学生がただじっと黒板を見たり、ノートを取ったり、話を聞いたりするだけの「受動的」な授業です。これに対し、学生の能動性を重視するアクティブラーニングでは、従来型の学習方法以外のことを積極的に取り入れて授業を行います。
具体的には、
学生たちが室内で討論を行う(グループディスカッションやディベート)
クラスで発表会を行う(プレゼンテーション)
プロジェクト学習、創成学習(実習やフィールドワーク)
勉強したことを複数の人とシェアする
個人に向けて授業をするのではなく複数のユニット重視で授業をする
3人から6人程度のグループを作って共同作業をする
ビデオを見たあとに皆で感想を語り合う
などです。
このように「黒板を見る、教師の話を聞く、ノートを取る」といった古典的で受動的な授業から大きく離れ、複数の学生と教師が一体となって「授業を楽しむ」「学びの楽しさを共有する」ことに重点を置いているのがアクティブラーニングです。
2.日本におけるアクティブラーニング
日本におけるアクティブラーニングは大学の授業から始まりました。
2012年8月28日の文部科学省中央教育審議会にて大学教育の在り方についての答申がなされ、これをきっかけに大学の授業におけるアクティブラーニング化が加速しました。大学教育の質的転換とはまさに「受動的な学習から能動的な学習」への転換のことです。
さらに2014年11月20日の文部科学省中央教育審議会にて、時の下村文科大臣から「小中高の学習指導要領を見直してください」という諮問が出され、大臣はそのなかでアクティブラーニングについての言及を行いました。
学習指導要領とは、小中高の学生が「何を学ぶか」が記載されたものです。もし今後この学習指導要領のなかに「アクティブラーニング」という言葉が明記されることになると、大学生だけでなく小中高でもアクティブラーニングが取り入れられることになるのです。これに先駆けて、すでに一部の小中高の学校でアクティブラーニングを取り入れた授業も行われています。今後、アクティブラーニングの波はさらに広がるでしょう。
日本でも徐々に広がりつつあるアクティブラーニングですが、アメリカの高校ではすでにすべての授業でこのアクティブラーニングが実践されています。クリエイティブ大国らしい先進的な授業が何年も前から行われているということです。
3.アクティブラーニングで学習することのメリット
これまでの単なる詰め込み授業、受動的な授業に比べると、アクティブラーニングでは「みんなで一緒に学びを楽しむ」ことが重点に置かれているので、上手く取り入れることで学生たちの学習の定着率が飛躍的に上昇する可能性があります。実際に、詰め込み型の授業よりも、学生が積極的に発言して授業に関わる「アウトプット型の授業」のほうが学習率も高まるという研究結果も出されています。
将来、社会で必要となるコミュニケーション能力や集団作業における能力の向上も、アクティブラーニングで期待できます。アクティブラーニングの基本は集団学習であり、自発的に授業に関わっていくことです。そのため学生のうちにこのような協調性、コミュニケーション能力、言葉の伝達性を養うことでファシリテーションスキルを向上させることができます。
また、教える側にもメリットがあります。アクティブラーニングは学生が主体となって授業を行うので、授業を行う教師の負担が減らすことができるのです。また、学生のレベルに合わせた自由な授業デザインを独自にプランニングすることにより、多様な授業スタイルを作ることも可能となります。教師の個性がそのまま授業のカラーとして表れるのも面白いところではないでしょうか。逆に言うと、教師の側にも授業のデザイン力が問われるということになります。
4.「知識」をどのように使うのか
もちろん、何か物事を考えるために「知識」は重要なものです。知らないことについて、私たちは何かを考えることができません。しかし「知識」はあくまでも道具なのであり、それを習得すること事態が目的なのではありません。アクティブラーニングでは、「知識」という道具を使っていかに考え、対話し、問題解決をするのか、そのような力を育むことができるでしょう。また、知識は定期的に思い出したり使っていかなければ、すぐに忘れてしまうものです。アクティブラーニングの中で日常的に色々なことを考えていれば、これまでに習得した知識を総動員する必要に駆られるでしょう。知識を死蔵せず、積極的に使っていく。この姿勢こそが、今後の社会人として求められるスキルになっていくのはないかと思います。
まとめ
日本ではこれまでずっと「詰め込み型の授業」が行われてきました。このような授業だけでは人間としての自発性、積極性、協調性がなかなか養われないというのが現状です。
グローバル社会となり、社会に出てから求められるスキルが大きく変わってきています。社会人として問題なくコミュニケーションが取れるよう、またクリエイティブで協調性のある生き方ができるよう、子どもの頃からのアクティブラーニングはその重要性を増してきているのではないでしょうか。