2016年に行われた調査では、私立学校に通わせた場合と、公立学校に通わせた場合にかかる学習費総額は、幼稚園(3歳)から高等学校まですべて私立に通わせた場合と、すべて公立に通わせた場合で3.28倍の差があることが分かりました。
この記事では「子ども学習費調査」についてまとめます。
文部科学省子どもの学習費調査って?
「子どもの学習調査」とは、1994年より文部科学省が2年ごとに実施している、全国の公立および私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校に通う幼児・児童・生徒を対象にした統計調査のことです。文部科学省は、その目的を「子供を公立又は私立の学校に通学させている保護者が,子供の学校教育及び学校外活動のために支出した経費並びに世帯の年間収入,保護者・兄弟姉妹の状況等の実態をとらえ,教育費に関する国の諸施策を検討・立案するための基礎資料を得ること」と説明しています。
つまり、保護者が子ども一人当たりにかける年間経費を年収の実態とともに調査しているということです。
前回の調査実施時期は2016年4月1日から2017年3月31日。その結果概要を2017年12月に公表しています。
私立/公立の支出の違いはあるの?
2016年度に行われた調査では、公立・私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校の1,140校の幼児、児童、生徒を対象に行われ、2万3,706人から有効回答を得られました。なお、「学校教育費」とは、授業料やクラブ活動に必要な費用のこと。この中に、通学費も含まれています。また、「学校給食費」とは、給食の実地形態に関係なく、給食費として徴収した金額のこと。さらに、「学校外活動費」とは、塾や家庭教師、習い事などに必要な費用のことを言います。
幼稚園(平均値)
|
公立幼稚園 |
私立幼稚園 |
学習費総額 |
233,947円 |
482,392円 |
学校教育費 |
120,546円 |
318,763円 |
学校給食費 |
20,418円 |
29,924円 |
学校外活動費 |
92,983円 |
133,705円 |
小学校(平均値)
|
公立小学校 |
私立小学校 |
学習費総額 |
322.310円 |
1,528,237円 |
学校教育費 |
60,043円 |
870,408円 |
学校給食費 |
44,441円 |
44,807円 |
学校外活動費 |
217,826円 |
613,022円 |
中学校(平均値)
|
公立中学校 |
私立中学校 |
学習費総額 |
478,554円 |
1,326,933円 |
学校教育費 |
133,640円 |
997,435円 |
学校給食費 |
43,730円 |
8,566円 |
学校外活動費 |
301,184円 |
320,932円 |
高等学校(平均値)
|
公立高等学校 |
私立高等学校 |
学習費総額 |
450,862円 |
1,040,168円 |
学校教育費 |
275,991円 |
755,101円 |
学校給食費 |
- |
- |
学校外活動費 |
174,871円 |
285,067円 |
公立学校と私立学校の学習費総額を比較すると、私立は公立に比べ、幼稚園で2.1倍、小学校で4.7倍、中学校で2.8倍、高等学校で2.3倍と差があることが分かりました。
幼稚園(3歳)から高校3年生までの総額
|
公立 |
私立 |
幼稚園(3年) |
約70万円 |
約145万円 |
小学校(6年) |
約193万円 |
約917万円 |
中学校(3年) |
約140万円 |
約398万円 |
高等学校(3年) |
約135万円 |
約312万円 |
幼稚園を3歳から通い始め、高等学校3年生まで、すべて私立学校に通った場合にかかる費用は約1770万円。公立学校に通った場合は約540万円となり、私立と公立の差は3.28倍であることが分かりました。
前回調査時と比較して分かることとは?
2014年に実施された調査と、2016年に実施された調査と比較してみると、学習総額費では、私立・公立ともに小学校・中学校では、ほぼ横ばい状態であることが分かります。幼稚園では公立幼稚園で「学習総額費」が増加。高等学校では制度変更により公立高校の「学習総額費」が増加しており、「学校外活動費」は、私立・公立ともに増加しています。
幼稚園(前回の調査時との比較)
|
公立 |
私立 |
||
2014年 |
2016年 |
2014年 |
2016年 |
|
学習費総額 |
222.264円 |
233,947円 |
498,008円 |
482,392円 |
学校教育費 |
119,175円 |
120,546円 |
319,619円 |
318,763円 |
学校給食費 |
19,382円 |
20,418円 |
36,836円 |
29,924円 |
学校外活動費 |
83,707円 |
92,983円 |
141,553円 |
133,705円 |
幼稚園の学習総額費を見ると、公立幼稚園は前回調査時から5.3%増加しています。主に学習塾や家庭教師の費用などの「学校外活動費」の支出が、前回より増えていることが判明。また、私立幼稚園の学習費総額は、前回調査時と比べて減少しています。
小学校(前回の調査時との比較)
|
公立 |
私立 |
||
2014年 |
2016年 |
2014年 |
2016年 |
|
学習費総額 |
321,708円 |
322.310円 |
1,535,789円 |
1,528,237円 |
学校教育費 |
59,228円 |
60,043円 |
885,639円 |
870,408円 |
学校給食費 |
43,176円 |
44,441円 |
46,089円 |
44,807円 |
学校外活動費 |
219,304円 |
217,826円 |
604,061円 |
613,022円 |
小学校の学習総額費は効率・私立ともに前回調査時とほぼ横ばい状態です。私立小学校は「学校教育費」が減少している一方で、「学校外活動費」がわずかですか増加しています。
中学校(前回の調査時との比較)
|
公立 |
私立 |
||
2014年 |
2016年 |
2014年 |
2016年 |
|
学習費総額 |
481,841円 |
478,554円 |
1,338,623円 |
1,326,933円 |
学校教育費 |
128,964円 |
133,640円 |
1,022,397円 |
997,435円 |
学校給食費 |
38,422円 |
43,730円 |
4,154円 |
8,566円 |
学校外活動費 |
314,455円 |
301,184円 |
312,072円 |
320,932円 |
中学校の学習総額費を見ると、公立・私立ともに、前回調査時からほぼ横ばい状態であることが分かります。「学校教育費」が公立中学校で増加している一方で、私立中学校では減少。「学校外活動費」は、公立中学校で減少していますが、私立中学校では、わずかですが増加しています。
高等学校(前回の調査時との比較)
|
公立 |
私立 |
||
2014年 |
2016年 |
2014年 |
2016年 |
|
学習費総額 |
409,979円 |
450,862円 |
995,295円 |
1,040,168円 |
学校教育費 |
242,692円 |
275,991円 |
740,144円 |
755,101円 |
学校給食費 |
- |
- |
- |
- |
学校外活動費 |
167,287円 |
174,871円 |
255,151円 |
285,067円 |
高等学校では、公立で学習費総額が前回調査時より10%増加。この増加は、制度変更により、「学校教育費」が増加したことが原因です。また、「学校外活動費」の支出は前回から4.5%増加。さらに、私立でも、「学校外活動費」の支出が、前回より11.7%増加しています。
長期的な視野を持って準備を
私立に通わせるとお金がかかることは予測がつくと思いますが、公立に通う場合でも思ったよりお金がかかるなという印象があるのではないでしょうか。このほか、習い事などを検討するのであればさらにお金がかかります。お子さんの将来のためにも、長期的な視野を持って貯金などの準備をすることをおすすめします。お子さんが将来どういう進路を希望するかというのは分からないものです。大学へは行かずに早くから働きだすかもしれませんし、大学院まで出たいと希望するかもしれません。もちろんそれはお子さん自身の意思ですから、奨学金などでまかなってもらうという考え方もあるでしょう。しかし、日本の奨学金の多くは貸与型なので、社会に出ると同時に負債を背負わせてしまうことになります。負担を軽くするためにも、できるだけ援助できる態勢を整えておきたいですね。
まとめ:学資保険などの利用も検討しよう
子どもを幼稚園から高等学校まで私立に通わせた場合には、子ども1人あたり約1770万円かかることが分かりました。さらに、私立大学に通わせた場合、1年間にかかる費用が約136万円。国立大学では約64万円、公立大学で約67万円となっています。改めて、子ども1人にかかる教育費の高さに困惑している方も多いのではないでしょうか。
子どもが自分の進路を諦めることがないようにするためには、学資保険などの利用も考え、充分な教育費を備えておく必要があるようです。
参考文献:文部科学省資料