しかしE資格という言葉はIT業界では耳にすることはあるものの、比較的新しい資格のため、実際にどのような資格であるか知っている人はまだ少数派と言えます。
そこで今回は、E資格について概要や難易度・勉強方法などを詳しく解説します。E資格が気になっている人は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。どのような資格であるか分かるようになります。
E資格とは?
E資格とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施している資格であり、ディープラーニングについて、理論および実装する能力や知識を有していることを認定するものです。
日本ディープラーニング協会で実施している資格には、E資格の他にもG検定がありますが、E資格はエンジニア向けの資格である一方、G検定はエンジニア以外のビジネスパーソンの受験を想定しており、ターゲットとする分野が異なります。
取得するメリット
E資格を取得するメリットとしては、大きく以下の2点があります。- ディープラーニングに関する専門的かつ実用的な知識が得られる
- 将来性があり、就職や転職の際に強力な武器となる
ディープラーニングに関する専門的かつ実用的な知識が得られる
E資格は、ディープラーニングについての体系的な理論、および実装する能力までが出題範囲となっています。そのため、E資格を取得することによって、ディープラーニングに関する専門的かつ実用的な知識を証明することができます。
ディープラーニングに関する資格はまだ数が少なく、E資格は代表的な資格となっているので、その資格を持っていることは大きなメリットになります。なかでも、エンジニアとしてのAIに関する開発知識や実装能力を示す資格としては受験者数が最も多く、権威として認められています。
将来性があり、就職や転職の際に強力な武器となる
各企業では、DX化の推進に伴いAIやディープラーニングの知識を持った人材を求めています。特にディープラーニングの実装ができる人材はまだ少ないこともあり、企業としては喉から手が出るほど欲しいという状況です。データアナリストや機械学習エンジニア、データサイエンティストなどの求人では資格を取得していることが要件になっているケースもあり、E資格を保持することによって、データ解析や課題解決の実力があることを証明することができるため、就職や転職の際に強力な武器となるでしょう。
E資格の試験概要
つぎに、E資格の試験概要について詳しく紹介します。実施概要としては以下のとおりです。- 試験時間:120分
- 出題形式:多肢選択式100問程度
- 試験会場:申込時に希望の試験会場を選択
- 受験費用:一般33,000円(税込)、学生22,000円(税込)、会員27,500円(税込)
受験資格
E資格の受験資格は、「JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了していること」となっています。JDLA認定プログラムとは、日本ディープラーニング協会があらかじめ定めた基準・シラバスを満たす教育プログラムです。このプログラムは、大学や民間事業者で提供されています。
これらの教育プログラムは、オンラインやハンズオンでも開催されており費用が比較的高額ですが、中には厚生労働省認定の教育訓練給付金が受けられる講座もあります。本記事ではおすすめの認定プログラムについても紹介します。
シラバス
E資格は、AIやディープラーニングの理論から、実装力まで求められるため、出題範囲も幅広いものとなっています。具体的な範囲は、応用数学・深層学習・機械学習・開発運用環境の大きく4つのジャンルに別れます。
応用数学では、確率・統計や情報理論が出題されます。深層学習では、深層モデルのための正則化・最適化などが、機械学習では基礎や実用的な方法論などが出題されます。また、開発運用環境では、ミドルウェアや環境構築などが出題対象です。
E資格の難易度
E資格の難易度は、ディープラーニング関係の資格の中では高いと言われているにも関わらず、合格率は平均すると毎回70%程度と高くなっています。E資格の受験資格はJDLA認定プログラムを学習後に受験するという高いレベルが要求されているため、合格率が高くなっています。受験資格を得る段階で大きく絞り込まれているといえます。しかしながら、理系の大学出身のエンジニアであれば、しっかりと対策すれば手の届かない資格ではりません。この記事では、合格するための勉強法を詳しく解説します。
逆に、大学受験で数学を使っていない、共通試験の数学で高得点が必要なかった文系の大学出身者にとっては、高校の数学からしっかりと勉強し直す必要があり、かなりハードルが高いものとなっています。
E資格の過去問
資格は過去問が公開されていません。しかし、認定プログラムの受講が必須となっていますので、認定プログラムの内容をしっかりと学習することが重要になっています。E資格の勉強方法 (合格者体験談)
E資格取得のための勉強方法について、2023年に合格したエンジニアの岡田さんにお話を伺いました。おすすめ勉強法は認定プログラムから始めること
コエテコカレッジ編集部(以下コエテコ): E資格合格に向けてどのように勉強したのか教えてください。岡田さん(以下岡田): まず、JDLAのE資格認定プログラムである zero to one社の「機械学習オンライン/ディープラーニングオンライン」の内容に沿って学習を進めました。
コエテコ: 色々ある認定プログラムからこの講座を選んだのはなぜですか?
岡田: 選んだ理由は3つあって、1. 11万円という価格でコストパフォーマンスが良さそうだったこと。2. カリキュラムの内容がシラバスの内容を網羅してそこそこ充実していたこと。 3. 修了要件が厳しくなくて、仕事をしながらの勉強でもやり切ることができそうだった、からです。
コエテコ: 動画教材のプログラムですがどのように学習を進めましたか?
岡田: まず、動画教材である点は、自分のペースで勉強することができてよかったです。
自分はカリキュラム通りに一通り最後まで学習を行いました。
E資格の参考書は?
コエテコ: その他に使用した教材などはありますか?岡田: オライリーの「ゼロから作るDeep Learning ①〜④」を買いました。上記zeto to oneの講座を修了後に、わからないところをスポットで書籍を用いて勉強しました。ただ、その③フレームワーク編はフレームワークの作り方なので必要なかったです。
コエテコ: なにかポイントはありますか
岡田: 有名なアルゴリズム・実装については一通りしっかりとやっておくことをおすすめします。
勉強時間はトータル100時間から120時間
コエテコ: どのようなスケジュールで勉強を進めたのかを教えてください。岡田: 9月末の受験に向けて8月から約2ヶ月弱の勉強をしました。平日は毎日帰宅後2時間。土日は半日集中して6時間勉強しました。最低でも毎日勉強をすることを自分に課していました。トータルの勉強時間は100時間から120時間くらいでした。
コエテコ: 具体的にはどのような方法だったのでしょうか。
岡田: 動画講座を受講しながら、ノートをまとめました。ノートに書くのは超おすすめです。
Mac1台あれば学習できる、WindowsゲーミングPCは不要
コエテコ: ディープラーニングの学習のためには、グラフィックボードを搭載した高性能なゲーミングPCなどを用意する必要はないですか?岡田: E資格合格のため、というのであれば必要ありません。 学習や課題はJupyter(”ジュパイターノートブック” WebベースでPythonを実行できる環境)を用いて行うので、Macでも十分可能です。
コエテコ: でも、ディープラーニングを学ぶほどに高性能なグラフィックボードが欲しくなると聞きました。
岡田: はい、自分の同僚もそのようなPCで画像生成やアバター生成を行っているようです。自分は大量の処理が必要になったときにはAWSを使いました。ただしそれも、E資格の学習という意味では必要ありません。自分の会社ではE資格取得の報奨金がでましたので、それでPCを買っても良いかもしれません(笑)
プログラミングと大学教養レベルの数学が必須
コエテコ: E資格取得のためにはどのような素養が必要でしょうか、誰でも取れるものでしょうか?岡田: 基礎的なプログラミングと高校卒業から大学教養レベルの数学ができないと厳しいと思います。偏微分や線形代数がわかっている必要があります。統計などのデータサイエンス系の技能はいりません。
コエテコ: すると、文系出身者では厳しいでしょうか?
岡田: 相当の努力が必要だと思います。
E資格は意味ない?
コエテコ: 資格の取得には意味がないという意見もありますが、いかがですか。岡田: 確かにE資格を取得するだけで実務のすべてを行えるというわけでは有りません。しかし自分にとってはE資格の勉強が非常に良い経験になっていて、その時の知識と経験が業務に活きています。理論と実践では違いがありますが、しっかりと勉強することが実践のベースになっています。これから実践経験を積んでいきたいと思います。
おすすめE資格の認定プログラム
岡田さんが受講した認定プログラムはこちら認定No.00002 株式会社 zero to one機械学習オンライン/ディープラーニングオンライン
価格:1IDあたり(通常版)165,000円(税込)/(サポートなし)110,000円(税込み)
まとめ
今回は、E資格について資格の概要や勉強方法などについて解説してきました。難易度の高い資格であり、そのため事前の講座受講で学習時間も長くしっかりと準備することが大切ということも分かったのではないでしょうか。E資格は就職や転職で役に立つ
E資格はAI・ディープラーニングに関する理論・実装力が求められる資格です。AIを業務に活かしたい採用側としてはE資格に合格しているということで、AIエンジニアとして基本的な力を持っているということ、またエンジニアとして勉強して成長する力を持っているということの証明になります。就職や転職の際に強い武器となります。また、AIは今後全ての産業で当然のように必要になり、その開発をするAIエンジニアは圧倒的な人手不足状態にあります。これからエンジニアが目指す資格としては非常に将来性があるといえるでしょう。
社内でAIプロジェクトが始まることもあると思いますので就職転職以外でも、社内異動でキャリアアップ・給与アップする事ができる可能性も大いに高まります。
今後ますます需要が高まる資格であるE資格。興味を持たれた人は、ぜひE資格の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
執筆・聞き手
JDLA G検定の第1回合格者。プロダクトマネージャー。
オンラインスクールプラットフォーム『コエテコカレッジ byGMO』を担当。サービスにAIを用いることで如何に利用者に価値を提供するか「AIは手段であって目的ではない」が持論。