気象予報士は、1993年の気象業務法改正によって誕生した約30年の歴史がある国家資格です。その合格率はおよそ5%で、「難関」と称されることも。
そんな気象予報士の魅力はどこにあるのか?どうすれば合格することができるのか?経験豊富な講師陣による動画教材を提供しているTeam SABOTENの皆さまにお話を伺いました。
気象予報士=お天気キャスター、ではない
——「気象予報士」と聞くと、お天気キャスターのイメージがあります。気象予報士という資格・職業についてまずはお聞きしても良いでしょうか。佐々木:気象予報士とは、その名の通り、気象の状況を予想することを専門としたお仕事です。つまり、明日の天気がどうなるか、天気図などを見て予想するのが気象予報士の業務になります。
一方でお天気キャスターの主な仕事は、気象庁から発表される予報を伝えることです。必ずしも自分で予報を「つくる」必要はないため、気象予報士の資格も必須ではなく、資格を持っていないお天気キャスターの方も多くいらっしゃいます。勘違いされがちですが、気象予報士=お天気キャスターではないことをはじめに知っていただければと思います。
尾崎:佐々木先生の言う通り、資格を持っていないタレントや放送局のアナウンサーがお天気キャスターをされていることもありますよね。私は気象予報士試験に合格したあと、資格を持ったお天気キャスターとしてキャリアをスタートしましたが、予報を「つくる」実務経験がなかったので最初は相当苦労しました。
誰しも、キャスターになりたての頃はテレビ慣れしていないので、気象庁の予報をそのまま伝えるだけでも大変。そのうえ自分で予報するスキルもないので、気象庁の予報の根拠もよく理解せず、ただひたすら伝えているという感じ。今だから言えますが、本当にスキル不足だったなと感じます。
佐々木:繰り返しになりますが、気象予報士=お天気キャスターというわけではありません。お天気キャスターの他に気象予報士の資格を生かすとすれば、民間の気象予報会社に就職したり、ライターや新聞記者としてお天気関連の記事を書いたり、自治体で防災の仕事をしたり、気象予報士スクールの講師になったりする人もいます。
また、気象予報士資格は趣味目的で取得される方もたくさんいらっしゃいます。体感値にはなってしまいますが、7割くらいは仕事以外の目的で取得されているような気がします。
受講者層として多いのは、まず20代。この層の主に女性は、お天気キャスターを目指して勉強されている方が多いですね。同じくらい多いのが、50〜60代の方々です。この層の方たちは、パラグライダーや登山、釣りなどの趣味に生かしたり、セカンドキャリアとして地域の防災活動に生かしたりと、キャリア形成というよりは、定年後の生きがいを見据えて資格を取得される方が多いようです。
私たちは実務として気象予報業務を行っていますが、予報業務を希望する人はあまり多くないですね。気象予報の仕事は、お天気キャスターに比べて知名度不足かもしれませんが(笑)、実はとても面白いんですよ。
尾崎:私も、最初は気象予報業務の面白さに気づいていませんでした。
しかし、日本テレビの気象センターという部署で(Team SABOTENリーダーである)島下と仕事をすることになって、天気図の見方とか、予測手法とか、キャスターをやっているだけでは身につかない技術を教えてもらったんです。そのうちに、キャスターよりも予測業務の方が面白くなってきて。
キャスター業務を5年くらい務めた段階で、気象庁の予報を伝えるだけではつまらないなと考えるようになりました。そこで、今度は気象予測をしたいと思い、局地予測の現場で働くようになったんです。
——お天気キャスターから、気象の知識を実務に生かす道へキャリアチェンジされたんですね。ところで、「局地予測」とはどのようなお仕事なのでしょうか?
島下:それについては私のほうからご説明しましょう。
多くの方に馴染みがあるのは、気象庁が発表する天気予報ですよね。でも実は、この予報は対象地域や時間が大雑把で、外出する時の参考にはなるかもしれませんが、ビジネスに利用するには不十分です。
たとえば、高速道路の場合は、ある雨量の基準を超えると速度規制をかけなければなりません。また、夏が来て暑くなってくると、企業は「気温が〇〇度以上になると××が売れる」といったデータに基づいて販売戦略を立てることがあります。そのためには独自にカスタマイズした天気予報が必要なので、民間の気象事業者が細かいデータを提供するわけです。
でも、こうして気象予測をしっかり行なう業務に従事している人は、気象予報士の有資格者の中でも少数派ですね。先ほど佐々木も申し上げたように、だいたいの方は、今のお仕事に+αするとか、趣味目的でチャレンジされることが多いので。
佐々木:私に関して言えば、気象予報士の資格を取ろうと思ったきっかけは仕事でした。大学を卒業してからテレビ番組のディレクターとして働いていたのですが、天気によってロケのスケジュールが台無しになってしまうことが多々あり、それがすごく嫌だったんですよね。
天気予報に振り回されることが増えた時に、「それなら自分で予報してしまおう」と思って。気象庁の天気予報が外れるとどうしても腹が立ってしまうけど、自分で行った予報は自分に責任があるから、イライラしないかな、と(笑)。
きっかけはそういうことだったのですが、勉強をしているうちに天気や気象が面白くなってきてしまい、結局、合格後はテレビ番組のディレクターは辞めて、気象業界に入り予測の現場で働くようになったんです。
——そこまでお二人がのめりこむ気象予報士の魅力は、一体どこにあるのでしょうか。
島下:気象予報士の魅力は、未来を予測できることにあると思います。
(気象予報士と同じく、資格独占業務である)お医者さんや弁護士さんは、いま目の前に起こっていること(現在)や起こってしまったこと(過去)をベースにお仕事をしています。でも、気象予報士はデータを分析することで、未来のことをコンテンツとしてビジネスができるんです。
佐々木:気象予測は、現在の大気の状態を把握して、それが将来どう変化していくかを数値シュミレーションして、将来の天気を予測します。計算して出てきたデータを分析し、明日、あさって、1週間後など、未来の天気が予測できるんです。私はそれが魅力だと思います。
それほど知名度の高くない職業だとは思いますが、ビッグデータが重視される今の時代では、非常にニーズが高まっているのではないかと思います。この職業の魅力を多くの人に知ってもらえれば、もっと人気が出ると思うんですけどね。
物理や法律の知識も!気象予報士の資格試験内容とは
——ではいよいよ、気象予報士の資格試験について教えてください。佐々木:気象予報士の資格試験は、「学科一般分野」「学科専門分野」「実技分野」の3つに分けられています。どのようなことが問われるのか、詳しく説明します。
学科一般分野|物理や関連法規の知識が問われる
学科一般分野では、主に物理の知識が問われます。大気の構造や、大気の熱力学などに対する理解が必要になりますね。計算問題も出てくるので、理系の勉強から遠ざかっている方は苦労するかもしれません。そのほか、気象業務法や災害対策基本法など、気象予報にかかわる法律に関する問題も出題されます。学科専門分野|気象予報の専門知識が問われる
学科専門分野では、具体的な気象予報に関する知識が問われます。そのため、観測の技術や数値予報、長期予報の仕組みや予報モデルについて勉強する必要があります。学科専門分野こそ、気象予報士だからこそ知っておかなければならない分野であり、ただ「お天気が好き」とか「物理が得意」ということから一線を画すところで、気象予報士の醍醐味と言える分野だと思います。実技分野|試験は論述式。これまでの知識を総動員し実際に気象予測を行う
学科一般分野・学科専門分野はマークシート式ですが、実技分野は論述式になります。実際に天気図を見て、実況の把握から予想の組み立てが問われるもので、まぐれで正答することはできません。学科一般分野・学科専門分野の知識を動員して試験問題を解くことになりますので、足腰を固めておかなければ苦労すると思います。
——かなり広範な知識が問われるのですね。物理の知識も必要となると、計算が苦手な人にはハードルが高い印象です。
尾崎:気象予報士を目指す人は文系が多い印象ですから、余計にハードルが高く感じますよね。私も文系出身で、一般試験の熱力学などには特に苦労しました。
佐々木:気象予報士試験は1年に2回あります。学科一般分野と学科専門分野は、それぞれ合格すると有効期限が1年間あり、例えば「学科一般分野」のみ合格したら、そのあとの2回の試験では学科一般分野は免除されます。ですから、1回目の試験で学科一般分野を合格したら、次の試験で学科専門分野、最後に実技分野をクリアする、全部で3回・1年半で合格を目指す人が多いです。
中には、試験免除の有効期限が切れてしまうことでモチベーションが下がり、負のループに巻き込まれてしまう方も散見されます。しかし、私たちTeam SABOTENが行っている講義では、そうならないようにしっかりとフォローをさせていただいています。
島下:個人的に面白いなと思っているのが、学科一般分野で法律に関する問題が多数出題されることです。具体的には、15問中4問が法律に関する出題となります。
この分野では気象業務法や災害対策基本法の他に、水防法や消防法も学ぶ必要があります。趣味で気象予測をしたい方には「関係ない」と思ってしまうかもしれませんが、気象予報業務に従事するのであれば、知っておかなければならない知識となります。
その中でも面白いのが、災害対策基本法の第五十四条です。条文では、「災害が発生するおそれがある異常な現象を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は警察官若しくは海上保安官に通報しなければならない。」と書かれているのですが……。警察の場合は110番をすれば良いけれど、一体どれだけの国民が、海上保安庁の連絡先である118番を知っているのかという(笑)。
これは一例ですが、他にもいろいろな豆知識が身につきますので、ぜひ楽しんで学習してほしいですね。
「正しい・分かりやすい・楽しい」講座を目指して
——インタビューをする中で、気象予報士に対するお三方の愛が伝わってきました。そんな皆さまが講座を提供する上で気をつけていらっしゃることはありますか?尾崎:手前味噌ではありますが、Team SABOTENの講義は、正しい・分かりやすい・楽しいの三拍子が揃っていると思います。
私は気象予報士を目指していた頃に、複数のスクールに通いました。でも、その頃にTeam SABOTENの講義があったら絶対に受講していたと思います。このクオリティの高さで講義を提供しているところは他にありません。
実は、他のスクールの中には、気象の知識や講師経験の浅い方、気象予報の現場で働いたことのない方が講師を務めているケースもあるんです。そのような方が講師として教えていると、現象の仕組みの解釈が間違っていたり、質問をしても納得のいく答えが返ってこなかったりすることもしばしばあります。
尾崎:もちろん正しい解説をしている講師もいるのですが、たとえ説明が正しくても、つまらなければ勉強を続けるモチベーションが湧かないですよね。その点、佐々木先生の講義は分かりやすい上に楽しいので、とても理想的だと思います。
島下:お天気キャスターの方が講師を務めているスクールなどもありますが、テレビの天気予報での解説を見ていると、こんなレベルで大丈夫かな?と心配になることが少なくありません。
たとえば、「上空に寒気が流れ込んでくると、大気が不安定になります」という解説はよくテレビの天気予報でもなされています。上空が冷たくて、地上付近が温かい場合、冷たい空気は重たく、温かい空気は軽いため、上下が逆転しますよ、といった解説です。雷が鳴っている日には、このような現象が起こっているのだと説明されます。
しかし、ここでよく考えてみてほしいのですが、富士山の山頂はいつも寒いですよね。では、その冷たい空気が下降することで雲が発達し、富士山の周辺で毎日雷が鳴っているでしょうか?たとえ気象に関する専門知識がなくても、「そんなわけがない」と気付くのでは。だとすれば、先ほどの「上下が逆転することによって雷が発生する」という説明は間違っていることになりますよね。
——確かに。実際のところ、どうしてなのでしょうか?
島下:実は、「上空にある冷たい空気が降りてくるから雷雨になる」という説明は資格試験の勉強には不適切です。実際には雷をもたらす雲の発生から発達の途中までは、降りる運動ではなく地面付近の空気が上昇する運動だけです。
例えば太陽の日射で地面が温まるとそれが空気に伝わり温かい空気が上昇し始めます。その空気に含まれる水蒸気が水や氷の粒になったものが雲です。さらに上昇が続くと、雲粒は雨粒や氷粒に成長するのですが、この段階まではほぼ上昇運動です。ところが雨粒や氷粒は成長すると重くなり落ちてきます。ここから下降運動が始まります。雨粒、氷粒の下降、蒸発、融解が、冷たい空気が下に降りる運動の要因となるわけです。
つまり、雷が発生するほどの「雨雲(積乱雲)」は、上昇運動によって発達し、途中から下降運動が加わるというプロセスが、短時間に激しく起こるわけで、降りる運動が雷の要因なのではなく、雷が発生するぐらい雲が発達することが冷たい空気を降ろす要因の一つだということです。
このように、正しい知識を持っていれば、「富士山の周辺で毎日雷が鳴らないのはなぜ?」という質問にも正しく答えることができます。富士山の山頂は冷たいですが、その空気が重いから下に降りるということは起こっていないし、それが積乱雲を発生させているのではないわけですね。
でも、この質問を、他のスクールに通って気象予報士試験に合格した方にぶつけてみると、意外と答えられないことも多いんです。講座は何よりも「正しさ」が大切ですから、しっかりとした知識を持った講師に教わることが第一ではないでしょうか。
尾崎:今、島下が説明したような知識はそもそもテキストに書かれていなかったり、質の悪い教材だと、書かれていることが間違っていたりもします。仮に正しかったとしても、解説の仕方が分かりづらく、理解が進まないことも。ですから、繰り返しになりますが、しっかりとした知識を身に着けている人から、楽しく・分かりやすく教わるのが一番良いと思います。
確かに、講座を受講すると、多少はお金がかかります。でも、信頼できる講座なら学習効率が格段に上昇するので、それだけの価値があると思います。
佐々木:中には、費用の節約を目的に「絶対に独学で合格するぞ!」と考える方もいらっしゃいます。その考え方を否定するつもりはないのですが、最終的にかかる時間コスト・金銭的コストを考えると、むしろ有料講座を購入した方が早く・安く合格できると思います。
気象予報士の試験には、1回で11,400円かかります。2科目免除で実技試験のみでも9,400円です。これを毎回払って何度も残念な結果に終わるようであれば、初めから有料講座を観て対策を万全にした方が、金銭的にメリットがあるのではないでしょうか。
島下:YouTubeで学べば無料ではないか、という方もいらっしゃるでしょう。しかし、無料で提供されている動画は無料でしかなく、情報提供者に責任が発生しません。実際に、解説が間違っている動画も少なくありません。
私たちTeam SABOTENは、お金を頂くからには当然正しい内容の講座を販売しなければならないと考えています。そのために、実際に気象予報業務に従事した経験のある講師が授業を行い、その内容も日々精査しています。とはいえ、私たちもちょっとした豆知識についてはYouTubeで無料動画も配信しているので、ぜひご覧ください。講座の雰囲気がなんとなく伝わるのではと思います。
TVの天気予報では絶対に観られない気象動画【気象専門STREAM.】。気象の予測、解説、教育、システムのプロが集まった<Team SABOTEN>が気象防災はもちろん、気象予報士試験の学習用、専門気象解説、船舶、農業、バラエティーなど幅広く情報を発信中!キャラクターのお天気パロディーもあります。チーム3社<防災気象PRO(株)、(合)てんコロ.、Sunny ...
この記事をwww.youtube.com で読む >難関だからと気負わないで。最年少合格者は小6!
——お話を伺って、気象予報士が難しくも面白い資格であることが分かりました。実は、私も資格に興味が出てきました(笑)。佐々木:そう言っていただけると嬉しいです。
本日は、厳しい話も交えながら気象予報士の魅力についてお話してきました。しかし、気象予報士の最年少合格者は小学6年生で、しっかり勉強を積み重ねていける方であれば合格できる資格です。難関であるからとはじめから諦めず、ぜひ前向きにトライしていただければと思います。
島下:気象予報のことを勉強すると、今まで「何でだろう?」と思っていた現象に対して、根本から理解することができます。「なぜ週間天気予報はころころ変わるのか」とか、「なぜ降水確率0%でも雨が降ることがあるのか」などと疑問に思っている方も答えを見つけられるはずです。
本日お話したように、趣味のために気象予報士の勉強を始められる方もたくさんいらっしゃいます。難関だからと気負わずに、まずは趣味感覚で気軽に気象予報の世界に触れてみていただきたいです。
―皆さん、ありがとうございました!
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