高校生のお子さんの短期留学を検討中の方に向けて「まずは知っておきたいこと」をまとめました。また次男を約1週間の短期スポーツ留学をさせた母として、注意したほうがよいと思ったことも最後に載せておきましたので、参考にしていただければと思います。
高校生短期留学の計画/準備方法
短期留学の計画と準備5つのステップ
① 留学のおおまかな計画(行き先・時期・期間・目的)を親子で話し合う
② 情報収集をする
③ なるべく多くのエージェントに資料請求をし、比較・検討する
④ 数社の説明会や面談に参加しエージェントを決定
⑤ エージェントの指示に従って準備をスタートする
エージェントを利用しない場合
- 公的機関の留学支援を受けるケースでは、対象となるか条件を確認。一般的に書面審査・面接などがあり、事前にレポート等を提出するところも多い。情報を確認後、なるべく早くから「応募締め切り」に間に合うよう準備。
- 個人で手配をする場合は綿密な計画の作成が必要
ざっくり「短期留学」計画を立ててみる
まずは、親子で話しながら次のことを「ざっくり」決めていきましょう。- どこの国に行きたいか
- いつ、どれくらいの期間
- 海外で学びたいこと、やりたいこと
参考:留学先・留学国のおすすめ
参考:アメリカに強い留学エージェント
参考:カナダに強い留学エージェント
短期留学の準備はいつから?
「短期留学ってどうなのかな」と検討するところから実際に申込や手続きをすませ、現地に行くまで1年くらいかけるケースは珍しくありません。短期留学では、最低でも半年前にはおおまかな計画をたてエージェントを決定し、3ヶ月くらい前から渡航の具体的な手続きをすすめるケースが多いです。お子さんが留学したいと言い出したら、翌年の夏休みや春休みを念頭に置いて準備をスタートするといいかもしれません。
と、書いたものの、実はわが家で次男の短期留学を「え、行きたいの?」それならと調べ始めたのが出発予定から3ヶ月前でした。わたし自身も留学経験があり、英語もある程度は話せます。それでも3ヶ月は怒涛のように準備が大変でしたし、書類などギリギリで用意できたものもあります。少なくとも半年前から準備することをおすすめします。
高校生の短期留学でエージェントは利用すべきか
結論から言うと、初めての留学ではエージェントを利用したほうが安心です。
エージェントは詳細な資料をくれるほか、翻訳された書類や記入見本を配布してくれますし、手続きの代行もしてくれます。留学するために何から始めてよいのかわからない状態であれば、エージェントを上手に活用しましょう。
ただし、エージェント自体もいろいろあります。また「学校と滞在の手配はするが渡航は個人で」「現地でのサポートあり・なし」などプランもさまざまです。
エージェントを利用するのであれば、少なくとも2~3つから資料を取り寄せ、実際に担当者と面談するか説明会などに参加しましょう。エージェントの比較・検討は必須です。
最近は国や自治体による留学斡旋もありますし、学校が募集しているケースもあるでしょう。諸条件があるはずですが、対象になるのであれば、ぜひ、こうした公的な留学支援を使うことをおすすめします。
参考:留学エージェントおすすめ一覧
短期留学のメリット・デメリット
短期留学のメリット
- 外国語を学ぶ「必要性」がリアルにわかる
- 長期休暇を利用できる
- 費用が長期留学よりも安い
- 新しいチャレンジに自信がつく
- 英語力をはじめとした語学力の習得には結びつかないことが多い
- 短期ではできることは限定される
また期間が短いため、学校の休みを利用して海外経験が積める点もメリットですね。長期留学に比べると費用が安いのも、親としては助かる点です。
実際のところ、1週間の海外生活で学べることはそう多くはありません。しかし、留学の体験から「どれだけ得られるものがあるか」は本人次第です。
家族と離れて、言葉も生活環境も違う海外での経験を通じて、子どもに自信がつき、
- 新しいことに挑戦する
- 変化を受け入れ楽しむ気持ちが生まれる
- とにかく行動してみようと思う
- 失敗を恐れなくなる
もちろん短期留学でも、うまくなじめなかった結果、「良い思い出」より「大変だった記憶」が残る場合もあります。
留学を意義あるものに出来るかどうかは、本人のやる気と運次第なことも頭に入れておきましょう。
高校生向け短期留学の滞在方法
短期留学では、主に次のような滞在方法があります。
- 寮
- ホームステイ
- キャンプ形式
- コンドミニアム
ホームステイは一般家庭に家族の一員として迎えられ、一緒に過ごしながらカリキュラムを行うスクールなどに通学します。
キャンプ形式はコテージなどに複数で宿泊するタイプ、また高校生や大学生を対象にしているものではコンドミニアムを活用するパターンもあります。
短期留学「寮かホームステイか」どちらがいい?
よく「寮とホームステイ、どちらがいいのか?」という質問を見かけます。それぞれメリット・デメリットがあります。寮は個室もありますが2人部屋が一般的で、1日3食ついており(もちろん、食費も留学費用に含まれているわけですが)、カフェテリアでビュッフェ形式が多いです。
消灯時間などは決められている場合が多いものの、実際にはかなり自由な滞在となるでしょう。ただし、同室の子と気が合わない・生活リズムが合わないとストレスになりますし、日本人同士になってしまうと結局「部屋に戻ると日本にいるのと同じ」環境になってしまう点がネックです。
いっぽうでホームステイは一般家庭に入りますから、家族みんなとうまくやっていく必要があります。しかし、そうした「家庭で過ごす時間」こそ、生の英語を覚えるチャンスでもあり、また休日にバックヤードでBBQをしたり外食に連れていってもらったり、スーパーマーケットで一緒に買物をし料理を作るといった経験もできます。家族との交流は大変かもしれませんが、部屋は基本的に「ひとり」ですから、夜にはプライベートな時間を確保できます。
ホームステイはファミリーによって、生活スタイルが大きく違います。ルールがきっちり決められていて、短期留学といえども「お皿洗い当番」が回ってくるところもありますし、逆にキッチンを勝手に使ってはいけない家もあります。少々勝手が違うことがあっても「こういうもの」と受け入れる姿勢も必要になります。
留学ではどのような滞在方法を選んでも「子どもがうまくなじめない」ケースは少なからずあります。短期の場合は、変更する間もなく帰国になることがほとんどですから、「今ある現状でいかに有意義に楽しく過ごすか」を前向きに考え行動することを「身を持って体験する」ことも、ある意味、留学で学べることだと言えるのではないでしょうか。
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留学の費用は多めに考えておく
たとえば、アメリカのサマーキャンプに参加しようとして公式サイトを見ると、1週間で500ドルといった表記がされています。しかし、当然ながら飛行機代もかかりますし、保険加入など他にもさまざまな費用がかかります。参考:留学費用
エージェントに申し込めば、全体的な概算を知らせてくれますが、これで安心しないでください!!!
あっという間に円安になったように、為替の問題がある以上は常に留学費用は変動します。
私が次男のために申込をした時点で聞いた「飛行機代」もそうでした。「あくまで現時点の計算」とは説明されていたものの、まさか、それから3ヶ月後には飛行機代が「倍」になるとは思ってもいませんでした。
燃油サーチャージも含めてとはいえ、倍ですよ、倍。たとえば「往復15万」と言われていたものが、入金する際には30万になっているのかもしれないのです!
子どもがいないところで、「なんでいきなり飛行機代が倍以上になってるんだ」と夫婦で呆然としていたっけ。
エージェントによっては、こうした費用はあえて提示せず、「本当に必要な費用」だけを提示することもあります。概算だけで「安いからこのエージェント」と決めるのではなく、自分で調べて詳細な明細を作成したほうが安心です(それでも思わぬ出費があると心構えしておくこと!)。
いずれにしても、留学プランを選ぶときには、記されている金額の少なくとも1.5倍はかかるつもりでいましょう。
費用を抑えたい方は、海外留学よりも低コストな国内留学も検討してみるといいかもしれません。
参考:国内留学とは?
なるべく本人に留学の手続きや準備をやらせる
留学の手続きでは、山のような資料と書類が送られてくるでしょう。子どもではわからないだろうと親が先回りしてやってしまいがちですが、必ず子ども自身にも資料を読ませて、書類も本人に記入させましょう。留学するのは親ではなく、子どもです。責任感を持たせるためにも、すべてを親が手続きするのは望ましくありません。
「そうはいっても、大切な書類だし心配」という場合は、エージェント等に相談しながら、「これを間違えるとまずい」ポイントは確実につぶし、チェックしてもらうと安心です。
たとえば入国審査や出国手続きでは、必要書類が1つでも欠けていればトラブルになります。こうした部分を子どもに一任するのは心配ですから、わたしも手伝いながらファイルにまとめてチェックリストも添付しました。
実際のところ、親が結果的にやらざるを得ない場面も多いかもしれません。それでも、親だけでやってしまうのは極力避け、面倒でも必ず「子どもと一緒に」やりましょう!
目標より「やってみたいこと」を具体的に考える
留学を意義あるものにするためには、目標を立てる必要があります。そうは言っても、まだまだ視野の狭い子どものこと。しかも短期留学となれば、壮大な目標をたてても達成が難しいかもしれません。
それに、子どもがプレッシャーを感じてしまうと、直前になって「行きたくない」と言い出す可能性もあります。
子どもがナーバスになるのを防ぐためには、子ども自身の意見を聞き、「行ってみたい国、そこでやってみたいこと、見てみたいこと」を書き出してみるのがおすすめです。たとえば……
- ホームステイをして日本料理を紹介する
- 本場のアメフトを見てみる
- いろいろな国の子と一緒にキャンプをする
- 海外の大学生活を見てみたい(将来留学したい)
何かひとつ、子どもが「絶対にやってみたいこと」があれば、プレッシャーを感じたとしても「やっぱり行きたい!」につながりやすいですよ。
スマホの利用について
最近では多くの子どもがスマホを持っています。しかし、その使い方についてはよくよく話し合っておく必要があります。たとえば、最近の翻訳アプリは優秀ですが、常にスマホの翻訳でコミュニケーションをとるのでは(とらないよりはマシですが)意味がありません。短期で外国語を完璧に習得するのは難しいとしても、話そうとする努力は必要。海外に行く意味をよく理解させて、必要な時以外はスマホ翻訳を使わないようにさせましょう。
とはいえ、スマホがまったく悪いわけでもありません。たとえばですが、親しくなった子とSNSでつながれる便利さもあるわけです。
こんなふうに、メリット/デメリットの両面があるツールだからこそ、「どう使うか」を行く前に話し合っておきましょう。(中高生ともなれば、親の話なんぞ「はいはい」とスルーされてしまうかもしれませんが、大金を払って留学させるのは親である私たち。「親が口を出すのは当たり前」くらいのスタンスでいいと個人的には思います)
ちなみに、キャリアにもよりますが、海外で使用できるよう申込みが必要な場合もあります。場合によっては高額な請求が発生する可能性もあるので、子どものスマホがどういう契約になっているのか、必ず確認しましょう。
他の日本人との交流
短期でも長期でも常に留学では「日本人同士の交流」がポイントになります。せっかく海外に行ったのに結局、日本人同士で固まっていては国際感覚が磨かれるどころの話ではありません。日本人がいることはとても心強いのですが、なるべくいろいろな人と交わるように、前述のスマホ利用と同じで「なぜ留学をするのか」「何をしに海外へ行くのか」を子どもに理解させることが大切です。
短期で「語学力がつく」わけではないと認識しておく
そもそも1ヶ月で英語がマスターできるわけがありません。親としては思い切って海外に行かせたのですから、得るものも多かろうと期待したくもなりますが、こと語学力に関しては「短期では身につかない」と認識しておきましょう。
参考:高校生向け英語塾
短期のスポーツサマーキャンプ留学をさせてみて思ったこと
2022年の夏休みに、次男はわずか1週間ですがスポーツ留学をしました。当時はまだパンデミックの影響が残っており、留学先でもPCR検査を受けなくてはならなかったり、ワクチン接種証明書の英語版を提出しなくてはならなかったり、いろいろと大変な時期でした。
留学するのはママじゃない「あなたです!」
わたしがまず驚いたのは、留学前の準備段階です。多くの書類には子どもや親のサインが必要です。ところがいざサインと言うと、紙にブロック体のローマ字で名前を書こうとする。英文書にサインといえば、さらさら~っと筆記体なのが当然だと思っているわたしは「は?筆記体でしょーが!」と叫ぶと、次男はポカンとして
「筆記体、ちゃんと習ったことない」
と言うではありませんか。よくよく聞くと、どうやらゆとり教育の導入前後から英語は筆記体が必修ではないのですね。昔は赤い線の入った英語用ノートに筆記体を練習したものですが、今の子たちはきちんと学んでいないので書けません。
筆記体が書けなくても英語力として問題があるわけではありませんし、実際問題として今やエアメールではなく、パソコンのメールやSNSを使うので、筆記体じたいに必要性はないのでしょう。
それにしても、サインは筆記体だろー!とわたしはどうしても譲れずに、名前だけでも覚えろと厳命しましたよ(ちなみにブロック体のサインでまったく問題ありません)。
その上、夫まで『もう筆記体とか忘れちゃった、ママ見本書いて』って。んもう、なんなの!
そんなこんなで、いざパッキングを始めるとうちにあったスーツケースでは容量が足りず。結局、大慌てでスーツケースを購入しました(こうしてお金がどんどん出ていく……)。そして本人にパッキングさせようとすると、これまたもう適当で、見ていてイライラしまくりです。
わたしがやったほうがよほど早いのに!と思いながら「Tシャツをくるくる巻いてクッションがわりにするといいよ」だの「ロストバゲージといって、到着しても空港で荷物が出てこないことがあるの、その場合には~~~」といった説明もしなくてはならず。ふんふんとうなずくだけの次男に
「あんたが留学するんでしょーーがっ!」
と怒鳴りそうになったことは幾度としれず。
しかし、まぁなんとかなるものです。何より、わたしが留学していた時代との大きな違いは「スマホの存在」です。
空港で見送ったあと、しばらくすると乗り継ぎの空港でさっそく撮影した写真が送られてきました。
普通にLINEもくるので、正直、海外に行かせたというより修学旅行で沖縄に行ったくらいの感覚になりました。
赤と青のしましまのついたエアメールや、コレクトコールのかけ方を学んだ留学時代を過ごしたわたしにとっては、隔世の感がありましたね。
インターネットのおかげで「世界はつながっている。ネット上には(一部の国は違うにしても)国境はない」と言われる意味を、肌で感じた瞬間でした。
心配しどおしの母と違い、子どもは時に驚き困惑しつつもしっかり海外生活を楽しんでいた様子。子どもの留学を通じて、母もまた新たに学ぶものがあり、子どもはとっくに親の手を離れて歩んでいるのだと改めて思いました。
短期留学で息子が得たものとは?「体験して感じること」
英語がうまくなったわけではありませんが、「英語が話せたらもっと楽しかったはず」と勉強に対する意識に変化がありました。と同時に「でもね、単語並べたら何とか通じるんだよね」と次男は言い、相手と親しくなるのには、たとえつたなくても「話してみよう」という気持ちが大事だとわかったようです。また、アカデミーにはアメリカ人だけでなく、世界中から留学生が集まっていましたが、それまでフランスもドイツもブラジルもメキシコも地理で学んだ外国でしかなかったのが「そこにも学生がいて暮らしがある」とリアルに感じたと言っていました。
スポーツ留学でしたから「同い年でプレイのレベルも同じくらいに見えたのに、実際に一緒にプレイするとパワーが全然違う、体つきが違うしプレイに対する考え方も違うんだ」とも言っていました。
見たり聞いたり読んだりするだけではわからない、体験したからこそ「感じること」。もしかしたら短期留学でもっとも大きな収穫は「やってみて、そして感じること」なのではないかと今は思います。
本当に意欲があれば留学のチャンスは作れる!まずは短期留学を検討しよう
留学はお金がないとできないと思うかもしれませんが、文部科学省による「トビタテ!留学JAPAN」や、東京都の「次世代リーダー育成道場」や埼玉県が行っている「埼玉初世界行き・奨学金制度」など自治体による支援もあります。留学の給付型奨学金制度は多くが大学や大学院生向けですが、こまめに探すと中高生対象の短期留学や交換留学の支援制度を行っているところは少なくありません。
「百聞は一見にしかず」と言いますね。
後世の人の創作と言われているようですが、続きがあるのをご存知でしたか?
「百見は一考に如かず」
百回見るより、一回自分自身で考えること。
「百考は一行に如かず」
百回考えるより、一回自分で行動することが大切。
行動してみなくてはわからないことがある。体験して感じることで変化が起きることがある。もし本人に意欲があるなら、率直に言えば金銭面の問題はあるものの、前述したような公的支援を利用するなど方法はないわけではありません。
今、留学させようかな、行きたいと言っているけどどうかな?と悩んでいるのであれば、まず、さまざまな資料を集めてみましょう。子どもの留学で親に必要なのは「とりあえずアクションを起こしてみる」行動力です!
やばい、間に合わない!というのもあった……