何やら仕事ができそうな印象のフリーランスエンジニアは、一体、どのように働いているのでしょうか?
わからないことは実際に聞いてみるのがいちばん。そこで、今回はフリーランスエンジニアとして働く塚本智明さんに、その現実と裏側についてうかがってきました!
「フリーランスは今年で終わり」⁉︎エンジニア歴10年目の現在は
―では、まず塚本さんの現在の仕事について教えて下さい。私は現在、ご縁のあったゲーム会社さんで、業務委託のサーバーサイドエンジニアとして月20日勤務しています。
請求書は出しているものの、確定申告は税理士に頼んでおり、自分で手を動かしているわけではないので、正直なところ、あまりフリーランス感はないですね。常駐先の準社員みたいな感じです。しかも、来年の1月から就職しようと思っているんですよ。
ーええっ!? それはなぜですか?
元々、フリーランスでいるのは2〜3年にしようと決めていたんです。今やっているものとはまったく別の仕事をしてみたいと思っていて。
ー別の仕事ですか? フリーランスで長期間継続して業務委託を受けているということは、クライアントからは評価されていると思うのですが……。
それはそうかもしれませんが、ひとつの会社に居続けると、どうしても考えが固くなってしまいます。それで、新しい開発手法や知識を取り入れるためにも、環境を変えようと思っています。
あと、もうひとつ。現在、携わっているゲーム業界ももちろん面白いし、すごくいいものだと思うんですが、個人的には、より人の役に立つものを作りたい、という気持ちがあるんです。なので今度は、そういったものを作る会社に就職したいと思っています。
茨城でアプリケーションエンジニアとして就職→東京へ
ーなるほど。それでは、そんな塚本さんの今までのキャリアを教えてください。私は大学を卒業して、まずは茨城で、医療機関の会計システムや電子カルテのアプリを作る会社に就職しました。そこではアプリケーションエンジニアとして、3年ほど勤務しました。
その後、アプリだけでなくウェブ開発にも興味が出てきたので、転職して東京に行くことにしました。
ー東京に行きたいと思ったきっかけは、やはり仕事が多いからでしょうか?
いや、単純に東京で遊ぶ機会が多かったので、自分も東京に住みたかったからですね。ガジェットが好きなので、「電子機器のお店が多い秋葉原に住みたい」という希望もありました。
ー東京に移ってからはどのようなお仕事をされていたんですか?
主に、企業向けのphpを使った業務システム開発をしていました。この会社の勤務スタイルは、客先常駐と自社案件がほぼ半々。人によってはずっと客先、みたいな方もいましたが、僕は両方経験しました。(最初に就職した)茨城時代はずっと自社だったので、客先派遣を通し、さまざまな会社の文化を学べました。
また、専門分野に関しても、サーバーの構築からアプリの開発まで一貫して行う会社だったので、サーバー向けの知識を得ることができました。ウェブ開発に関しては素人だったんですが、ここで基礎から学べた感じです。
ー東京の会社ではトータルで何年務められたんですか?
5年ですね。茨城時代と合わせて、約8年会社員として務め、2019年1月にフリーになりました。なので、エンジニア歴は10年といったところです。
やりがいは「ぼくの考えた最強の開発環境」を整えること
ーそんな塚本さんが、仕事に「やりがい」を感じるのはどんなときですか?あくまでも個人的な体験であって、全員がそう感じるのかは分かりませんが、単純に、作ったものが動くのが楽しいんですよね。それから、作る過程において改善点を見つけて、試行錯誤をするのも好きです。
たとえば、テキストエディター(開発ツール)を自分専用にカスタマイズしたり、便利なツールを見つけてチーム内に共有したり……。いわゆる「ぼくの考えた最強の開発環境」を整えるのが好きなんです。それこそ、「自分に合う最高のマウスとキーボードを探す」とかでも、やりがいを感じますね。
ー凝り性なんですね。
うーん、というよりは、エンジニアって、融通の効く範囲が広いんです。エンジニアの仕事には「ルール」という縛りが少なく、できたものがよければ途中経過は問われないし、手法は人の数だけあっていい。
もちろん、「後から修正しやすい」とか「他の人が見やすい」ようにしておこう、という共通認識はあるんですが、それさえ守れば、ツールを最適化して、自分なりの開発環境や最短経路を作れるんです。ある意味、究極の自己満足かもしれませんが、「こんなに便利にできたぜ!」という楽しさがあります。
余談になりますが、エンジニアには、他人の書いたプログラムを見てレビューをしたり、情報を共有したり、という文化があります。人の書いたプログラムを覗いて色々考えるのも楽しいですよ。
ー「プロセスを楽しめる」資質は、まさにエンジニア向きと言われますよね。逆に、そこを楽しめないと、エンジニアには向いていないと聞きますが……。
確かに、以前勤めていた会社では、そこで悩む人が多かった印象があります。「何が楽しいかわからない」とか「やりがいがない」と言って辞める人が多かったですね。
一般的に「やりがい」とされる部分って、たとえば、「お客さんの喜ぶ顔が見たい」とかが多いですよね。でも、エンジニアの仕事をしていると、お客さんに嫌な顔をされたり、文句を言われたりすることもあるじゃないですか。
ーそれがひどくなると、いわゆる「デスマーチ」とか「炎上」と言われる案件になってくるんですよね。
そうです。エンジニアも必死で働いているので、そういう案件が続くと、心が折れてしまいます。あとは、会社によっては、そもそもお客さんの顔が見えないケースもあって。
たとえば他のメーカーの下請けで開発をするケースや、客先とは営業がやりとりをする体制になっており、エンジニアは直接顔を合わせない、といった場合です。そうすると、お客さんの喜ぶ顔は見ることができない。でも、クレームはしっかり伝えられるので、意欲の低下に繋がるんじゃないかと思います。
ーいいことは伝わらないのに、クレームだけは降りてくる……。確かに、それはつらそうです。その点、塚本さんは大丈夫なんですか?
気にならないわけじゃないけど、モチベーションには直結しないので、大丈夫ですね。これが、「好きじゃないけどとりあえず働きます」みたいな姿勢で働いていたら、相当つらい仕事だったかもしれません。
総括すると、ものづくりをしているだけで楽しいと思える人や、自分が作ったものを使ってもらえたり、見てもらえるだけで嬉しいって人がエンジニアに向いていると思います。自分の書いたプログラムが世界のどこかで使ってもらえるのって、すごく嬉しいことですよ。
パソコン=オタク、からアドバンテージへ
ー塚本さんはどんな子ども時代を過ごしていたんですか?僕は愛知県出身なのですが、小学生の頃から家にパソコンがあり、幼いころからインターネットに親しんでいました。その影響か、中高生になってからは自分でHTMLを書いてホームページを公開したり、RPGツクールでゲームを作ったりしはじめました。
それから、当時はflashムービーが流行ってたので、自分で作って内輪で友達に見せたりしていました。そうやって、自分で作ったものが形になる楽しさを感じた経験が、今につながっているのかもしれません。というか、当時から「将来もきっとこういうことしてるんだろうな」って確信がありました(笑)。
ー小学生時代からパソコンがあるなんて、当時からするとかなり早かったイメージがあります。ご家庭が教育熱心だったんですか?
いや、そんなに熱心だったという感覚はないです。塾とか予備校には普通に通ってましたが……。むしろ、インターネットにハマって夜遅くまで掲示板やチャットに入り浸っていたので、よく怒られていました。
当時はどうしてもパソコン=オタクみたいな風潮があったので、休日どこにも行かずに1日中パソコンを触っていた僕は、親からも変な目で見られていたと思います。
ーその後は、大学に進学されたんですか?
はい。情報理工学部という、コンピューターについて学ぶところに進学しました。その時点でいろいろ作っていたので、知っている知識を生かして、割と有利に学べたと思います。そういうアドバンテージは、正直今でも実感しています。
ーアドバンテージ、というと?
タイピングの速さや基礎知識などですね。たとえば最近は、未経験者を社内で教育してエンジニアに育てていく、という採用もありますが、最近の子って、iPhoneやタブレットには慣れているけど、Windowsのことを知らないというケースもあるんです。
極端なことを言うと、「Ctrl+C」でコピーといったショートカットキー知らないで入ってくる人もいます。でも、そんなの「当たり前の知識」だから、誰も教えてくれない。アプリやソフトの使い方、セオリーを知っている、というのはそれだけで大きいんです。
ーなるほど! 若い人たちがWindowsの知識が足りていないというのは意外でした。
あと、意外とエンジニアにはパソコンを触るのがつらいって人が多いんです。昔からパソコンを使っていたので、「パソコンが好き」というのは大きなアドバンテージでしたね。
ー塚本さんは好きが高じてエンジニアになったわけですね。
そうですね。あとは暑がりなので、クーラーの効いた部屋で働きたいという希望もありました。とはいえエンジニアになっても客先回りがあるんで、実際は外を歩くんですけど(笑)、当時はそんなこと考えもしなかったので。
趣味の時間でもプログラミング。「便利な言語に頼らない」ストイックさ
ーちなみに塚本さんは、エンジニアのスキルを身につけるために、どのような勉強をしましたか?ほぼ業務と独学です。新卒の頃に、会社から補助をいただいてスクールに行ったのですが、就職前から自分で調べたり作ったりしていたので、知ってることばかりだった気がします。
あとは、就職してから本を買って読むようになりましたが、それまでは基本的にインターネットで調べていました。最近だと、仕事によっては新しい知識が必要になるので、本を1冊買って勉強してから臨むようにしています。
ーエンジニアになりたい人へのおすすめの書籍などはありますか?
どんなエンジニアになりたいか、どんな言語を扱うかによって変わるので、一概には言えませんが……。ひと通りコードを書いて動かせるようになったら「リーダブルコード」を読むといいと思います。
美しいコードとはどういうものかを実践的に教えてくれるので、自分のコードの改善に役立ちます。初心者だとどうしても、自分のコードのどこが悪いのかがわからないので。
リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)
Amazon.co.jp: リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice) : Dustin Boswell, Trevor Foucher, 須藤 功平, 角 征典: 本
この記事をwww.amazon.co.jp で読む >ーフリーランスエンジニアになって独立後、仕事の幅は広がりましたか?
広がると言うより、深くなっている感じですね。会社員時代は案件によって使う言語が違ったので、C言語やJava、phpなど、手広く書いていたんですが、現在はほぼRubyです。その中でいろいろなことをやっているという感じですね。
あとは、趣味で身内向けに自作のシューティングゲームやアクションゲーム、パズルゲームなどをJavaScriptで作っています。
ー詳しくない立場からすると、趣味でもプログラミングに取り組むきっかけが気になります。それは、JavaScriptを練習したいという気持ちから、なんでしょうか?
うーん、そういう気持ちはあまりないです。作りたいものが先にあって「今だとこうやって作るのが早そうだな、せっかくだからこれ使ってみるか」って感じですね。どうしても、「作ってみたい」が先にきちゃうんですよ。
ーあくまでも「やりたい」ベースなんですね。来年から就職されるそうですが、やってみたい仕事はありますか?
特にこれといったものはないですが、Rubyに頼りすぎるのはよくないのかなと思っているので、他の言語をもう少しやってみたいという気持ちがあります。
Rubyってすごくいい言語で、本当に便利だし、書くのが楽なんです。でも、その一方で「こんなに楽していいのかな」という気持ちもあって。便利すぎるものに頼っていると、自分がダメになるんじゃないかなという危機感がありますね。
ーストイック……! 逆に言えば、初心者にはおすすめの言語ということですね。
そうですね、Rubyはすごくとっつきやすいので、初心者の方はそこから入るのもありだと思います。
プログラミング言語を擬人化してるサイトもあるので、初心者の方はそういうキャラを見てるとなんとなく特性がわかっておもしろいかもしれません。
人の数だけ正解がある!自分だけの最適解を見つけよう
ー今日のお話を聞いて、「エンジニア」といっても働き方はいろいろあるのだなと感じました。自分の働き方だと、正直あんまりフリー感はないんですよね。もしちゃんとフリーでやるなら、ポートフォリオを作ったり、SNSで顔出しをするなどの活動が必要になってくるのかも。特にいまはコロナ禍で、勉強会など人と顔を合わせる機会が減ってしまったので、自分でしっかりアピールする必要があるかもしれません。
エンジニアとして働いていくならしっかり勉強をして、作る楽しさや人に使ってもらううれしさを大事にして、技術を身につけていくのが大事だと思います。
ーでは最後に、エンジニアに興味のある人に向けてアドバイスをお願いします。
スマホやiPadに触れてるだけで、デジタルに詳しくなったと勘違いをしないほうがいいです。エンジニアに興味があるのでしたら、パソコンを買って、将来仕事で使うデジタル機器に慣れておいたほうが絶対にいいと思います。
エンジニアは難しい仕事ではなく、誰でもなれる職業です。システムを求められているかたちに落とし込んでいくだけで仕事になる。楽ではないけど、人の数だけ正解があるし、その中で「自分の最適解」を見つけるのが楽しい仕事だと思います。ぜひ、楽しんで働いてくれたらうれしいです!
—ありがとうございました!
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