(取材)「仕事はありますよ。たとえば…パンチラを消す作業好きですか?」歴10年の動画編集者が語る、フリーランス動画編集者のシゴト

(取材)「仕事はありますよ。たとえば…パンチラを消す作業好きですか?」歴10年の動画編集者が語る、フリーランス動画編集者のシゴト

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「インターネットの利用時間が、テレビの視聴時間を超えた」

総務省の情報通信政策研究所が2021年に行った発表は、メディア業界に激震をもたらしました。いわく、平日の「インターネット利用」時間が「テレビ(リアルタイム)視聴」を上回ったといい、これは調査を始めた2012年以降、初めてのことだったと言います。

出典:総務省情報通信政策研究所「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>」p. 3


また、その前年である2020年には「インターネット広告費」が「テレビメディア広告費」を上回る結果に。テレビよりもインターネットを利用する時間が長くなった分、企業が広告を出稿する先も、少しずつネットが主流になってきたのです。

このような背景からか、「これからは動画の時代」「個人クリエイターでも稼げる」という言説が叫ばれるようになりました。確かに、クラウドソーシングサイトなどを利用すれば個人でも仕事が受注でき、場合によってはインフルエンサーにもなれる現代において、「動画制作」や「動画編集」のスキルが価値を持つのは一定の事実でしょう。

これを受けて、最近ではフリーランスの動画編集者を目指せるスクールも多数登場しています。コロナ禍による雇用不安もあいまって、「場所に縛られず、自由に稼げる」イメージが先行しているように見えます。
しかし冷静に考えて、本当にフリーランス動画編集者は「稼げる」のでしょうか?

たとえばプログラミングスクールでは、「IT人材が不足している。これからはプログラミングスキルが『来る』!」という言説で受講生を集めています。ところがこれまでのインタビューの結果、「結論からいえば転職は可能だが、未経験スタートだと年収300万円〜が現実的で、『ボロい商売』とまでは言えない」ことなどが明らかになりました。
これを考えると、同じく「来る!」と言われているフリーランス動画編集者のシゴトも、実態は異なるのでは?

そんな疑問から、この記事では実際に映像ディレクターとしてフリーランスで活動している大口遼(おおぐち・りょう)さんを取材。

こだわらなければ、仕事はあると思いますよ。たとえば……パンチラを消す作業とか、好きですか?(笑)」

「ただ、それを超える仕事をしたくて、しかも稼ぎたいとなると、まず動画が好きじゃないと厳しいです。動画制作の本質って、『動画編集ツールの使い方』ではないので」

そう語る大口さんは、どのようにキャリアを積み、動画編集フリーランスとして独立されたのでしょうか?そして、映像ディレクターのリアルな生活は?くわしく伺いました。

大口遼さん(撮影:Kawashima Ayami)



(大口さんが制作された動画)


※取材はオンラインで実施しました

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「自分、普通かも」アイデンティティの喪失につながった、自由すぎる高校生活

『ギズモード・ジャパン』の映像担当をはじめ、フリーランスでさまざまな映像制作を行なっている大口さん。そんな大口さんが動画の世界と出会ったのは、高校生の頃でした。

「小中までは公立の学校に通っていました。とても規則が厳しかったので、当時は先生に反抗的な態度をとる子どもでした」

「ところが、進学した私立高校では雰囲気が一転。とにかくすべてが自由で、校則といえば『一人暮らし』と『バイク登校』が禁止されているだけ。染髪・ピアス・服装、どれも自由だったがゆえに、かえってアイデンティティを失ってしまったんです」

「そんな学校だから、同級生もとにかくユニーク。ガラケー(フィーチャーフォン)世代で、ネットもそんなに身近じゃなかったはずなのに、『なんでそんなに音楽に詳しいの!?』と驚くような奴らばっかりだった。自由な環境で頭角を表す同級生に、圧倒される一方でした」

「そんなときに出会ったのが動画でした。家にMacがあって、『iMovie』*でホームビデオを編集してみたのがきっかけです。動画の世界なら、現実では不可能なことが実現できる。そのおもしろさに、『やっと好きなものが見つかったな』と感じ、そのまま美大の映像学科に進学しました」
* Mac標準のビデオ編集ソフト

Mac標準のビデオ編集ソフト「iMovie」は、YouTuberなどが初めに使うことも多いアプリ。といっても、当時の大口さんが使っていた時代と比べ、随分使い勝手が変わったのだとか


大口さんいわく、進学先の大学は、「映画の撮り方を学ぶ学校ではなく、みずから考えて映画を制作していく学校だった」と言います。アウトプットも映像に限らず、なんでも認められていたのだとか。中には、「映画専攻」であるにもかかわらず映画を1本も撮らずに卒業していく人もいたと言うから驚きです。

「大学生活は楽しかったですね。好きなものを通して分かり合える、語り合えること自体が初めての体験でした。学校からカメラを借りて映画を撮ったり、先輩の映画製作の手伝いをしたり、充実した生活を送りました」

「美大の映画専攻ってふしぎな空間で、最初はみんな尖った服装をしてるんだけど(笑)、映画製作にハマればハマるほど『職人』のオーラが漂うようになって、服装も真っ黒になっていく。ほんと、おもしろかったですよ」

※イメージ画像です

広告代理店→テレビ局→ベンチャー→フリーへ。目まぐるしい人生は「流れですね」

充実した大学生活を送ったのちに大口さんは、友人の紹介でWeb広告の会社に就職します。3ヶ月ほどの下積み生活を経て、広告代理店のPM(プロジェクトマネージャー)へ転職。その後は有線テレビ局のAD(アシスタントディレクター)、ベンチャー企業の動画制作担当をそれぞれ2年ほど経験し、フリーランスとして独立されました。フリーとしては3年目になるといい、定期/不定期の仕事をバランスよく受注しながら、今では会社員以上の収入を得て暮らします。

「振り返ってみると本当にいろいろやってきたなって感じですけど、どれもいい勉強になりました。たとえば広告代理店では、紀行映像をつくるために図書館へ足を運んで、下調べを重ねる日々でした。ロケ撮影のサポートなんかもありましたね。こういう地味な作業は、今でもちょっと苦手です(笑)」

「その後に勤めたテレビ局では、業界標準規格についてイチから教わることができました。映像デザインの全般に携わり、カーニング(文字の配列)やモーショングラフィックなども学ばせてもらえて、当時のディレクターには足を向けて寝られません。能力が至らず怒られることも多かったですが、自分が独立できたのは、まず間違いなくここでの下積みがあったからでしょうね」

「そこからベンチャーに転職して、これはこれで、仕事の進め方がまったく違った。テレビはチームで映像を制作するけれども、ベンチャーでは担当者は僕一人ですからね。自由にできる分、責任も大きかったです。技術的な面を育ててくれたのがテレビ局だとしたら、フリーランサーとしてのマインドを育ててくれたのは、ベンチャー時代かもしれません」

大口さんのお話を伺う限り、どの職場もそれなりにハードな印象です。しかし大口さんはあくまでも朗らか。「流れに流れて、こんな感じのキャリアになっちゃいました(笑)」と謙虚な姿勢を崩しません。

「つらくても続けられたのは、ひとえに動画が好きだったからだと思います。動画には正解がなく、終わりの見えない探究を続けなければいけない。動画が好きじゃなきゃ、続けられない世界なんです」

(大口さんの作品集(抜粋)。さまざまなアプローチで動画を制作されていることがわかる。常に新たなアイディアを考え続ける継続力も仕事に必須なのだろう)





未経験からでもフリーランス動画編集者に?継続できるかは“愛”次第

さまざまな職場で貪欲にスキルを磨き、確かな実績を積み重ねてきた大口さんのキャリアストーリーを聞いていると、「動画制作・動画編集さえできれば、稼げる!」なんて簡単には言いづらいように思います。

実際のところ、未経験から動画クリエイターや動画編集者をめざすのは険しい道なのでしょうか?

「頭ごなしに『ムリ!』と言うつもりはないです。実際に、いま一緒に働いているメンバーの中には、歴1年未満にもかかわらず目を見張るようなセンスを持ち、飛び抜けた才能を発揮している方もいます

「今の若い人はテクノロジーが身近だし、スマホのカメラの進化もめざましい。こうした環境を考慮すると、単純な年功序列の業界ではなく、未経験からでも能力を発揮する余地があるとは思います」

進化のめざましいスマホカメラ。撮る「だけ」なら誰にでもできるからこそ、それ以上の価値をどう生み出すかが問われる


「ただ、『稼ぐ』となると、また事情が違ってくるかなと。先ほどもお話ししたとおり、動画って、好きじゃないとやってられない部分がけっこうあるんです。せっかくなので、もう少し詳しくご説明します」

①動画の撮影・編集作業は意外と地道

「まず、動画の撮影や編集って、地道な作業の繰り返しなんです。納得がいくまで何度も撮り直すことはザラだし、編集にしたって、ただ撮ったものを並べただけではうまく伝わらない。うまい人の真似をするだけでもダメで、たとえ有名YouTuberが使っているエフェクトでも、意図を理解せず真似しただけでは本来の効果を発揮しません」

「事前に綿密な情報収集や準備をして、必要な素材を漏れなく撮影し、細かいところまで作り込んでいく。一連のプロセスにはかなり根気がいるし、素材が撮りきれていなかった場合のごまかしスキルも必要になる(笑)。根性+臨機応変な対応力が求められる世界なんです」

「しかも、これらに取り組んでいると、1日の大半が動画に費やされることになります。この生活に耐えられるかどうかは、大いに『動画が好きかどうか』に左右されると思います」

②場所には縛られないが、時間はガッツリ縛られる

「それから、『場所に縛らず働ける!』も半分ウソ……というと表現が強すぎるかもしれませんが、かなり注釈が必要です」

「撮影は別として、動画の編集作業自体は、たしかにパソコンさえあればどこでも可能です。自宅だろうがハワイだろうが、仕事はできるでしょう」

「ただ、繰り返しになりますが、本気で動画を仕事にし始めると、1日の大半が動画関連の作業になる可能性が高い。たとえ場所が自由でも、仕事に時間を取られまくっていたら……。一般にイメージする『自由なライフスタイル』とは、ちょっと違ってくるんじゃないかなと思うんですね」

「実際に僕も、ずっと家にいるにもかかわらず、家のことが何一つできない日もたくさんあります(笑)。『自由』なイメージ先行でなんとなく動画クリエイターや動画編集者をめざしてしまうと、ギャップに苦しむことになるのではないでしょうか」

③仕事は、選ばなければ「ある」。やりたいかは別として。

「同じく『稼げる』も、ひとくちに言い切れない面があります」

「確かに、コンテンツの主流は動画になりつつあり、街中でも、タクシーの車内なんかでも動画広告が流れています。市場の拡大はデータにも表れているわけで、動画制作・動画編集スキルへのニーズが高まっていること自体は否定しません」

「でも、これって同時に、ただ動画を作っただけでは評価されづらい時代になったことも意味しているんです。動画という形式の希少価値が下がった、というか。しかも動画クリエイター・動画編集者になりたい方はどんどん参入してくるわけで、市場原理を考えると、1本あたりの単価は低下する一方だと思います」

「実際にクラウドソーシングサイトをのぞいてみると、撮影なしの編集のみ案件とはいえ、1本あたり3000円〜もザラ。時給に直すといくらなんだ?って思っちゃいますよね」


「しかも、動画=キラキラした仕事、でもありません。僕がテレビ局を辞めるときに、関係者の方が『大口くん、仕事あるけど、やる?』と声をかけてくださったんです。『どんな仕事ですか?』と聞いたら、アイドルのライブDVDからパンチラを消す仕事でした(笑)。友達は一時期、アダルトビデオにモザイクをかける仕事をしていましたよ」


「『どんな仕事でも、心を無にして取り組めます!』という人なら、何らかの仕事にはありつけるでしょう。でも、たいていの人はイメージとの相違を感じるはず。そのうえ思ったより稼げないとなると……。不確かなビジョンで参入するのは少し危険かもしれません」

「市場の流れはきているし、仕事は選ばなければ『ある』。だけど、『稼げる』とイコールではない。それが、動画制作・動画編集のリアルなんじゃないかなと思います」

誰でも撮れる。だからこそ自分が好きなものを見つけよう

地道で終わりのない作業に加え、場合によっては低い単価……。やはり、動画制作・動画編集のリアルはそう甘いものではないようです。

それでも動画クリエイターや動画編集者になりたいと考えるなら、どのような修練を積むとよいのでしょうか?大口さんにたずねると、「豊富なインプットと、大量のアウトプット」という答えが返ってきました。

「ここまでのお話でお分かりいただけたとおり、動画の制作・編集の本質は、カメラや編集ツールの使い方ではありません。映像編集を職業にするのであれば、千差万別のクライアントや案件に向き合うための豊富なインプットと、大量のアウトプットが必要になります」

「たしかに、YouTuberやTikTokではアマチュアのクリエイターが活動しています。これらのプラットフォームは、必ずしも凝った映像が評価される世界ではありません」

「だからといって、プロである動画クリエイター・動画編集者が、凝った映像は『いらない』と考えるのは早計。仕事としてチャレンジしたいなら、使える武器は多いに越したことはないからです」


「パソコンやスマホのスペックが上がり、動画を撮る“だけ”なら誰でもできるようになりました。だからこそ、今の時代は『自分は何を表現したいのか』がダイレクトに問われます。単純化して言うならば、技術ではなくセンスが問われる時代になったわけです」

「センスは、机に向かっているだけでは磨かれません。どうしても先細りになってしまうというか……。たとえばですが、映画や本、日常生活のあらゆるシーンから吸収し、大量にアウトプットする練習をコンスタントに続けるのが理想。編集ツールの使い方を知っているだけでは、1本3000円〜の世界から抜け出すのは難しいんじゃないかなと思います」

すでに相当の経験・実績をお持ちながら、あくまでも謙虚な大口さん。その姿勢からは、まさに「職人魂」を感じました。

大口さんは、インタビューを「動画づくりはプラモに似ている」というセリフで締めくくりました。

「プラモって、とりあえず組んで、継ぎ目を消して、塗装をして、風合いを足して……みたいな感じで作り上げていきますよね。それぞれの工程は地道だし、時間もかかる。正解がないから、終わりもない。それが合わない人もいるだろうけど、すごく楽しめる人もいる。動画づくりも、まさにそういう世界だと思うんです」

「今日はどちらかというと苦労話が多くなりましたが、動画が好きで、楽しめる人なら柔軟に仕事を得ていける、可能性にあふれた業界であることは確かです。リスクやデメリットは把握しつつ、それでも楽しめる自信があるなら、勇気を持って飛び込んでみてはいかがでしょうか。いつかともに働ける日が来たら、僕もまだまだ勉強中なので、気づきを共有する仲間になりましょう!」

フリーランス動画編集者志望の方へのアドバイス

個人的なアドバイスですが、動画編集のスクールに通う前に、まずは独学してみることをおすすめします。最近はYouTubeの無料講座にもかなりクオリティの高いものがあるので、そうしたものを参照しながら見よう見まねでやってみるのはいかがでしょうか。「無料でここまでは学べるけれど、ここから先は動画編集スクールに通った方がいいな」などと具体的なメリットを検討してから入会した方が、結果的に効率よく学べると思います。

そして、独学の際におすすめなのが「好きな音楽に合わせて映像を作ってみること」です。好きな音楽って、おのずと思い入れも強いじゃないですか。アーティストが伝えたいメッセージとか、「自分はこう見せたい!」というこだわり、「こういう雰囲気が好きだな」という個性みたいなものが見えてくると思うので、ぜひトライしてみてほしいですね。


ただ、どれだけ素敵な映像を作っても、たとえばYouTube上で公開して収益を得てしまうと著作権法違反になってしまいますので、各プラットフォームやレコード会社の規約をしっかり確認するようにしましょう。(基本的には、内にとどめておくほうがよいと思います!)
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大口さん、貴重なお話をありがとうございました!

参考:コエテコがおすすめする初心者向け動画編集スクール

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