今回ご紹介する「PlayCanvas(プレイキャンバス)」は、デスクトップとモバイルブラウザ向けに作られたWebGL/HTML5ゲームエンジンです。制作したコンテンツはブラウザ上で動き、閲覧してもらうのに特別なアプリは必要ありません。開発はブラウザ完結で、環境構築の必要はなし。コーディングに使うのは学習ハードルの低いJavaScriptなので、初心者エンジニアにもおすすめです。
「開発しやすい・作品を見せやすい・トレンド感がある」と三拍子揃ったゲームエンジン・PlayCanvasとはどのようなツールなのでしょうか?そして、実際の活用事例は?
日本独占代理店としてPlayCanvasの販売・普及促進を担うGMOグローバルサインホールディングス PlayCanvas運営事務局 事業責任者 津田 良太郎さんにお話を伺いました。
「指数関数的にユーザー数が増えている」メタバース市場とともに急成長
——PlayCanvasとはどのようなツールなのでしょうか。PlayCanvasはデスクトップとモバイルブラウザ向けに作られたWebGL/HTML5ゲームエンジンです。主な用途は3DゲームやAR/VRコンテンツの制作、インタラクティブ広告の制作などで、盛り上がりを見せるメタバース業界やリッチなコンテンツを求める広告業界から大いに注目されています。
PlayCanvasの最も大きな特長は、制作したコンテンツがブラウザ上で動作することです。
多くの3Dコンテンツは、何らかのアプリケーションをインストールしなければ体験できません。いっぽう、PlayCanvasで作ったコンテンツはブラウザさえあればデバイスを問わず動作します。作品のURLをQRコードに変換し、「これを読み込んでくださいね」とお願いするだけでユーザーに体験を届けられるので、広告コンテンツ等との相性も抜群です。
コンテンツだけでなく、開発環境もブラウザ上で完結します。インストール型の統合開発環境などは環境構築(開発に入る前の準備)だけでも大仕事で、「すっかり心が折れてしまった」という方も珍しくありません。対するPlayCanvasに必要なのはWebブラウザだけ。使用する言語も学習ハードルが低いJavaScriptなので、初心者にもおすすめです。
まとめると、開発側/ユーザー側ともに気軽に触れられ、しかもリッチなメタバース体験ができるゲームエンジン。それこそがPlayCanvasなのです。
——デバイス性能が上がり、3Dコンテンツへの期待も高まる中で、PlayCanvasへの近年の反響はいかがですか?
私たちGMOグローバルサインHDは2015年ごろよりPlayCanvasの独占代理店(日本国内)として同ソフトウェアの販売・普及活動を促進してきました。事業を開始して今年で7年目になりますが、PlayCanvasの売上・顧客数は年々拡大しており、ここ2〜3年は指数関数的な成長を遂げています。
拡大のきっかけになったのは、メタバース文脈の盛り上がりでした。
事業開始当初は、日本のマーケットがアプリ優位であったことからPlayCanvasへの関心もそれほど大きくはありませんでした。しかし、メタバースへの注目度が上がるにつれ、「ブラウザで気軽に体験できるメタバース」の開発ツールとして一気に注目を浴びるようになりました。ユーザーの中には「いろいろなツールを試した結果、PlayCanvasに辿り着いた」という方も少なくなく、PlayCanvasの未来に大きな手応えを感じています。
住宅模型や自宅IoT、メタバース文化祭まで
——PlayCanvasを活用した事例のうち、代表的なものをいくつか教えてください。たとえば、株式会社スーパーワークス様の3DCG建築模型作成サービス「ネットモケイ®︎」などはPlayCanvasの良さが最大限に生かされている事例です。
一般に注文住宅を建てる際には、メーカーとお客様が図面を見ながらイメージを擦り合わせていくそうです。ところが図面は平面なので、完成形を上手にイメージできないお客様も多いのだとか。とくにユニークな造形を取り入れた場合、お客様の要望を正しく掴みきれないことも多かったそうです。
そこでPlayCanvasを使い、住宅の3Dモデルを作成してみると、図面よりもずっと完成形がわかりやすくなったと。ブラウザさえあれば動き、しかも動作が軽い点についても「素晴らしい」と評価していただけました。
SUPERWORKS Inc. が3DCG建築模型作成サービス「ネットモケイ®」にPlayCanvasを導入!建築業界から見た、WebGL/PlayCanvasの強みとは?
https://playcanvas.jp/casestudy/superworks >
他には、スマートライト株式会社様が実践された「自宅IoT」の事例などもあります。この事例では、メタバース上に住宅を作り、VR住宅と現実世界の照明を連動させることで自宅IoTを実現されました。
ちなみにこの作品は、全12回にわたってPlayCanvasの活用法をレクチャーする「PlayCanvasAcademy」を通じて制作されたものです。ハイレベルな作品に、講座運営者として驚きを隠せませんでした。
この記事は、PlayCanvas Advent Calendar 2022とNode-RED Advent C...
https://digital-light.jp/2022/12/01/society-5-with-playcanvas-node-red-knx-1/ >
他にも驚いたものでは、高校生がみずから「PlayCanvasAcademy」に参加し、コロナで中止になった文化祭をメタバース空間で実現してくれた事例がありました。
この作品はシビックテックの学生開発コンテスト「Civictech Challenge Cup U-22」でオーディエンス賞を受賞されました。高校生とは思えない開発力に感銘を受けるとともに、PlayCanvasの可能性を強く感じました。
\ CCC U-22 /
— Code for Japan (@codeforjapan) October 9, 2021
接戦だったオーディエンス賞は文化祭・学園祭に特化し、技術的チャレンジもあった「モアイと鷲」さんです👏 #CCCu22 pic.twitter.com/FW7x0OmVDH
PlayCanvasの活用範囲は無限大ですが、我々はとくに2つのシーンでPlayCanvasが生きると考えています。
1つ目は、自由にカスタムできる3Dコンテンツが必要な場合です。
たとえば先ほどの「ネットモケイ®︎」では、壁の色や材質はもちろん、天井の高さなども自由に変更しながら住宅の完成形をイメージしてもらうことができました。
これと同じ発想で、バイクのカスタムを考えてもらったり、車のカラーリングを検討してもらったりするのにもPlayCanvasは最適です。
2つ目は、商品が高価で、おいそれと試供品を用意したり、プロトタイプを作れなかったりする場合です。これも先ほどご紹介した注文住宅のケースが代表的ですが、他にも、ジュエリーを3Dモデルで作成し、広告コンテンツとしてご利用いただいた事例などもあります。
——ただ3Dコンテンツを見せるのではなく、ユーザーが触ったり、カスタムしたりできる(インタラクティブな体験ができる)ところに強みがあるのですね。
まさにそうです。これまでのインタラクティブな広告はFlash(Adobe Flash)で作られてきました。しかしFlashは2020年末でサポートが終了してしまったため、これに代わるツールが求められていたんです。
PlayCanvasなら、近年ますますニーズが高まるEC(ネット通販)のコンテンツをさらにリッチにして購買意欲を高められますし、先述のとおり、カスタム性が求められるコンテンツにも適しています。
CMサイトが自社アドゲーム開発にPlayCanvasを採用!CMサイトの考える次世代のアドゲームとは?
https://playcanvas.jp/casestudy/cmsite >
インタラクティブコンテンツの中でももっとも驚いたのが、ゲームの体験版をPlayCanvasで作成された事例です。一般にゲームの体験版といえば、ゲームの一部を切り取ったソフトをダウンロードしてもらう作業が必要ですが、ごく簡略化したバージョンをPlayCanvasで作れば、よりカジュアルに体験版を楽しんでもらうことができます。
コンテンツに触れるハードルをどこまでも下げられるため、より多くの顧客にリーチできる可能性が高くなるのです。
ブラウザ完結、JavaScriptで開発できるゲームエンジン・PlayCanvasをぜひ体験してみて
——ユーザーにとってさまざまな魅力のあるPlayCanvasですが、開発側がPlayCanvasを選ぶメリットは?やはり、PlayCanvasで開発する最大のメリットは気軽さです。
コーディングはブラウザ上で行うため環境構築の必要がないですし、Google Documentのような感覚でチームメンバーとのペアプロやモブプロも行えます。完成した作品を見せるのも、URLを送るだけでOKです。
それこそ、就職活動に必要なポートフォリオ作りも非常に簡単だと思いますよ。私が就活生だった頃にPlayCanvasがあれば、あんなに苦労しなかったのにと思うくらいです(笑)。
また、PlayCanvasの開発言語はJavaScriptなので、一度学習してしまえばWebまわりの仕事に広く携われるチャンスがあります。その意味では、すでにエンジニアとして活躍されている方はもちろん、これからWeb業界に入っていきたいと考えているプログラミング初心者の方にも自信を持っておすすめできます。
付け加えると、最近はオンラインで3Dモデルを販売しているプラットフォームも増えてきました。こうした素材を利用すればリッチな3Dゲームを気軽に制作できますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。
——PlayCanvasを学ぶためのコンテンツや動画はあるのでしょうか?
PlayCanvasの活用方法については、テキストベースのチュートリアルを公開しているほか、YouTube上で動画のチュートリアルも提供しています。
PlayCanvas日本運営事務局により作成したチュートリアルをご紹介
https://playcanvas.jp/tutorial/ >
PlayCanvasは、デスクトップとモバイルブラウザ向けに作られたWebGL/HTML5ゲームエンジンです。 豊富な機能を揃えた3Dエンジンとクラウドホスティングされた開発環境およびツールセットを備えています。 PlayCanvasの用途は非常に多様で、ゲームだけでなく、製造、建築、インテリア、オンライン展示会など様々な業界で役立っています。 ...
https://www.youtube.com/@PlayCanvasJP >
基本的にはこちらで独学していただく形にはなりますが、不定期でハンズオンも実施しており、そちらでは質問なども受け付けておりますので、ぜひ公式Twitterもご確認ください。
【Tips】
— PlayCanvas運営事務局 (@playcanvasJP) December 23, 2022
タッチスクリーン対応したジョイスティック操作のチュートリアルを紹介!
スマホ操作の実装をチュートリアルとして公開・共有されたことで簡単に実装ができるようになります!#playcanvas #playcanvasnow pic.twitter.com/63iCV9C1MG
PlayCanvasはこれまでにない気軽さで3Dコンテンツを制作でき、活用範囲は無限大のゲームエンジンです。
個人や小規模事業者の方であれば無料プランでも充分ご活用いただけると思いますし、本格的に事業に活用される方でも、月額わずか2,580円(PERSONALプラン)〜8610円(ORGANIZATIONプラン)とかなりお安くなっています。
またPERSONALプラン、ORGANIZATIONプランともに無償テクニカルサポートをご利用いただけますので、ぜひご検討ください。
3Dゲームやアニメーションのほか自動車コンフィギュレーター、建築CADビューワー、オンライン展示会など幅広い業界に対応。環境構築は不要、クラウドで開発が完結するWebGLゲームエンジンです。
https://playcanvas.jp/ >
PlayCanvasへの登録は無料です。登録していただければパブリック作品もいろいろと見られますので、ぜひお気軽にトライしてみてくださいね!