大学入学共通テストへの「情報」導入による市場への影響 ~「プログラミング教育」業界、教育業界にどのような変化が生まれるのか~

大学入学共通テストへの「情報」導入による市場への影響 ~「プログラミング教育」業界、教育業界にどのような変化が生まれるのか~

教科「情報」が市場に与える影響とは

前回に引き続き、大学入学共通テストへの「情報」導入について触れたいと思います。
今回は「教育市場への影響」についてです。
実は2018年のコラムで、当時「情報」導入の検討段階だった頃に、市場への影響については触れておりますので、そちらのコラムを一部加筆修正して引用しておきます。

<以下、当時のコラムの要約>

「大学入試活用」が市場に与える影響の大きさ

実は教育ビジネスの市場を考える上で、「必修化」以上に市場を大きく左右するのは、「教科化」であり、さらには「高校・大学入試での導入」です。

以上の3つの段階を簡単に説明しますと、

「必修化」=授業内容に必ず組み込まれるようになる (経験したことある人が増え、興味を持つ人が増える)
「教科化」=授業内容に組み込まれ「成績評価」がつく (成績の良し悪しの判断がされ、習得度などが明確にわかる。さらには進路にも影響を与える可能性が生まれる)
「高校・大学入試での導入」=高校・大学入試の教科や採点項目中に組み込まれる
(その高校・大学に入るために必要。もしくは有利な条件が得られるため、ニーズが拡大し、同時に幼少期からの「準備」ニーズも高まっていく)
 
教育市場で考えると、
「入試への導入」>「教科化」>「必修化」の順に市場規模の拡大に影響を及ぼすということです。
 
これまでのプログラミング教育においては、プログラミング教育が「必修化」されただけでは、それはあくまで「ダンス」の必修化と同じで、あくまで「授業」として扱うようになるだけのレベルです。
しかし、今後のプログラミング教育は、必修化で留まるだけではなく「教科化(現在は高校において)」「大学入試への導入」にまで話が及んでいますので、更なる市場の成長が予想されるのです。
 
「教科化」や「大学入試への導入」レベルになりますと、文字通り「進学するため」「学歴確保のため」に習い事を始める層が増えます。現在で言えば「学習塾」や「予備校」の領域です。
これまで単なる趣味・嗜好品レベルでしかなかった習い事が、「成績を上げるため」「大学入試を有利にするため」に活用する学習塾に近い領域になってくることで、習い事としての優先順位が上がってくるのです
 
もちろん「大学入試への導入」といっても、今後プログラミング=「情報」が入試においてどの程度の比重になるかによって、市場の成長度合いは大きく変化します。
現在の「地学」や「倫理」くらいの扱いであれば、「受験対策」が大きな市場には成長しませんし、一方で「英語」くらいの扱いになっていけば、文字通りの受験対策として「学習塾・予備校」市場が成立しますので、大きなマーケットに成長します。
(現状では「情報」が、大学入試において、そこまで比重が大きくなる可能性は低いといえます。しかし、これから10年~20年単位で世の中の流れや教育が変わっていく中で、従来の5教科と同じ扱いで「情報」が組み込まれる可能性はあります。)
 
「大学入試への導入」となった場合、間違いなく多くの私立中高一貫校では対応が進みますし、市場内においても、より「情報」=プログラミング教育関連の情報が増えていき、市場が大きく成長していきます。さらには「趣味レベルの習い事」「勉強に役立つ」「将来に役立つ」程度ではなく、実際に「受験に直結する」となると習い事としての優先順位は確実に上がりますので、これもプログラミング教育市場にとって大きなプラスになることでしょう。

基本的に市場に与える影響自体は、当時の予測と変わることはありません。
しかし、当時の予測では
「情報が、大学入試において、そこまで比重が大きくなる可能性は低いといえます。しかし、これから10年~20年単位で世の中の流れや教育が変わっていく中で、従来の5教科と同じ扱いで「情報」が組み込まれる可能性はあります。」
という想定でしたが、現実には大学入試における比重が想定よりも大きくなっているため、市場規模に与える影響も当時の予測以上になるといえます。

「情報」塾や「情報」予備校などが誕生!?

よりわかりやすい表現をしますと、大学入学共通テストの「情報」導入、各大学の情報系学部学科の新設の流れの中で、「情報」塾や「情報」予備校などの概念が誕生する可能性があります。
これはもう従来の受験対策のための学習塾や予備校の領域です。
実際に比較的市場の大きい「英語」においては、特定の英語資格に特化した塾や、難関外国語大学に入学するための英語塾なども存在しています。
プログラミング教育においても、同様の動きが出てくる可能性が高くなります。
 
また、幼少期から情報の基本知識を学ばせ、楽しさを実感させるために、子ども向けプログラミング教室への需要も大きくなることは間違いありません
 
 
このように「プログラミング教育」業界にとって、市場拡大の起爆剤になりうる「情報」の大学共通テスト導入ですが、一方で「情報」=「従来のプログラミング教育」と言っていいのかという問題があります。
このあたりの「プログラミング教育」と「情報」の違い・位置づけについて次回のコラムでご説明したいと思います。
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