実は、論理的思考力とは、相手を思いやる優しさから生まれる能力なのです。
今回は、プログラミングで習得できる『論理的思考力』についてご紹介します。
論理的思考力の重要性|「察して」は通用しない?
日本は「察し」の社会と言われています。空気を読み、言葉がなくても相手の言いたいことを理解することが美徳とされ、コンテクスト(共通の概念)が高度なほど「美しいやりとり」と考えられています。たとえば、日本語の「すみません」は、英語で言う「Thank you」「I’m Sorry」「Excuse me」「No problem」など複数の意味を持っています。
例として、財布を落とした人と、それを拾って知らせた人がいたとしましょう。こんなやりとりでも、会話は成立するはずです。
「あの、すみません」(失礼します、財布を落とされましたよ)」
「あっ、すみません」(ありがとうございます、わざわざ教えていただき恐縮です)
「いやいや、すみません」(とんでもないです、こちらこそ突然声をかけてしまい、失礼いたしました)
よくある会話ですが、改めて見てみると不思議なやりとりですよね。
「察する能力」が重要視されているのは、かつての日本が「終身雇用」と言われる日本型の就業体制で働いていた時代の名残です。
「自分の上司は一生この人、会社の同僚は一生を共にする家族」という関係性のなかでは、「いちいち指示を出したり、わざわざ確認をしなくてもツーカーで分かりあえる人材」が評価されていました。
しかし、これからの社会では、地域はもちろん、国も人種も多様な人と関わり、協力しあって働かなければなりません。そのときに、自分の思い込んでいる常識で「察する」ことは、むしろ誤解や間違いが生じる原因になります。
そのような社会において必要なのは、「察する能力、不言実行の姿勢」ではなく、「論理的に思考して、正確に伝える能力」なのです。
機械はプログラミングの指示なしで動かない
論理的に思考するトレーニングとして非常に優秀な相手が、機械です。
機械は「曖昧さ」が苦手なので、人間なら言わなくても分かることが通用しません。
たとえばスマートフォンの音声ガイドやAIスピーカーと会話をしていて「かゆいところに手が届かない」と思ったことはないでしょうか?
「オーケーGoogle、△△駅から○○駅まで行きたい」
「道路が空いていれば15分です」
「道路?駅って言ってるのに!」
これは、 「△△駅から○○駅まで電車で行きたい」と正確に言わなかったため、車での移動経路をサジェストされてしまったのですね。
「曖昧な指示」には、このようなものもあります。
「台湾旅行に行きたい。空港からさほど遠くなくて、治安が悪くない程度に安い宿を知りたい」
この指示だけでは、人間でも「空港ってどこ?さほど遠くないってどれくらい?」「治安が悪くない、ってどういう基準?」「安い宿って、どれくらい?」と戸惑ってしまうはずです。
これを誤解のないよう伝えるには、たとえば、
「台北空港から5km範囲内、日本円で一泊8,000円前後、外貨で支払いができる宿をリストアップ」
という条件の明確化が必要です。
この、「誤解なく伝わるように、情報を整理する能力」が、論理的思考力です。
プログラミング教育における論理的思考力は「こうすれば、こうなる」を考える力
「どのように伝えれば、間違いなく伝わるのか」を思考することは、人間にしかできません。ロボットに
「あっちまで行って」
と指示してもダメで、
「時速6kmで走行し、機械のセンサが停止線を認識したらストップ」
というプログラムを組む必要があります。
場合によっては、さらに具体的に
「タイヤを毎秒○サイクル回転させ、センサの読み取り数値が☓☓になったら回転を停止」
という指示を出すことが必要なこともあるでしょう。
センサの数値を設定するためには、事前に「停止線の読み取り値」を実験で測定する必要があります。タイヤの回転数を計算するためには、タイヤの直径と円周を知っていなければなりません。
ここで、算数で習う「円周率」の知識が活きてくるのですね。
知識を総合的に使い、「こうすれば、こうなる」を考えることで、論理的思考力が鍛えられるのです。
プログラミング論理的思考まとめ
自分の考えを相手に誤解なく伝えるためには、自分のこだわりや常識から離れる必要があります。相手の立場に合わせて、論理的に情報を整理すること。その根本には、相手への思いやりがあります。
プログラミング学習は、コンピュータ相手の無機質なトレーニングではありません。学校で習ったことや生活のなかで感じたことをもとに、目的に応じて情報を伝える練習です。
これからの社会に必須な能力を、ぜひ伸ばしてあげたいですね。
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