「プログラミング教育」と「情報」 ~従来のプログラミング教育と教科「情報」との関係性~
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教科「情報」と「プログラミング教育」との違いは?
これまで当コラムでは、大学入学共通テストへの教科「情報」導入について触れてきましたが、今回は、これまでの「プログラミング教育」と教科「情報」との関係性についてお伝えしたいと思います。まず、現在の民間の習い事としての「プログラミング教育」の実態についてですが、
- ロボットプログラミング教室 (組み立てたロボットをプログラミングによって動かすことが主テーマ)
- プログラミング教室 (ゲームやアニメーションをプログラミングによって動かすことが主テーマ)
幼児・小学生に「プログラミングの楽しさ」を知ってもらう、学んでもらうために、主テーマは子どもが楽しめるものになっており、「遊びながら学べる」ことが多いように思います。
そして中高生向けのプログラミング教室においては、アニメーション・ゲーム・アプリ制作などを実践的なプログラミング言語を使用して、実際にコード入力する授業が多いようです。
こちらも「学生が楽しめる」「学生がやりたいこと」を主テーマにしており、使用するプログラミング言語などが高度化していると考えてよいでしょう。
このように現状の民間のプログラミング教育は、「プログラミング言語を使用して〇〇をつくる・動かす」が主テーマとなっており、「プログラマ・エンジニア」要素が強いのが実態といえます。
次に教科「情報」の学習内容についてですが、文科省が「情報」の指導要領を公開していますので、内容一部をこちらに挙げてみます。
※情報は「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」に分かれる
- 情報Ⅰで取り扱うテーマ
(2)コミュニケーションと情報デザイン
(3)コンピュータとプログラミング
(4)情報通信ネットワークとデータの活用
- 情報Ⅱで取り扱うテーマ
(2)コミュニケーションとコンテンツ
(3)情報とデータサイエンス
(4)情報システムとプログラミング
(5)情報と情報技術を活用した問題発見・解決の探究
これだけではイメージしにくいかと思いますので、内容のレベル感を理解していただくために、
まず「情報Ⅰ」の中から、単語的に従来のプログラミング教室と親和性が高いと思われる「コンピュータとプログラミング」の教科書に含まれているキーワードの一部を以下に記載します。
「演算の仕組み」「AND・OR・NOT,真理値表」「計算誤差」「計測・制御」「アクチュエータ」
「アルゴリズム」「フローチャート」「順次・分岐・反復,変数」「配列,乱数,関数,WebAPI」
「探索アルゴリズムの比較」「確定モデルと確率モデル」など
続いて情報Ⅱの「情報とデータサイエンス」の参考教科書に含まれているキーワードを記載します。
「大量のデータとデータベース」「ビッグデータ」「関係データベース」「データサイエンス」
「データクリーニング」「ワイドフォーマット」「データのモデリング」「回帰」「重回帰分析」「交互作用項」「残差分析」「主成分」「特徴量」「k- 近傍法」「分類木」「クラスタリング」など
いかがでしょうか?
上記の主要な学習テーマのキーワードを羅列しただけでも、「従来のプログラミング教室」と「情報」との違い、教科「情報」が受験教科としてどの程度の内容を求めているのかが少しおわかりいただけるかと思います。
教科「情報」の高み
教科「情報」の学習内容を見ていると、従来のプログラミング教室業界の「プログラミング教育」の学習内容や主な領域よりも、むしろ「資格試験」としての「基本情報技術者」や「ITパスポート」などの学習内容の方が近しい印象です。また「プログラミング」だけでなく、「データサイエンス」領域なども重要視されていることがわかります。
プログラミング教室に通学する児童の中には「勉強は嫌いだけどプログラミングは好き」という子ども達もいますが、「プログラミング教室が好きだから、教科『情報』に有利か?」と言われると、そもそも学ぶ内容の領域やボリューム感が違い過ぎて、判断できないのが実態だと思います。
従来の教科で例えるならば、
「そろばんや公文が得意だから、数学が、代数や幾何が得意になるか?」
「子ども英会話スピーチが得意だから、大学入試の英語が得意になるか?」
ということなのかもしれません。
どれだけ計算が得意だとしても、算数数学は他の様々な単元が存在する。
どれだけ英会話が得意だったとしても、英語には文法や長文読解が存在する。
要するに全くつながりがないわけではないが…ということです。
プログラミング教室のこれから
このように教科「情報」にとって、従来のプログラミング教室は「幼少期における学びの基礎」としての価値があることは間違いありません。しかし、「プログラミング教室に通っていれば、教科『情報』対策に即役立ちます!」というのは、少し行き過ぎた表現になってしまう危険性があるかもしれません。今後、従来のプログラミング教室の提供する教育内容は、「あくまで幼少期のプログラミングの楽しさを体験してもらうためのもの」と割り切るのか、それとも「最終的に教科情報にもつながる内容を幼少期から段階的に学ばせていくもの」という進化をしていくのかで、大きく分かれていくかと思います。
教科「情報」がどの程度、入試・大学に影響を与えるかは未知数ですが、プログラミング教室のあり方も、それに伴って大きな変化が生まれてくるかもしれません。
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