そこでこの記事では、ITパスポートの類似資格5つについて説明するとともに、ITパスポートと何が違うのかを解説。そして、IT初心者におすすめの資格は何なのかについても説明していきます。
そもそもITパスポートとは
ITパスポートとは、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施している国家試験の1つで、合格するとITの基礎的な知識を身につけていることを証明できる資格です。上位資格として「基本情報技術者」や「応用情報技術者」などがあります。引用:独立行政法人 情報処理推進機構 試験区分一覧
受験資格は特に設けられていないため、小学生~社会人まで幅広い年代の方が受験しています。合格率は50%前後で推移しているため、IT初心者でも勉強すれば十分合格可能!
企業活動やIT技術開発、システムなどITに関することを広く浅く問われるのが特徴です。
項目 |
内容 |
受験者数 |
約23万人(2022年度) |
合格率 |
51.6%(2022年度) |
試験方式 |
CBT方式 |
出題範囲 |
テクノロジ系:主に企業活動や経営戦略に関する知識 マネジメント系:技術開発やプロジェクトマネジメント、サービスマネジメントに関する知識 ストラテジ系:IT技術の基本的な理論やシステムなどに関する知識 |
証明できること |
ITの基礎知識を身につけている |
どんな人に向いているか |
全ての社会人 |
ITパスポートについてもっと知りたい方は、こちらの記事で解説しているので参考にしてください。
関連記事:ITパスポート試験の難易度は?合格率から効率の良い勉強方法まで徹底解説!
ITパスポートの類似資格5選!
ITパスポートと比較されることの多い類似資格を5つ紹介します。- 情報セキュリティマネジメント
- MOS
- G検定
- 日商PC検定
- P検
情報セキュリティマネジメント
情報セキュリティマネジメントはITパスポートと同じく、IPAが実施している国家試験の1つです。主に、情報セキュリティの基礎知識が問われます。受験資格は特に設けられていないので、受験したいと思った方は全員申し込み可能です。
合格率は56.2%(2022年度)と高く、そこまで難しい試験ではないと言えるでしょう。
合格すると、情報セキュリティ管理の知識やスキルを身につけていることが証明できます。
項目 |
内容 |
受験者数 |
約2万8千人(2022年度) |
合格率 |
56.2%(2022年度) |
試験方式 |
CBT方式 |
出題範囲 |
<科目A> 重点分野:情報セキュリティの全般知識、管理、対策、法規について 関連分野:テクノロジ、マネジメント、ストラテジ <科目B> 情報資産管理、リスクアセスメント、IT利用における情報セキュリティ確保、委託先管理、情報セキュリティ教育・訓練などの事例をもとに出題 |
証明できること |
情報セキュリティ管理の知識やスキルを身につけている |
どんな人に向いているか |
・ITの安全な利活用を推進する方 ・業務で個人情報を扱う全ての方 など |
情報処理推進機構 情報セキュリティマネジメント試験 出題内容
ITパスポートと情報セキュリティマネジメントの違い
ITパスポートと情報セキュリティマネジメントは両方とも社会人として身につけておきたいIT知識を学べる資格ですが、試験で出題される内容が異なります。ITパスポートはIT技術を活かしたサービス(ICカード、POSシステムなど)の特徴、システム開発の流れと考え方、プログラミングの種類と特徴など、ITに関する知識を網羅的に問われます。
しかし、情報セキュリティマネジメントは「セキュリティ」「マネジメント」と資格名につく通り、情報セキュリティの脆弱性、サイバー攻撃の手法、情報資産、不正アクセス対策、アクセス管理、個人情報保護法など、「セキュリティ」と「マネジメント」に重きを置いた試験内容となっています。
ITパスポートと試験範囲が同じ部分もありますが、ITパスポートの方が出題範囲が広いです。「IT関連の仕事に携わったことがない」「ITってなんだろう」という方はITパスポートから受験するのが無難といえるでしょう。
MOS
MOS(Microsoft Office Specialist)はMicrosoft社が認定している試験で、合格するとMicrosoft社のOffice製品を使えることが証明できます。試験科目にはWord、Excel、PowerPoint、Access、Outlookがあり、各バージョンごとに分かれています。試験は実際にパソコンを操作しながら課題に答えていかなければなりません。Wordであれば文書作成はもちろん、表の作成や図・テキストボックスの挿入と書式の設定などが課題として出題されます。Excelであれば数式や関数を使った演算をしたり、グラフを作成したりと、実践的な試験となっています。
受験資格はどのレベルにも特に設けられてないため、一般レベルに合格せずに、上級レベルを受験することも可能です。
項目 |
内容 |
受験者数 |
累計500万人以上(2023年9月現在) |
合格率 |
非公開(一般レベル:80%、上級レベル:60%といわれている) |
試験方式 |
CBT方式(全国一斉試験・随時試験) |
出題範囲 |
選んだ科目による <Word> ・Word 2019(一般レベル/上級レベル) ・Word 2016(一般レベル/上級レベル) <Excel> ・Excel 365(一般レベル) ・Excel 2019(一般レベル/上級レベル) ・Excel 2016(一般レベル/上級レベル) <PowerPoint> ・PowerPoint 365(一般レベル) ・PowerPoint 2019(一般レベル) ・PowerPoint 2016(一般レベル) <Access> ・Access 2019(上級レベル) ・Access 2016(一般レベル) <Outlook> ・Outlook 2019(一般レベル) ・Outlook 2016(一般レベル) |
証明できること |
Microsof社製の各Officeソフトの操作ができる |
どんな人に向いているか |
・事務職 ・秘書 ・パソコンインストラクター など |
MOSについて詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:
ITパスポートとMOSの違い
ITパスポートとMOSは細かい違いを挙げるとキリがありません。一番大きな違いは、ITパスポートでは「ITに関する知識」が問われるのに対し、MOSでは「MicrosofのOffice製品を使いこなす技術」が問われます。
ITパスポートでは実技試験がなく、実務で役立つことは少ないかもしれません。しかし、経営戦略やIT管理の知識など、実務周りで役立つ知識が身につきます。また、IT専門用語が出てきても困らず、社内で円滑にコミュニケーションを取れるようになるでしょう。
一方、MOSはWordやExcel、PowerPointといった実務に直結するスキルが身につくので、資料作成やデータ集計を行う際には重宝されます。しかし、MicrosofのOffice製品の知識しか身につかないため「IT全般の知識を身につけたい」と考える方にはおすすめできません。
G検定
G検定(ジェネラリスト検定)とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、AI・ディープラーニングの活⽤リテラシー習得のための検定試験です。AIやディープラーニングについて幅広く問われますが、基礎的な内容から学べるので、IT初心者でも問題ありません。合格率は2022年度で約63%と比較的高いです。「AI」「ディープラーニング」と聞くと「理系でないと難しそう」と感じるかもしれませんが、文系・理系を問わず、幅広い職種、年齢の方が受験し、合格しています。
項目 |
内容 |
受験者数 |
約2万人(2022年度) |
合格率 |
約63%(2022年度) |
試験方式 |
オンライン受験(自宅受験) |
出題範囲 |
・人口知能(AI)とは ・人工知能をめぐる動向 ・人工知能分野の問題 ・機械学習の具体的手法 ・ディープラーニングの概要 ・ディープラーニングの手法 ・ディープラーニングの社会実装に向けて ・数理・統計 |
証明できること |
AI・ディープラーニングを活用するために必要な知識を身につけている |
どんな人に向いているか |
ビジネスマン全般 |
日本ディープラーニング協会 G検定とは
G検定について詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しています。
関連記事:G検定とはどんな資格試験?難易度や取得するメリットについても解説!
ITパスポートとG検定の違い
ITパスポートとG検定の決定的な違いは問われる領域です。ITパスポートはITやソフトウェア全般を問われるのに対し、G検定はAI(人工知能)やディープラーニング領域が問われます。ITパスポートでもAIついて少し触れますが、G検定ほど深掘りした内容は学習しません。
ITパスポートでは企業活動、法務、経営戦略、システム戦略・企画、システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術、マネジメント、システム監査、アルゴリズム、プログラミング、コンピュータシステム、情報デザイン、データベース、ネットワーク、セキュリティなど、ITに関することを広く浅く問われるのが特徴です。
一方、G検定ではAIの定義、AIの歴史、探索・推論、知識表現、機械学習・深層学習、AI分野の問題点、機械学習の具体的手法、ディープラーニングとは、ディープラーニングの手法、AIと社会、データの加工・分析・学習など、AIやディープラーニングに特化した内容が問われるのが特徴です。
日商PC検定
日商PC検定は商工会議所が実施するパソコン技能検定試験です。科目は文書作成(Word)、データ活用(Excel)、プレゼン資料作成(PowerPoint)に分かれており、それぞれの階級に応じて難易度が変化します。日商PCではビジネス文書の作成、売上データの表作成など、実務で使えるスキルが磨けるのに加えて、経営やビジネスマナーの知識も身につけることも可能です。項目 |
内容 |
受験者数 |
基礎級 Basic:2,237名 3級:19,222名 2級:6,626名 1級:49名 (2022年度) |
合格率 |
基礎級 Basic:74.3% 3級:82.2% 2級:69.0% 1級:16.3% (2022年度) |
試験方式 |
ネット試験 |
出題範囲 |
選んだ科目による <文書作成> 1級・2級・3級・Basic MicrosofのWordを使用し、正しいビジネス文書の作成や取り扱いができるか <データ活用> 1級・2級・3級・Basic MicrosofのExcelを使用し、表やグラフの作成、データ処理を行い、資料作成やデータ分析ができるか <プレゼン資料作成> 1級・2級・3級 MicrosofのPowerPointを使用し、目的に応じたプレゼン資料を作成できるか |
証明できること |
Word、Excel、PowerPointのソフトウェアを活用し、業務を進めていく力を証明 |
どんな人に向いているか |
Word、Excel、PowerPointのスキルを実務レベルで身につけたい方 |
商工会議所の検定試験 日商PC
日商PC検定についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:現場で役立つパソコンスキルを!日商PC検定3級とは
ITパスポートと日商PC検定の違い
ITパスポートは特定のソフトウェア・アプリケーションに特化した内容・技術を問われるのではなく、ITに関する知識を広く問われる試験です。そのため、ITパスポートを取得したからといって、必ずしも実務に役立つとは言えません。一方、日商PC検定は文書作成(Word)、データ活用(Excel)、プレゼン資料作成(PowerPoint)を目的に合わせて活用する力が問われる試験です。Word、Excel、PowerPointの使い方を理解していないと合格はできません。そのため、日商PC検定を取得すれば、取得した科目に応じてWord、Excel、PowerPointを実務レベルで使えることが証明できます。
P検
P検は正式名称をICTプロフィシエンシー検定試験といい、ICT(情報通信技術)を活用する能力と問題解決力を総合的に問う試験です。5級~1級まで階級があり、問われる内容は階級によって異なります。2級、準2級、3級、4級では実技試験もあるので、知識だけでなくワープロ(Word)や表(Excel)のスキルも磨けます。1級だけは2級合格後でないと受験できませんが、その他の級はどの級から受験してもOKです。なお、5級は無料で受験可能です。P検は中学校・高校で学ぶ範囲を網羅しており、学校ごとに受験も可能なため、中学生や高校生の受験者も多くいます。
項目 |
内容 |
受験者数 |
約1万人(P検タイピング受験者・P検アプリ受験者を除く、2022年度) |
合格率 |
<社会人(大学生を含む)> 4級:92.0% 3級:86.9% 準2級:85.7% 2級:65.0% 1級:45.2% <高校生・中学生(合格支援制度利用なし)> 4級:69.0% 3級:46.9% 準2級:47.6% 2級:45.6% <高校生・中学生(合格支援制度利用あり)> 4級:86.1% 3級:79.4% 準2級:79.7% |
試験方式 |
CBT方式 |
出題範囲 |
階級によって異なる <1級> ・情報セキュリティ管理 ・企業内ネットワーク構築 ・業務プロセス改革 ・ICTを利用した問題解決 <2級> ・コンピュータ知識 ・情報流通ネットワーク ・情報モラルと情報セキュリティ ・ICTを利用した問題解決 ・プレゼンテーション(実技) <準2級> ・タイピング(タイピングテスト) ・コンピュータ知識 ・情報通信ネットワーク ・情報モラルと情報セキュリティ ・ICTを利用した問題解決 ・ワープロ(実技) ・表計算(実技) <3級> ・タイピング(タイピングテスト) ・コンピュータ知識 ・情報通信ネットワーク ・情報モラルと情報セキュリティ ・ICTを利用した問題解決 ・ワープロ(実技) ・表計算(実技) <4級> ・タイピング(タイピングテスト) ・コンピュータ知識 ・情報通信ネットワーク ・情報モラルと情報セキュリティ ・ICTを利用した問題解決 ・ワープロ(実技) ・表計算(実技) <5級> ・コンピュータ知識 ・情報通信ネットワーク ・情報モラルと情報セキュリティ |
証明できること |
ICT活用能力と問題解決力を身につけている |
どんな人に向いているか |
・ビジネスマン ・学生 ・生徒 |
P検 試験範囲&合格基準
ITパスポートとP検の違い
ITパスポートとP検の違いは簡単に言うと試験の目的が異なります。ITパスポートはIT(情報技術)の基礎知識の有無をはかる試験なのに対し、P検はICT(情報通信技術)を活用した問題解決力をはかる試験です。
ITパスポートは知識のみを問うので実技試験はありません。
しかし、P検定は知識を問うのはもちろん、その知識を活用し問題を解決する力が試されるので、階級によっては筆記試験と実技試験の両方があるのです。「活用」に重きを置いている内容となっています。
実技試験は表の作成、計算式の入力、報告書の作成、目次や索引がある文書作成など、階級によって内容が変わります。
IT初心者におすすめの資格は?
ITパスポートの類似資格として情報セキュリティマネジメント、MOS、G検定、日商PC検定、P検の5つを紹介してきました。この中でIT初心者がまず取得すべき資格は「ITパスポート」です。
ITパスポートはITに関する基礎知識が身につく資格です。どのIT系の資格の勉強をする場合でも、IT知識のベースができていないと理解が難しい内容に直面するかもしれません。実務スキルの向上には直結しないかもしれませんが、IT用語など知っておくべき知識が得られるので、きっちり勉強しておきたいところです。
ITパスポートを取得後は自身の目的に合わせて資格取得を目指しましょう。
「WordやExcelを使えることを証明したい」「事務職に就きたい」などの希望がある場合、MOSや日商PC検定を受けるのが良いかと思います。MOSや日商PC検定は実際にWordやExcelを使った試験となっており、それぞれの使い方を学ばなければなりません。
「AIについて理解を深めたい」のであれば、AIやディープラーニングに特化しているG検定を、「情報のセキュリティについて深めたい」のであれば「情報セキュリティマネジメント」がおすすめです。
ITと一言でいっても多くの職種に分かれています。目指したい職種が決まっているのであれば、その方向の資格取得を目指しましょう。
たとえば、ITエンジニアを目指すのであれば、ITエンジニアの登竜門と呼ばれる「基本情報技術者」やその上位資格である「応用情報技術者」などの取得を目指すことが必要です。のが良いです。
もちろん、とりあえずITパスポートを取得するのもアリです。ITパスポートで身につく知識は、今や「常識」と言っても過言ではない内容です。そのため、IT業界で働く・働かないに関わらず取得すべき資格とも言えるでしょう。
まとめ
ITパスポートの類似資格5つについて解説するとともに、それぞれどのようにITパスポートと異なるかを解説してきました。ITパスポートはIT知識の基礎となる内容が学べます。土台をしっかり固めていないと、いくら高度な知識を積み重ねていっても崩れてしまう危険があります。正しいIT知識の土台作りとしてITパスポートを活用しましょう。自分の目標に向かって進むのはベースを固めた後からでも遅くはありません。
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