機械の能力が人間の能力を超え、社会が大きく変化することを『シンギュラリティ(技術的特異点)』と言いますが、それに向けてこれからは人間だけが持つ力が重要になると考えられています。
今回は、そんな次世代の「生きる力」のひとつ、『課題発見・解決力』についてご紹介いたします。

プログラムは書いた通りに動く
私たちの生活にすっかり馴染んだ、便利な機械たち。機械たちは一見、自分で「何かを判断している」ように感じますが、裏ではプログラムが走っています。
保温モードのお風呂が勝手に追い炊きしてくれるのも、電動アシスト自転車で、こぎ始めた瞬間に「ぐんっ」と力強くアシストされるのも、バッテリーが切れそうなロボット掃除機が勝手に充電ポートに帰るのも、プログラムによる制御です。
どんなに便利な機械でも、適切なプログラムによる指示がなければ、動くことはありません。

また、プログラムは書いた通りにしか動きません。
そして、その制御プログラムを書いているのは、人間です。したがって機械は、あくまで人間が想像できる範囲のことしか処理できません。
つまり、世の中を便利にしている機械の中身は、技術者による「こうなったら便利だな」という発想や「こうすれば助かる人がいるだろう」という優しさでできているのです。
「面倒くさがり」が最大の適性?

「こうなったら便利だな」という発想は、「このままでは不便だな」という不満から生まれます。
端的に言えば、「面倒くさい」という感覚です。
「面倒くさい」という言葉は、一般的に、あまり良い意味では使われません。
しかし、「面倒くさい」という感覚は、人間が厳しい自然界を生き抜くために得た「非効率を不快に感じる能力」です。
貴重なエネルギーを節約し、限りのある時間のなかで最も効率良く結果を得る方法を見付けたい……そんな思考の入り口でもあります。

面倒くさがりのお子さんは、非効率や不便さを課題として発見する能力に秀でています。
普通の人が「当たり前だ、仕方ない」と思いがちなところを「本当にそうかな?この面倒臭さは、改善できるんじゃないかな?」と考えることができているのです。
一方で、機械には、非効率を課題として認識する能力がありません。プログラムは「書いた通りにだけ動く」ものです。ですから、プログラムそのものが、誰も気付いていない問題を「これって、工夫すればもっと良くならないかな?」と発見することはできないのです。
「面倒くさい」という感覚を持つお子さんは、機械に負けない課題発見と解決力を持っています。それは、これからの世界を生きるにあたってとても大切な能力となるでしょう。
ゴールが見えるから忍耐力がつく

そして、面倒くさがりのお子さんの課題になりがちな「忍耐力」も、プログラミング学習を通して獲得することが可能です。
例として、テレビゲームやスマートフォンのゲームをご紹介します。人がゲームにハマって、難しいコースで失敗してもめげずに挑戦するのはなぜでしょうか?
それは、ゲームのなかにプレイヤーの「楽しい、頑張りたい」を刺激する巧妙な仕掛けがあるためです。
①ちょうどいい難易度(最初は簡単に、徐々に難しく)
②明確なゴール
③クリアしたときの達成感
これらが人のやる気を刺激するため、継続的に頑張れるのですね。

プログラミングの学習教材は、学習を通してモノつくりの楽しさを感じられるように設計されています。
スモールステップでの成功体験を繰り返し、お子さんに自信を持たせていく仕掛けは、ゲームそのもの。
お子さんが、世界中の子どもに人気の『Minecraft(マインクラフト)』や『レゴ』を利用した教材に取り組む姿は、遊んでいるようにすら見えます。
そして、思い切り頭をつかい、トライアンドエラーを繰り返した末にゴールに行き着いたときの嬉しそうな笑顔!ぜひ、体験学習などでご覧になっていただきたい瞬間です。
苦痛を耐える「我慢」ではなく、自分から試行錯誤を楽しむこと。ゴールの喜びを知っているからこそ、簡単に諦めない忍耐力が身につくのです。

まとめ
2013年に「今後10~20年程度で、既存の職業の半数近くが人工知能やロボットによって自動化される」という予測が発表されました(イギリス・オックスフォード大学、マイケル・A・オズボーン教授)。人工知能の進化によって、これからの子どもたちが持つべき力に大きな変化が起きようとしています。
人間ならではの能力で機械を使いこなし、人々の生活をより良く変えていくような人材が、これからの世界を引っ張るリーダーとなるでしょう。『課題発見・解決力』は、そんな能力のひとつです。