教科「情報」の導入!
2024年度以降に行われる大学入学共通テスト(現中2~)に「情報」という教科が新設される可能性が出てきました。「教科」というところが大きなポイントであり、大学入学共通テストにおける「教科」というのは、皆さんがご存知の主要教科「国語」「地理歴史」「数学」「理科」「外国語」の主要5教科、さらに「公民」を加えて6教科が現行の仕組みです。この教科と同格のものとして「情報」が導入されるということなのです。
(なお現行の「情報」という教科の科目は「情報Ⅰ」のみが設定されているようです。)
皆さんがなじみ深い「5教科(+公民)」と並ぶ存在になるという時点で、いかに大きな変化かはご理解いただけるかと思います。
2022年度からの新しい学習指導要領では既に「情報Ⅰ」は必修化されていますので、情報自体が入試に導入されること自体は、ある程度想定されていました。
しかし、「情報」という内容を大学入試に取り入れるのであれば、「教科」ではなく、ひとつ下の「科目」扱いにして、公民や数学の中に入れてしまう可能性もありました。(現在、数学の中には既に簿記会計や情報関係基礎の科目が入っています。)
しかし、今回の大学入学共通テストの見直し案では、情報を「教科」として扱い、「7教科」体制にしていくという、大規模な変更になりますので、国としていかに「情報」を重視しているかが伺えます。
(余談ですが、情報は入試自体を「情報端末を使用しての入試スタイル」にすることさえも検討されていた(現状は筆記に修正)そうですから、このことからも本気度が想像できます)
「情報」の入試での優先順位はどうなる?
前述した「教科」としての取り扱いについて、おそらく皆様の中には2つのイメージがあるかと思います。「国語・数学・理科・英語(外国語)・社会(地理歴史)と並ぶんだ!」
「公民と同じ扱いになるのかも…?」
前者のイメージであれば、今後プログラミング教育=情報がより世の中に浸透していき、今後は学習塾産業化していくイメージを持たれるかと思います。
一方で後者のイメージの場合、あくまで受験内のマイナー教科なのか…と思われるかと思います。
この差が大きいのは間違いありません。
参考ですが、従来のセンター試験の科目別の受験者数を見ると「国語」のように教科=科目の場合、約49.8万人が受験しています。次に教科「外国語」の中の英語のように圧倒的なシェアがある科目は51.8万人の受験者数です。
数学は数学1と2に分かれ、さらにそこから細分化されますが、最も人気の「数学Ⅰ・数学A」が38.2万人の受験者数となります。
一方で公民は最も人気の「現代社会」が7.3万人、2番目の「政治・経済」が5.0万人です。
(社会の「地理歴史」内で最も人気の「日本史B」が16.0万人)
この数値からすると、確かに教科「情報」がマイナー教科として埋もれていく可能性もないとは言い切れません。
教科「情報」の成長性は?
上述したように教科「情報」の人気の度合いは、まだまだ未知数です。しかし、数学や英語までとはいかないまでも、公民よりは高い人気になるのではないかと予想しています。
教科「情報」のデビューは、実は「大学」側の学部学科の状況にも大きな影響を与えることになるからです。
「情報」の最大の強みは「実社会で役立つ要素が強い」ことであり、ここが公民との最大の差になります。
これまで日本の大学の多くは、情報系の学部学科にあまり力を入れていませんでした。
名称として「情報学部」を保有する大学は少数ですし、工学部内に「情報系学科」が存在する程度の扱いが主流です。
この背景事情として、これまでの日本の公教育や大学入試制度下だと、どれだけ情報系学部を設置したとしても、入学してくる学生の情報系の知識はほぼ「ゼロ」の状態から始まってしまっていました。なぜなら入試条件に「情報」関連の教科や科目が設定できないからです。 つまり、数学と英語で良い点数を取れれば、パソコンをさわったことない学生も入学できてしまう仕組みです。
大学の4年間でプログラミングをゼロから教えるようでは、高度なスキルを持つ人材を育てることが難しくなります。大学側が情報系の学部学科に力を入れにくい理由はこうした背景事情だと思われます。
しかし、今後「情報」という教科が生まれることによって、大学側は「既に高度な基本知識やスキルを保有した学生」を募集することが可能になります。入試内容に「情報」を導入する、受験者に対して大学共通テストでの受験を必須にするなどが可能になるからです。
その結果、高い研究結果を出すことや、企業の最前線で活躍する学生や卒業生を輩出することが可能になります。
そのため、これからのIT・AI領域が進化発展する世界の中で、この領域に力を入れて大学の強みにしていこうと考える大学は増えてくると予想されます。
その結果、「人気大学の多くが情報系の学部学科に力を入れだす」→「その学部学科の入試条件に『情報』を入れる」→「『情報』の受験教科としての重要性が増す」という流れが生まれるのではないかと思います。
もちろん、上記の流れが本当に生まれるのか、大学側がどこまで反応するのか、またいつまでに実現するのかは未知数です。しかし、現状の環境を考えるとそれほど遠い時期でも、低い可能性でもないと私は考えています。
今回のコラムでは教科「情報」の導入についてお伝えいたしましたが、次回のコラムにおいて、教科「情報」本格的に導入された場合のプログラミング教育市場に与える影響についてお伝えしたいと思います。
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